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データで見るVTuber(バーチャルYouTuber)市場・業界動向レポート

CAヤングラボ(サイバーエージェント子会社)の調査によると、日本国内のYouTuber(ユーチューバー)の市場規模は2017年に219億円となり、’16年の2.2倍となったと発表されました。今後もYouTuber市場は拡大していくと考えられますが、その中でも’17年末頃から特に注目を集めているのが、「VTuber(バーチャルYouTuber)」の存在です。

各企業が従来のYouTuberに続き、VTuberに期待を寄せ始めており、2018年がVTuber元年となりそうです。今回はVTuberの市場データを踏まえて動向を見ていきます。

2018年前半からVTuberが本格的に注目を集める

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Googleトレンドで「VTuber」の検索ボリューム数の推移を見ると、’17年末から’18年5月にかけて急増しているのが分かります。

初のバーチャルYouTuberを自称する「キズナアイ」のA.I.ChannelのYouTuberチャンネル登録数が’17年12月に100万人に到達し、他のバーチャルYouTuberも続々と登場してきたことをきっかけにして、VTuberの認知度が高まってきたと推察されます。

また、日本政府観光局(JNTO)ニューヨーク事務所が、キズナアイを訪日促進アンバサダーに起用することを発表したことで、業界関係者やファン以外の人にもバーチャルYouTuberの存在が認知され始めました。さらに、2018年4月にグリーがバーチャルYouTuber事業へ100億円規模の投資を行うと発表したり、キズナアイがBS日テレでテレビ初登場(番組名:キズナアイのBEATスクランブル)したりして、様々な分野でVTuberの知名度が上がってきました。

グリー、サイバーエージェント、ドワンゴもVTuber市場へ参入

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グリーは、今年4月にVTuber(バーチャルYouTuber)事業へ100億円規模の投資を発表し、このうち約40億円を投資プロジェクト「VTuberファンド」で活用することも明らかにしています。

サイバーエージェントは、子会社のCAヤングラボが今年3月から、バーチャルYouTuberの動画を配信し、企業の宣伝をするタイアップ広告サービス「バーチャルクリップ」の提供を開始しました。また、バーチャルYouTuberなどのマネジメント事業に特化したCyberVを設立しました。

ドワンゴは、VTuberをパーソナリティとして登場させて、公開番組を放送するシステムを開発したと発表しています。

また、IT業界以外にもロート製薬がバーチャルYouTuber社員を起用して、企業プロモーションに活用すると発表しており、様々な分野でバーチャルYouTuberの展開が期待されています。そして、ベンチャー企業のカバー株式会社は、今年6月にグリーベンチャーズ、みずほキャピタルなどから総額約2億円を調達し、ホロライブのアプリ(スマホやPCを使い、アニメキャラクターになりきり動画配信できる)開発やVTuberプロダクション事業を展開していくことを明らかにしました。

VTuberチャンネル数の推移

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User Local(ユーザーローカル)の調査によると、’18年2月にはVTuberのチャンネル数は500人だったのが、わずか3ヶ月で6倍の3000人にまで増加しています。ホロライブのようなバーチャルYouTuber動画配信サービスの普及によって、今後も配信者数は増えていくと考えられます。

VTuberのチャンネル登録数推移

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VTuberランキング トップ50の合計チャンネル登録数(ファン数)の推移を見ると、’16年12月から’17年12月までは緩やかに増加してましたが、昨年12月から今年6月にかけて急増していることが分かります。

’17年12月時点では、チャンネル登録数が164万人だったのが、’18年6月には5倍以上の825万人になっています。また、ユーザーローカル社のSNS分析ツールSocial Insightでの集計では、全VTuberの合計チャンネル登録数が5月時点でのべ1089万人に達していると報告されています。

VTuberの動画総再生回数の推移

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チャンネル登録数(ファン数)の推移と同様に、バーチャルYouTuberランキング トップ50の動画総再生回数の推移も’17年12月から’18年6月にかけて大きく増加しており、昨年12月は2億4900万回、今年6月は6億4000万回にまで伸びています。

ユーザーローカル社のレポートによると、全バーチャルYouTuberの動画総再生回数は、今年5月に6億9000万回にものぼると報告されています。

年代別・男女別のバーチャルYouTuber認知度

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年代別・男女別のバーチャルYouTuberの認知度調査によると、10代男性が60%と最も高い結果になっています。若い世代の方が認知度が高い傾向にあり、同世代の男女比較では男性の方が知っている割合が高くなっています。

今後、若い男性を中心にバーチャルYouTuberが広まっていく流れになりそうです。

VTuberトップ8のチャンネル登録数(ファン数)推移

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VTuberのチャンネル登録数ランキングTOP8におけるチャンネル登録数の推移です。

キズナアイの「A.I.Channel」が、他のVTuberに先駆けてファンを獲得していき、昨年末以降に急増しており、VTuberの中で唯一100万人の大台を超えて、200万人達成も時間の問題となっています。

2位もキズナアイのゲーム実況動画を主に扱う「A.I.Games」がランクインしています。2位以下は僅差となっており、昨年末以降にチャンネル登録数を増やしているVTuberが多いため、今後ランキングが移り変わる可能性があるでしょう。

【2018年6月1日時点での各VTuberのチャンネル登録数】

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VTuberトップ8の動画総再生回数の推移

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VTuberの動画総再生回数ランキングTOP8における動画総再生回数の推移です。

