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推し活ほどほど日記 ①

2024年、我が家は大きな出来事があった。
生まれた時に大きな病気を抱え、いくつかの手術と医療的ケアと一緒に成長してきた4歳の息子のこれからの生活を左右する大切な手術が夏に決まった。

たくさんの検査、たくさんのお医者さんとの話し合い。
冬が終わり春が来て、自分の仕事の調整や、役所、保育園への手続き、などなど入院に向けていくつかの準備。
医師からは「事前に体調を崩すと麻酔をかけられないので、延期ですから。予約は大体半年先ですねー」と小児医療界隈ではよくある体調不良による延期へのプレッシャー。
あっという間に5月も終わり。
ようやく一息付けたところで【VNL (バレーボールネーションズリーグ)】のニュースが流れてきた。
子どもの頃に数年バレーをやっていた経験や去年は男子チームがオリンピック出場権を得た試合をリアルタイムで観ていたので『気になる』程度のものだった。

今はありがたいことに試合のハイライトや選手のナイスプレー集、合宿中の密着動画まで公式コンテンツとして見せてくれる。
少し見る【だけ】だったのが選手・監督・コーチ陣にすっかり感情移入してしまって、いつもの如くがっつり男子バレーの箱推しになってしまった。
夜更かし、早起きをしてネーションズリーグ銀メダルまで見届け、オリンピック前の緊張感漂う中、気がつけば息子の入院日を迎えていたが手術の不安から解放されるにはこの熱量がちょうどよかった。

8月の終わりとともに退院し、まだオリンピックの余韻も冷めない頃、10月からは国内リーグ(SVリーグ)の開幕戦が地上波で放送されるというニュースに喜んだ。
ここまで来たらSVリーグもちゃんと見たい。
毎週のように色んなチームを追うのは大変だから『ほどほどに』と自分に言い聞かせつつ配信コンテンツに加入。
SNSのタイムラインもバレー関連が増えて生活の中にバレーが入り込んできた。

推し活仲間ができた

冒頭に書いた息子の現状は経過良好で、多少の行動制限もあるが毎日元気に保育園に通っている。

入院中にはじめてテレビでバレーボールの試合を見たが選手がレシーブで倒れるたびに「ころんじゃったの?だいじょうぶ?」と心配していた。

ルールもあまり分かってない、どっちが得点したのかも曖昧だ。
だけど選手や観客が喜べば一緒に喜び「ばれーおもしろい」と笑う。

ちなみに、息子の推しはリベロの山本智大選手だ。
楽しそうにバレーをする姿が4歳にも響いたのか、レシーブした後の回転が印象に残ったのか。
母も昔、女子のリベロ佐野優子選手の動きを追いかけてたので息子の感性に思わず「分かる!」と叫んだ。

我が家では山本選手は彼の愛称でもある『ともくん』と呼んでいる。
選手を呼び捨てで読んだりあだ名で呼ぶ人もいるが【ほどほどに推す】を心掛けてる自分は、まだそこまで強く深く応援してるわけじゃないから…と自分なりのルールを持っていたけれど「4歳がともくんと呼ぶなら自分も呼ばないわけにはいかないのだ」という建前で、自信を持ってともくん呼びをさせていただいている。

もう1人(?)の推しは山本選手が所属する大阪ブルテオンのマスコットのパピネス。
ゆっくりとした動作で踊っている動画を見て好きになったようで、オンラインストアでぬいぐるみを買ったら、トイストーリーのアンディとウッディなみにずっと一緒にいる。

「ともくんと、うごいてるぱぴねしゅは、おおさかにいるんでしょ」
「おおさかいきたい。バレーみたい。ともくんおうえんする」

推しができて『おおさか』が地図のどこにあるか、自宅から『おおさか』のアクセスの仕方も学んで、苦手な野菜も食べられるようになった。
持病の関係で長いことトイトレに苦戦しているが「おおさかにいくから」と言う理由で親子共に頑張れている。

そして一番うれしい変化は自由に旅行に行けるようになったこと。
手術前は、ちょっとした旅行をするにも1日のスケジュールが医療的ケアを中心に組み立てるため行先が限られていたが、今はどこにでも行ける。
もちろん大阪にも。

親としてこの成長に今、応えるしかないだろう。
絶対見に行こうね!と誓い、蚊帳の外だった夫にも男子バレーが面白いこと、大阪ブルテオンがどんなチームなのか、山本選手がどれだけ凄いのか、パピネスがかわいすぎる話。
動画を見せてプレゼンして手術後初となる我が家の旅行は大阪ブルテオンのホームゲームと決まった。いや決めた。

あとはチケット係である私にかかっているのだと思うと緊張するが、世の親御さん方は『アンパンマンミュージアム』や『しまじろうコンサート』や『わんわんわんだーらんど』などの推しに会いに行ける一大イベントに
お金や時間をつぎ込んできたわけで。今までそういったイベントに無縁だった我が家は今こそ推しエネルギーを使うべきなんじゃなかろうか。


自分なりのほどほどを

国内リーグを追って感じた選手たちの気迫。にぎやかな会場の雰囲気。
現地に行けなくても、試合をみられる環境は本当にありがたくSNSを開けば知らない誰かの感想や現地の雰囲気を無料でおすそ分けしてもらえるなんて凄く恵まれている。
しかし見ているのは試合なので当然、勝敗が伴う。
ナイスプレーの動画が流れてきたと思えば、何が良くなかった、何が足りなかった、実況についての感想、会場の環境の良し悪し。

・・・・疲れる。

スポーツを見て元気をもらっているはずなのに疲れる。
楽しかった!と言いたいだけなのに疲れる。
ポジティブな言葉もネガティブな言葉も形は違うがファンの【想い】であることには違いない。

考えてXのアプリをアンインストールした。
大阪ブルテオンが出してくれるXでの試合速報や公式スタッツ、そこに添えられる山口コーチのコメントなんかは面白いしタメになる。
だけど情報を一握りにはできない今のSNSの仕組みを考えると、ほとんどの声は自分には必要ないのかもしれない。

SNSからは少し距離を置いて推していい。
知らないことがあっても大丈夫だから。
その代わり現地では息子と一緒にたくさん声を出して応援するぞ。

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