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【お題エッセイ】#003 毛布
12月にしては穏やかな気候が続いているなぁ、と思っていたら、今朝は急に冷え込んだ。
夫が目を覚まして、第一声、「寒い……」。
私たちはそれぞれ独身時代からの寝具を使っているので、たしかに夫の冬用装備は少し心もとないな、と思っていたところだった。
これからもっと寒い季節がやってくる。赤ん坊を迎える今年は特に風邪をひいてもらっちゃ困るわと、あわてて通販で毛布を注文した。
そんなわけで、今日のお題は毛布。
* * *
毛布という単語を聞いて、みなさんはどんなイメージを連想するのだろう。
私の場合すぐに思い浮かんでくるのは、やさしく包まれるあたたかなイメージだ。
ふわふわで、もこもこで、なめらかで、やわらかくて。
そんなふうに、「見ているだけで幸せになってしまう平仮名」をどんどん並べたくなる。
そうして私は、そんなやさしさ満点の毛布にすっぽりとくるまって、ぬくぬくとまどろむのだ。
それは私のなかで、幸せのイメージに限りなく近い。
* * *
包まれたり、くるまれたりすると、人は安心する。
ちょっと話は飛ぶようだが、先日、着替えのために裏起毛トレーナーを脱ごうとして、頭をスポッと抜き、腕も抜いて、その中途半端な状態でふと一時停止したことがあった。
頭は、トレーナーの中に入ったまま。腕も袖から抜いているので、要は体温で温まったぬくぬくの生地をすっぽりとかぶっているような状態である。
特にこの寒い季節、その中途半端な状態がなんとも心地よくて、そこからトレーナーを脱ぎたくなくなる(笑)。
おとなになってから久しくそんなふうに思ったことはなかったが、久しぶりにふとその状態に陥って、そういえばこどもの頃はこの中途半端な状態が好きでよく遊んでいたな、と思い出した。
そしてその“トレーナーの繭”にくるまれていると、生地のすき間からはほんのりと外の光も差し込んできて、それがまた心地いいのだ。
夫に力説してみても共感は得られず、不思議そうに「へぇ〜」と言われただけだったので、きっと私が変わり者なだけなのだろうけれど。
* * *
ただ、久々にその状態になってみて、「ああ、もしかしてこれって、胎児の状態に似ているのでは」とふと思った。
あたたかくて、狭い空間。すっぽりと、自分だけをくるんでくれるそのやさしい空間。外の光や音はくぐもってほんのりと入ってくるけれど、外的な刺激からは一線をひかれて守られた、安心できるぬくぬくの空間。
今自分が妊娠してみて、お腹の中の気持ちよさって、もしかしたらこういう感覚に近いのかもしれない、と妄想したのだ。
赤ちゃんがおくるみにくるまれて安心する、というのはよく聞く話だが、おとなになってからも、毛布にくるまって安心したり、パーカーのフードをかぶったりして安心するのは、そういう記憶を無意識に引きずっているからなのかもしれない。
* * *
今夜も、しんしんと冷える。
お風呂であたたまって、湯冷めをしないうちに、布団にもぐりこんで。
やさしい毛布に、身も心もすっぽりとくるまれながら、いつかの記憶をひっぱり出して、眠ろう。
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■お題エッセイを書き始めたワケはこちら
→【お題エッセイ】#000 お題エッセイ
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