I Married Myself/Sparks
text : tomai
唐突だが、私は自分のことがとても好きだ。自分自身と結婚したいくらいに───
"I married myself. I'm very happy together."
これは、スパークスが2002年に発表した19枚目のアルバム『Lil' Beethoven』に収録されている『I Married Myself』の歌詞である。
直訳すると、「私は自分自身と結婚した。一緒にいられてとても嬉しい。」という意味。
もしかしたらいまこれを読んでいる方の中には「え、それはどういうこと?」と素直に思った方もいると思う。そんな不思議なこの歌詞、先日30歳の誕生日を迎えた今の私にとっては「これほどにも刺さる歌詞は他にない!」と興奮するくらい、胸に刺さりまくっている。
冒頭でも記述したように、私は私のことが大好きだ。私にとっては私以上に面白い人間はさほど居ないと思っているし、服の好みも音楽の好みも素敵だと思う。なんだかんだで仕事には真面目に取り組んでいるし、好きなものにも熱心。癖のないスッキリとした顔立ちも、女性の割には高身長であることも気に入っている。
ただ、こんなにも自分のことが好きなのに、私には自信がない。圧倒的に自信がないのである。
たとえば、よく言えばマイペースな性格は、世間的には協調性がないということで時として苦労する。
気分屋なのでデートの約束を破り、一人でプロ野球を観ることを優先してしまうこともあるし、先々の約束を結ぶのも苦手。
自分ではそんなマイペースで気分屋なところも気に入っているが、一緒にいる人にとってはストレスを感じてしまうだろうなとは理解している。
また、服や音楽の好みに関しても自分ではとても気に入っているものの、少し癖があり、万人と共通の話題として盛り上がれるものではないと思っている。特徴の無い顔立ちや高身長だって相手を選ぶだろう。
対自分という視点で見た時には自分のことは素敵だなと思うが、対他人軸で考えると自分の欠点が際立ってみえてくる。それゆえに、自分に自信がないのだ。
自分のことを最高だと思う気持ちと自分に自信がない気持ちは平気で同居する。
むしろ自分が自分自身のことを好きゆえに世間に受ける自信がないとすら思ってしまう。
そんな私にとって、スパークスの『I Married Myself』の歌詞はとても魅力的に映る。
30歳を迎え、周りの友人もみんなパートナーを見つけたり結婚をしたりしている。
私にもかつて 好みも近く、性格にも理解がある素敵なパートナーがいたこともあるが、恋愛自体が苦手だったので一人で居ることを選んだ。
インターネットには出会い系アプリの広告で溢れかえっているし、電車に乗れば婚活サイトの広告が目に付く。
そんな世の中でも、無理して誰かと一緒にならなくても良い。一人が好きだから一人で居ることを選んでいるのだ。
『I Married Myself』の歌詞は、そんな自分を肯定してくれているようで嬉しい。
世間体や対外的なことを考えると自分に自信が無いが、対自分で見た時に私は私以上に面白い人間は居ないと思っていて、だから自分自身と結婚するという歌詞は理想の中の理想だよなーと惹かれてしまうのである。
私は私の喜びのためにあらゆる場所に出かけたいと思うし、欲しいものを手に入れてあげるために労働に励む。「大好きな自分のために!」と思うと何事も頑張れる気がするし、落ち込んでいる時は美味しいものでも食べさせて機嫌を取ろう。
もしかしたらもう一度誰かと恋に落ちたりするかもしれないけど、しばらくは自分自身と結婚したつもりで楽しく生きていきたいなと思う。
『I married myself』SPARKS(2002年)
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