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くらくらパニック

はじめて引っ越しで「らくらくパック」なるサービスを利用した。

何やらこれは、引越し業者が荷づくりから荷ほどきまでしてくれるものらしい。自分には一生縁のないリッチなサービスだと思っていたが、もろもろの事情があいまって今回たまたま利用することになった。

そんなものだから、わたしは引っ越しの日どりが迫ってきてもゆうゆうとしていた。

いつもの引っ越し前なら「荷づくりが終わらなぁぁい!」と発狂しそうになりながら夜な夜な作業するわけだが、今回ばかりは違う。なんてったって「らくらくパック」だもの。ふふん。

こんなにゆうゆうとしていいのだろうか。これまでの「引っ越し前」との大きな差に、むしろ不安すら感じる。

けれど見積もりに来たおじちゃんもこう言っていた。「まあやっておくことは断捨離くらいですかね。あとはプロがぜんぶ梱包しますんで」。きっと中途半端にこっちで梱包してもかえってややこしいだろう。言われたとおり、とりあえず少しでも荷物を減らそうと、着なくなった服や雑貨の処分をすすめていた。うん、「らくらくパック」の準備としては優秀なんじゃないか。

あとはもう、安心、安心。

だってプロが梱包してくれるし。荷ほどきだってしてくれるらしいし。まあ梱包日が引っ越しの前日で、荷ほどきが引っ越しの翌日になるというから、3日間の工程になっちゃうのはアレだけど。でもまあ、自分たちで何もやらなくていいんだからやっぱり断然、楽だよなあ。

いやー、今回の引っ越しはラクショーや。さすが「らくらくパック」いうだけあるわ。ほんまに。

エセ関西弁で調子にのるくらい、そう思っていた。

そうして何の準備も整理整頓もなく、ごくごく普通の日常を送りながら梱包日(引っ越し前日)を迎えたわたしたち。

いつものように朝食を食べ、娘の登園準備をしていると「ピンポーン」と呼び鈴がなる。来た来た、梱包スタッフさんたちだ。

ここまでは想定どおりだった。

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どうでもいいことをすごくしんけんに書いています。

<※2020年7月末で廃刊予定です。月末までは更新継続中!>熱くも冷たくもない常温の日常エッセイを書いています。気持ちが疲れているときにも…

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