何が見えているの?
午後から義母の病院へ面会に行った。
実の父も母もタイミングがなくて、今際の際で手を握った記憶がない。
しかし、義父のときは「手を握ってくれ」と頼まれ、今入院している義母も帰り際に手を握るようにしている。
それは、自分の親にできなかった残念な思いを、果たせるような気がするから。
そしてもうひとつは、義父のときにまさか想像もしなかったことで、何度か泣かされた義父なのに、予想しない感情が湧いたから。
決して美しいことではなく、今もちゃんと言葉で言い表せないんだけれど。
義母は入院当初のせん妄が多少落ち着いたものの、まだ私には見えないものが見えたりする。
今日は1時間足らずの面会で、たくさん話した。
と言っても、疲れればずっと黙っている。
そんな中、義母は単なる夢とは思えない、お迎えが近いのかと感じる話をする。
子どものころの話や知人がたくさん出てくる。
生々しくてここでは書けないけれど、夫に伝えなくてはとメモを取る。
私にとっては付き合いにくいところのあった義母の、その話の向こうにある思いを想像すると切なくもなる。
話の辻褄が合わないときはただうなづいて聞く。
夫や息子の話になると、日にちも状況も鮮明になるので、私も話す。
帰り際、義母が笑いながら、今は死ぬか生きるかの分かれ道にいるんだと言った。
私は否定しないで、そうなのと笑った。
カーテンを閉めるとき、義母が点滴のない方の手を上げて、「気をつけて帰れや」と言った。
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