ピロシキなるもの
軽く昼食をすませようと、街中でとあるベーカリーに立ち寄った。
カレーパン、メロンパン、あんぱん……。
定番のパンを眺めながらトングとトレー片手にうろうろとさまよっていると、ふと「ピロシキ」というパンが目に入る。
ピロシキ。
その単語を目にするのが初めてなわけではない。
たしか、なんとなくアジア圏ではないどこか外国の料理で、中に具がはいっていて、それがパンみたいなものに包まれているんだろう。極めて雑だが、わたしのその時点でのピロシキの解釈といえばそんなものであった。
その日そのベーカリーの棚にならんでいた「ピロシキ」は、見た目でいうなら肉まんをぺたんこにつぶして、表面にチーズをのせ、軽くプレスして焼き上げたようなものに見えた。
しかも値札とともに添えられた説明には、こんなことが書いてある。
「豚肉、しいたけ、たけのこなどの具材を包んで、チーズで仕上げたピロシキです」
これを読んでわたしは思う。
豚肉、しいたけ、たけのこだと。それじゃあますます肉まんじゃないか。肉まんといったら、中華じゃないか。なんかもっとこう、ピロシキって、名前からすると違った洋風の具材が入っているんじゃないのか。
こうなると、とくに興味をもっていなかった目の前の「ピロシキ」に対して、俄然むくむくと興味がわいてくる。
この、見た目はいかにも肉まんをつぶして表面をチーズとともに焼いたような「ピロシキ」は、さらにはどうやら中に「豚肉、しいたけ、たけのこ」が入っているらしきこの「ピロシキ」は、いったい肉まんとどう違うのか。
口にすれば「これぞピロシキ!」とわかるような、特殊なスパイスや香りがほどこされているのだろうか。
ほら、カレーとシチューだって、具材だって作り方だってほとんど一緒なのに、どんな味付けをするかが違うだけでまったく別の名前になるから。
あれといっしょで、たとえ豚肉、しいたけ、たけのこという具材であろうと、わたしが知るあの肉まんとはまったく違う、どこか遠くの異国の味付けがされているのではあるまいか。ひとくち食べれば「ああ、そういうことか」と納得するような。
わたしはそれが知りたくなった。
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とるにたらない話をしよう
<※2020年7月末で廃刊予定です。月末までは更新継続中!>熱くも冷たくもない常温の日常エッセイを書いています。気持ちが疲れているときにも…
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