弁理士試験について①概要
弁理士試験とはどのようなものか紹介していきます。勉強の方向性を定めるために、まずは敵を知りましょう。
弁理士試験は知的財産権法についての理解とその応用能力を測る試験です。弁理士になるためには、一般的にこの試験を受けて合格する必要があります。
弁理士試験は、短答式試験、論文式試験、口述試験の3段階で構成されており、全て合格することで最終合格となります。ただし短答に合格しなければ論文を受けられず、論文に合格しなければ口述に進めません。
試験は毎年1回のみ行われ、例年5月に短答式試験、7月に論文式試験、10月に口述試験が行われます。
短答式試験について
短答式試験では、知的財産権法に関する記述の正誤を判断する問題が出題され、5枝択一のマークシート形式で出題されます。5枝の中から正しいもの又は誤ってるものを一つ選ぶ、正しいもの又は誤ってるものがいくつあるかを選ぶ、正しいもの又は誤ってるものの組み合わせを選ぶ、などで回答をマークしていきます。
出題範囲は特許法、実用新案法、意匠法、商標法、条約、著作権法、不正競争防止法の7科目です。特許法と実用新案法で20問、意匠法10問、商標法10問、条約10問、著作権法と不正競争防止法で合わせて10問の計60問出題されます。これらの知的財産権法に関する広く深い知識、法的思考力が問われます。
試験時間は3時間30分です。3時間30分で60問なので、単純計算で1問あたり3分30秒、1枝あたり42秒以内で解いていきます。ただし、あくまでもこれは計算上の目安ということで、実際には読んですぐ答えられる枝も多くあるため、そこまで厳しい制限時間ではないでしょう。
合格基準は得点の合計が39点以上(毎年のボーダー)で、得点が4割未満(特実は8点未満、著作権と不正競争は合わせて4点未満)の科目が一つ以上ないことです。
すなわち、4割未満の科目が一つでもあると足切りといって、合計点が39点を超えていても不合格となります。ですので、なるべく苦手科目を作らず各科目を満遍なく勉強することが求められ、このことから短答式試験は「7つの皿回し」と表現される方もいます。
短答式試験では、法律や規定の細かな知識まで問われるため、曖昧な知識では点数が取れないようになっています。足切り制度もあることから、合格率は例年10〜12%と低く、最初にして最大の壁とも言えるでしょう。
論文式試験について
論文式試験は必須科目と選択科目がありますが、ここでは必須科目のみ説明します。論文式試験は答案用紙に文章を記述する形式で解いていきます。産業財産権四法に関わる規定の理解や趣旨を問う問題、事案解決の手段、必要な手続等について法律に当てはめて説明させる問題が出題されます。問題で問われていることに対して、産業財産権法の知識を応用し論理的にかつ簡潔に説明する能力が求められます。
出題範囲は、特許法、実用新案法、意匠法、商標法で一部条約の知識を使う問題も出題されます。近年では条約と絡めた問題が多く出題されており、最低限の条約の知識無くして論文試験突破は難しいでしょう。特許法・実用新案法で大問2つ、意匠法で大問1つ、商標法で大問1つ出題されます。論文式試験では、条文集が貸与され、条文集を見ながら解答を書くことができます。
試験時間は、特許法・実用新案法で2時間、意匠法1時間半、商標法1時間半で、1日かけて行います。論文試験の特徴として、試験時間が短いということが挙げられます。特に特許・実用新案法では2時間で大問2つ解くため、時間が非常にタイトになります。問題文を読んで、答案として書くべき事項を簡単にメモする時間、答案用紙に記述する時間など、タイムスケジュールを考えて解かなければ時間が足りなくなってしまうでしょう。
合格基準は、標準偏差による調整後の各科目の平均得点が原則として54点以上であり、48点未満の得点の科目が1つ以上ないことです。1科目でも47点以下の場合、いわゆる足切りとなりますので、やはり短答と同様に満遍なく勉強する必要があります。論文では採点者の違いによる得点の偏りが出ないよう、得点を偏差値に換算する方式をとっています。従って、偏差値で54以上の方が合格となります。予備校の論文模試等では、点数だけでなく偏差値で自分がどのレベルにあるかを把握することが非常に重要です。
毎年の合格率は25〜28%で、偏差値で54以上がおおよそ上位1/4にあたることになります。短答式試験に合格した実力者の中から、さらに上位25%に入る必要があるため、合格率の数字以上に難易度は高いと言えます。論文式試験の後の口述試験は合格率が高く、この試験を突破すると最終合格につながる可能性が高いと言え、弁理士試験の天王山とも表現されます。
口述試験について
口述試験では、試験委員の方との口頭試問形式で問題が出題されむす。1問1答形式で対話をし、また試験委員の誘導に乗りながら、回答を口頭で説明していきます。この試験では、産業財産権法の規定や趣旨の基本的な理解、説明の正確さ、簡潔さ、弁理士としての適正(応答態度やコミュニケーション能力)が問われます
出題範囲は主に特許法、実用新案法、意匠法、商標法で一部条約の知識を使う問題も出題されます。近年でもやはり条約に関する問題が出題されていますので、条約の勉強は怠らない方が良いと思います。
合格基準は、ABCの3段階評価で、C評価の科目が2つ以上ないことです。
A.答えがよくできている
B.答えが普通にできている
C.答えが不十分である
試験時間は特許・実用新案法、意匠法、商標法それぞれ10分程度です。10分以内に全ての設問に答えられれば、原則としてB評価以上になると考えて良いでしょう。逆に10分を超えてしまうとC評価がつく場合があります。但し、10分を超えても回答が続いていると判断された場合など、試験委員の裁量で時間が延長されることもあります。
なお口述試験では、試験委員の方の許可を得て、貸与される法文集を見ながら回答することができます。但し次の問題に移ったら、一旦閉じなければなりません。
毎年の合格率は93%〜98%程度となっており殆どの方が合格されますが、100%ではなく不合格となってしまう方もいるため、油断は禁物です。
不合格になってしまう方の例として、緊張しすぎて頭が真っ白になり時間内に回答しきれなかった、試験委員との会話が噛み合わず時間内に回答しきれなかった等のパターンがあります。
ですので、口述試験で少しでも緊張を和らげるために、対話形式で人に説明する練習を重ねることが有効です。私はX(Twitter)で口述練習を一緒にやっていただける方を募集したり、会派の練習会に参加するなどして、口頭で説明する訓練を重ねました。
短答式試験、論文式試験、口述試験を全て合格することで、晴れて弁理士試験最終合格となります。
ここまで弁理士試験の概要を書いてきました。次の記事からは、私が具体的に実施した勉強方法や試験の攻略法について書いていこうと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?