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受け継がれるもの
貴金属のお直しをたまにお願いする会社に出かけた。
宝石や装飾品はあまり身につけないのだが、母からもらったものは大切にする義務があるような気がして、ここ10年余りその会社にお世話になっている。
母も宝石が好きだったわけではないので、もらったのは2つの指輪だけ。
ひとつは、父が人生で一度だけ母にプレゼントしたメキシコオパールの指輪。
もうひとつは、母が自分へのご褒美で買ったものか、それはそれは小さなダイヤが3個並んだ指輪だ。
ふたつ合わせても、評価額十数万円くらいのものだと思う。
そのどちらもリフォームしてもらい、可愛いリングに生まれ変わった。
小さなダイヤはいつも私の左手に。
オパールの方は、今日は勝負だ!という日につける。
真珠のネックレスがゆるんでしまったとか、チェーンが切れたとか、全く儲けの出ない私にも優しい対応なのが嬉しい。
夏と冬に社内展示会があるので、今回もその期間に合わせて、切れたチェーンのお直しに出かけた。
今日は夫が一緒だ。
車で待つのもナンだからと、隣の椅子に座っている。
円安や海外情勢が、商売にも影響があるという話を、興味深そうに聞きながら。
私はというと、興味ないと言いながらも、展示されているキラキラしたものが気になって見ている。
そして、ふと目に止まった白蝶貝のペンダント。
わかりやすく言えば、ヴァンクリフのお花の形の、ほぼあれだ。
小さなプライスカードに目を凝らす。
6ケタの数字が1から始まるのを確認した😆
なぜだか私の心が揺れる。
「今月は還暦のお誕生日だよね」なんて、もうひとりの私がささやく😆
「これ素敵ですね」と言う私に、会社の方が説明をしてくださる。
もしここで「これほしい」と言ったら…。
だいたい夫の反応はわかっている。
聞けばまた迷うだけなので、平然とした顔でチェーンの預かり証を受け取り、帰ってきた。
年齢とともに物欲がなくなっていくのを感じる。
でも、たまにはこんなワクワクも楽しくていいじゃないと思う帰り道だった。
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