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『さらば原発』の日

ある午後のニュースでは
「本日をもちまして
 日本にある
 すべての原子力発電所が
 無事、停止しました」と
ニュースキャスターの声が流れていた
続いて総理大臣が
この偉業を称え
誇らしげに笑ってみせた

新聞の一面には
「さらば原発」
と書かれていた

「人類の過ちが精算された日」
「これがオレ達の正ルートだった」
SNSには
そんな呟きも飛び交う

「壊すために作ったようなもんだな」
その傍らで
祖父の呟きが突き抜けた

祖父は
かつて電力会社に務めていた
原子力発電所だった

人々の歓喜とは裏腹に
祖父はただ、黙る
どんな顔をするべきだろうかと
迷っているように見えた

時には
我々は過ちを犯す
だけど、気が付いただけなんだ
この手に余るものだったと
それだけのことだ
人類の都合で
仕方のないことはたくさんあって
そのすべてが
誰かが、何かが悪い
と言うワケではない
のだけれど

そう言えば
2003年4月7日
原子力をエネルギーとして生きる
少年が産まれたそうだ
鉄腕アトムだ
やがて少年は
ロボットの人権を訴えたと言う

僕は難しい法律を知らない
ロボットの人権とは何だろうか
機械は人間と違う
そうだとも
アトムは嫌と言うほど
その事を知っていたはずだ

ロボットだけではない
人が産み出したすべてのものに
人権があるとしたら
共通するものは何だろうか

ふと
僕の胸に
「産まれてきてくれてありがとう」
と、言葉が降りてきた

人が産み出したすべてのものに
人権があるとしたら
それは
「産まれてきてくれてありがとう」
と、言ってもらえることだ
それは人間だって同じだ

かつて僕らは
原子力に夢を見た
幸福を信じていた
そして壊すために作った者など
誰ひとりもいなかった

「産まれてきてくれてありがとう」

賑やか過ぎるニュースの向こう側へ
僕は祈るように口ずさむ

あの放射性廃棄物たちは
これから長い時間をかけて
眠りにつくのだろう
そして
それで終わりなのではない

僕も彼らも
人権と言う言葉を夢に抱き
これからの未来を生きてゆく

「産まれてきてくれてありがとう」

後世の人々に
僕らがそう言ってもらえるように
僕らが言葉を贈れるように
これから生きてゆくのだ

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3.11の今日、みんながいろんな事を考えていると思います。そんな「いろんな事」の一つとして、僕が自分なりに思ったこと、思い付いた事を詩にしました。

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