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朝刊が届くとき

新聞配達のバイクの音が、夢うつつの私にそろそろ朝だよと教えてくれる。

関西の私大に通う息子は、いま二回生だ。夏に帰省したとき、大学のことや将来のことで悩んでいる様子だった。家計をやりくりして仕送りし、勉学に集中する環境があるのに、何がだめなの?と説教をすることもあった。
そして、電話をしても出ないことが増えた。

先日、用事ができて帰省した息子が、驚いたことに「俺さ、新聞配達始めたよ」と言った。塾のバイトの方がいいのに、と言いかけて言葉を飲み込んだ。息子が朝刊の配達の様子を、とても楽しそうに話し始めたからだ。

折り込み広告のはさみ方や雨の日の袋詰め、家によって違う郵便受けのこと。バイクの乗り方や、迷惑をかけないよう気をつけていること。そして、暗いうちから新聞を待っている人がいること。どれも私の知らないことばかりだった。

今度のお正月は、配達があるから二日にとんぼ返りの帰省になると言う。あぜんとしている私に「元旦の配達が楽しみ」と笑った。

もうすぐ二十歳の息子に、どんな心境の変化があったのだろう。心配ばかりかけてと思っていたけれど、親の知らないところで成長もしているようだ。

今日も息子は新聞を配っている。そしてどこかの誰かに、朝がきたことを知らせていることだろう。


※6年前の大晦日の新聞に掲載していただいた作文です

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