動画再生回数でも1位はキズナアイの「A.I.Channel」で1億2200万回を超えています。2位はデジタルカードゲームの”アイカツ!”キャラクターがVTuber化した「アイチューブ」ですが、VTuber化する前の再生回数も含まれています。

3位以下は混戦状態ですが、キズナアイの「A.I.Games」チャンネルがやや勢いがあり、3位のミライアカリの「Mirai Akari Project」を追い抜きそうです。

【2018年6月1日時点での各VTuberの動画総再生回数】

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バーチャルYouTuber人気ランキングTOP4の基本情報

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バーチャルYouTuber四天王と言われているキャラクターの基本情報です。

有名イラストレーターのデザイン、ゲーム実況動画、テレビ番組や有名動画プラットフォームへの出演など、話題性のあるキャラクター・コンテンツ作りを行なっているようです。

1. キズナアイ
2016年11月から動画配信を開始して、はじめてのバーチャルYouTuberを自称。Activ8株式会社(アクティベート)が運営するupd8(アップデート)に所属しており、ゲーム実況専門のチャンネルも持つバーチャルYouTuber業界で人気&知名度No.1のキャラクター。

2. 輝夜月(かぐやるな)
2017年12月から動画配信を開始。Mika Pikazo氏がデザインを担当。2018年5月に有名動画配信プラットフォーム「SHOWROOM」で初のライブ配信を行なった人気急上昇中のキャラクター。

3. ミライアカリ
ボーカロイド”初音ミク”をデザインしたKEI氏がデザインを担当しており、2017年10月からミライアカリプロジェクトが開始。株式会社DUO(デュオ)が運営。

4. 電脳少女YouTuberシロ
2017年6月から動画配信を開始。海外のゲーム実況プレイも行い、テレビ朝日の番組”サイキ道”のレギュラーMCに抜擢。株式会社アップランドが運営。

VTuberとYouTuberの比較

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Googleトレンドを使って、2018年6月3日時点から過去1ヶ月の間で「VTuber」と「YouTuber」の平均検索件数を比較すると、VTuberが30%、YouTuberが70%という結果になっています。

YouTuberというキーワードは世間にも広く浸透しているキーワードであることを考えると、VTuberの認知度や注目度が高まってきていることが分かります。

キズナアイと国内人気YouTuberとの比較

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バーチャルYouTuberの中でチャンネル登録数、動画総再生回数ともにランキングNo.1のA.I.Channelと日本国内YouTuberランキング トップ5のYouTuberを比較すると、チャンネル登録数(ファン数)では、まだ2〜3倍以上の差があることが分かります。

動画総再生回数においては、5位の「Yuka Kinishita 木下ゆうか」と比べても12倍の差があり、1位の「はじめしゃちょー」と比較すると、40倍以上の差があります。

バーチャルYouTuberが国民的YouTuberになるには、もう少し時間が必要かもしれません。

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一方、YouTube運営日数あたりの獲得チャンネル登録数では、A.I.Channelが3,183人と人気YouTuberの中でも勢いがあることが分かります。

YouTube運営日数あたりの動画再生回数は、まだトップの「はじめしゃちょー」と12倍近く乖離がありますが、このまま順調に知名度が高まれば、再生回数も伸びていくと期待されます。

バーチャルYouTuberがもたらすUX(ユーザー体験)

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バーチャルYouTuber市場の拡大によって、我々ユーザーにもたらされるUX(ユーザー体験)はどのようなものなのでしょうか?可能性としては、以下のようなUXが考えられそうです。

・従来、アニメなどのバーチャルキャラクターはテレビ番組による一方向的な配信のみでしたが、バーチャルYouTuberの出現によってバーチャルキャラクターとユーザー間で双方向的なインタラクションが生まれやすくなり、視聴者はこれまで味わえなかった体験ができるようになる。
・配信者側が自身の顔を出さずに配信できるため、配信に対する心理的ハードルが下がり、より多くの配信者が現れ、これまでにはなかったような面白いコンテンツが生まれる可能性がある。
・バーチャル空間で現実世界では実現不可能な演出(空を飛ぶ、現実には手に入らないものを表示する、配信者が別々の場所から配信しても同じ空間にいるように見せる、など)が可能となり、コンテンツの幅が広がる。

バーチャルYouTuberのビジネス活用の可能性

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バーチャルYouTuberのビジネス活用の可能性として、以下の可能性が考えられるのではないでしょうか。

商品・サービス・企業のプロモーションといったいわゆる宣伝広告への利用
テレビ番組やSHOWROOMなどの動画配信サービスへの出演(芸能プロダクション的なビジネス)
ゲーム化、アニメ・映画化、グッズやLINEスタンプ販売といったIP活用
ライブコマースへの活用

まとめ

・2018年前半からVTuberが本格的に注目を集める。
・グリー、サイバーエージェント、ドワンゴといったIT企業だけでなく、ロート製薬など非IT企業もVTuber活用に動き出している。
・2017年12月から2018年6月にかけて、VTuberのチャンネル登録数、動画再生回数が急増している。
・若い男性層を中心にVTuberの認知度が高まっている。
・VTuberの中ではキズナアイ(A.I.Channel)が圧倒的な人気を誇る。
・キズナアイは日本国内のトップYouTuberになるポテンシャルを秘めている。
・VTuberは、「視聴者との双方向的なインタラクション」、「動画配信の心理的ハードルの軽減」、「非現実的なコンテンツ制作」というUX(ユーザー体験)をもたらす。
・ビジネス活用の可能性として、「宣伝広告」「テレビや動画配信サービスへの出演」「IP活用」「ライブコマースへの展開」が挙げられる。

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