前虎後狼Workation旅;最後に小樽芸術村(街で★深読み)
前回は:
小樽Workation旅の最終日は、チェックアウトの11時前に部屋から追い出され、しかし航空便が丘珠空港を出る時間は午後7時、ということで時間がかなりあります。
また文学館でオシゴトしてもいいのですが、ここはやはり「旅」を優先、ホテル近くの『小樽芸術村』と称する4つの美術館を訪ねることにしました。
何せ、5泊分いただいた『北海道クーポン』があります。
『小樽芸術村』というのは運河近くの4つの美術館から成っており、全館入場券を買うと単独合計よりちょいと安い。
4つの美術館は、いずれも凝灰岩「大谷石」でできた建物です。
以下の順で回りました:
・旧三井銀行小樽支店(重要文化財)
・似鳥美術館(旧北海道拓殖銀行小樽支店)
・西洋美術館(旧浪華倉庫)
・ステンドグラス美術館(旧荒田商会・旧高橋倉庫)
旧三井銀行小樽支店
子供の頃、大銀行(例えば旧東海銀行)の本店はこんな感じの天井の高い建物だったような気がします。
小林多喜二も小樽高商を卒業後、北海道拓殖銀行に勤めていたそうなので、職場はこんな感じだったんですね。多喜二が関わった小樽港湾争議の労働者たちは彼よりひと桁低い収入だったのかもしれません。そのあたりからプロレタリア文学に入って行ったのですね……。
さらに言えば、平等化が進んだ今と違って、大正期あたりの大銀行支店長って、一般行員よりさらにひと桁大きな収入を得ていたのでしょう。
昭和初期、商社の課長クラスは1回のボーナスで家が買えた、という話を読んだことがあります。
この建物の中で私が一番気に入ったのは、賓客用応接室にある大きな棚です:
これらは、透明な円錐型ガラスに入った、この地域の産出品の「サンプル」です。
石炭など鉱物をはじめ、昆布などの海産物、穀物・コーンなど農産物が並んでいます。
銀行を仲介役として、大きな商取引がここで行われたことでしょう。
似鳥美術館
北海道札幌市で起業した「ニトリ」が集めた美術品を展示しています。
1階のステンドグラス(ティファニー創業者の息子で芸術家、ルイス・C・ティファニーの作品)だけは撮影可能でした。
写真は撮れませんでしたが、絵画コレクションはなかなかのものでした。特に、
谷 文晁「孔雀図」
伊藤 若冲「雪柳雄鶏図」
藤田 嗣治「カフェにて」
江戸後期の南画家・谷文晁は、苗字が同じという理由もあり、以前から気になっています。
衝立として金地大画面に描かれた孔雀は豪華かつ活き活きとして見事ですが、実はこの衝立裏には文晁の次男・谷文二が「雁図」を描いており、けれど当然、衝立の裏は見ることができない。
偉大な父を持つとその陰に隠れてしまう ── まさにそれを体現しているかのような展示品でした。
文晁は江戸下谷根岸に生まれ、文才画才双方に優れ、田安家の絵師の傍ら、旅好きで全国の山を写生したという。
晩年まで絵筆を振るい、弟子として渡辺崋山など大家を育てながらも、私生活は遊興に耽り、要するにやりたいことをやって79歳で亡くなった。
辞世の歌は、
ながき世を 化けおほせたる 古狸 尾先なみせそ 山の端の月
── かくありたいものです。
西洋美術館
「運河沿いの倉庫の変遷」で書きましたが、以前レストランなどが入っていた倉庫の一部をニトリが改装し、昨年(2022年)4月に4つ目の小樽芸術村美術館としてオープンしたものです。
この中は写真撮影はOKで、ガラス製のランプ、マイセンの陶磁器、アール・ヌーヴォー、アール・デコの家具や調度品、作者不詳の絵画や彫刻が展示されています。
ステンドグラス美術館
19世紀後半から20世紀初頭にかけてイギリスで制作され、教会の窓を飾っていたステンドグラスの実物(教会が取り壊される機会に外されたものらしい)が集められています。
4館を隅々まで歩き回ったらさすがに疲れました。
でも、「似鳥美術館」の絵画と「ステンドグラス美術館」はなかなかのものでした。
これまでに小樽には3回来たけれど、やはり、時間とお金(入場料)と両方必要なので、優先順位から後回しになりがちでした。
今回、5泊6日のWorkation旅で時間に余裕があり、かつ、北海道クーポンをいただいたことで見学の機会を得ました。
感謝!
この続き(最終回)は……
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