ケーキをおいしくさせるもの
なんでもない日に、ふと思い立ってケーキ屋に立ち寄った。
そう書くと「ああこのひとはわりとカジュアルにケーキ屋に寄るのだろうな」と思う方もおられるかもしれないが、まったくそんなことはない。
ケーキ屋に寄ったのなんていつぶりだろう。おそらく、去年の夫の誕生日以来だろうか。その半年後にあったはずの自分の誕生日には、コンビニのケーキすら食べていない。いたって、いたって普通の日であった。
その未練なのかどうかわからないが、駅からの帰り道で唐突に思ったのだ。最近、ケーキというものを食べていないな。どれどれ今日は、自分のためにケーキを買ってみてはいかがだろう、と。
*
ウィーン。
ガラス扉の前で立ち止まると、スムーズに自動ドアが開き、わたしはなんの障壁もなくケーキ屋のなかに入ることができてしまう。
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