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大量のイチゴショートケーキ

昨日、同僚から聞いた20トンの在庫の話から思い出したことがある。

学生時代、私はあるケーキ屋さんのチェーン店でアルバイトをしていた。
店は商店街にあり、オーナーは市内にもう1店を経営していた。

バイトは夕方から閉店までの勤務だったので、その日の売上の計算と、売れ行きを見て翌々日の発注をするのが決まりだった。

その“翌々日”というのが、後で大変なことになるのだが、よく考えられたシステムだなと思った。
翌日分では工場からの発送が間に合わないから、翌々日。
発注数を考えるのもバイトの仕事だが、迷った時には店長に電話で相談することもあった。

そのシステムが便利なのは、誕生日ケーキなどの注文が入った時で、翌々日以降の分ならいつでも発注することができ、発注忘れを防ぐことに役立っていた。

なんと電話のプッシュ回線を使ったそのシステム、12003と打てばイチゴショート3トレー、27005でシュークリーム5トレー注文といった感じだったと記憶している。

詳しいことは忘れたけれど、入力が完了すると横にある機器からレシート状の控えが打ち出されるのだった。

間違いないか何度も確認し、打ち間違えたら訂正する方法もあった。

にもかかわらず、発注事故(?)が起きてしまった。

ある日バイトに行くと、今日は何ひとつ届いていないと言う。
注文した物が届くのは深夜。
朝のパートさんが出勤すると、配送が完了しているはずだった。

みんなが口々に変だね…と言いながら、昼間に店長がもう一つの店に頼んで、その日に売るケーキを融通してもらったと知った。

その不可解な出来事の翌日のことだ。
出勤すると、今度はケーキが大量に届いたことを知る。

商店街のその店は、最近売上げが落ちていた。
いつもの2倍のケーキが届いたと聞いて、これはメーカーの嫌がらせじゃないの?なんて、バイト仲間と言っていた。
大量のケーキをさばくのは無理で、店長が前日とは逆に、もう一店舗に頼んで売ってもらうことにしたらしかった。

たぶん工場や配送にも確認したと思う。
こんなことがまたあっては困るからと、あらゆる確認作業をした。

そして、

やっちまったのは私だと判明した。

先ほども言ったように、発注は翌々日以降の分ならいつでも受付可能なシステムだ。
そのプッシュボタンを押すのに、翌々日の日付を入れるつもりが、翌々々日の日付を入力してしまっていた。
レシートの日付など、誰もミスに気づいてくれるはずもない。

つまり私のしでかしたことは、こんな感じ。
今日、2月7日の発注をしたつもりが、2月8日の発注をしてしまっていた。
そのため、7日には何も納品されなかった。

さらに6日のアルバイトは、正しく8日の発注をするわけで、結果8日には2倍ほどのケーキが届いたということだ。

オーナーは、高級な焼肉店に連れてってくれるような太っ腹だったから、お咎めはなかったけれど、わかった時は焦った。
慌てて後始末をしてもらったんだろうな。

大変な失敗を、今ではまるで武勇伝のように言っているけれど、何十年経っても思い出す。
どんな仕事もダブルチェック、さらなるチェックは疎かにはできない。
そんな教訓として、笑ってもらえたら嬉しい。


長くなりました。
お読みくださってありがとうございます。
これから忙しい季節、ミスのないよう地道に頑張ります。

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御手洗 育/暮らしのエッセイスト
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