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はらぺこライオンの話

私が中学生か高校生のころ書いたはらぺこライオンの話とそっくりの話が、Xでバズっていました。
私が書いた時はライオンだったけど、主人公ははらぺこオオカミで、「ソコヌケ」というタイトルで
素敵な絵だから鍵垢でフォローしている方でした

もしもあれがわたしの物語を見た方が 無意識に引用していたならかなしい、と思ったけど、偶然だと思いたい
下のような話で、00年代にポプラ社の投稿市場か「僕が山羊を殺しに行く」という個人サイトで公開していました。

腹ぺこライオン

腹ぺこのライオンは何でも食べます
群れの仲間も親も食べてしまい、寂しくて
アフリカを旅して友達を探しにゆきました
シマウマ、シカ、ネズミ、ヒョウ、ワニ、ゾウ、キリン……
これなら喰わなくて済むと思って友達になるけれど、結局みんなを食べてしまいました
アフリカ中の動物を喰い、最後に訪れた美しい鳥は 
そんな過去を打ち明けた彼のことも 優しく許してくれました
そしてライオンはその鳥も食べました

ライオンは身を切り裂くような寂しさで泣きながら、
あらゆるものを食べることにしました
おなかがふくれたら、きっと平気だと思って

木を食べ、花を食べ、人間を食べ、街を食べ、アフリカを食べ、ヨーロッパもアジアも大陸全部を食べて、地球を食べました
膨れた腹で星を眺めながら、ライオンは まだ足りない まだ足りない、と思いました
彼は結局、宇宙にまたたく無数の星もすべてたいらげていったのです

宇宙には様々な星があり、皆どれも美しく、彼は星を食べる度に二度と取り戻せないその面影を思って泣きました
きらきらの星たちをまるのみにして、
そして次の瞬間には、その星のことを忘れました

最後の小さな星を食べた後 彼に残されたのは ただ何もない空っぽの暗闇でした

ライオンは愕然としました
けれど言い訳をすべきものも 新たに腹におさめられるものも 何もなかったので
ライオンは長いこと えーんえーん、と、一人で泣いていました
そのうちに腹が空いてたまらなくなった彼は
最後に自分を食べることに決めました

ライオンはライオンをまるごと食べてしまいました
なにもかもが消えた 其処にあるのはただの真っ暗やみでした
ただ、悠久がそこにあるのでした

そしてある日突然、それが起きました

なにもかもを覆すようなおそろしい奔流です
全ての色彩と、またたきと、美と醜さと、はかりしれないひろがりを持ってあらゆるものに息吹を与える
これが宇宙の起源、ビッグバンです
其処に小さな星が次々と生まれました

そのときから、ながいながい時を経て
僕らはいまここにいるのです
みなさん だから 空の星を眺める孤独な夜には
さみしがりのライオンのことを、思い出して下さいね

あと、ほんとうに一瞬ですが2020〜2022年頃に下のようにイラストにしてXに公開していました。
けどわたしはSNSがそもそも苦手で、アカウントをすぐ消してしまったし、
気のせいで、私の勘違いなら良いなと思う。
まあ、ほんとに偶然の可能性のほうが大きいよね。
だってはらぺこの生き物が全部食べる、というモチーフはよくあるものだから。

Twitterで公開していたわたしのおはなしは以下です。
もともとのお話から、ディティールをけっこかえて絵にしたものです。

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