プールサイドで《豊登》
「教室後ろで4の字固め」に続く、
「ああ、やってた、やってた、── バカな男子が」シリーズ
第二弾です。
小学生の頃、プロレスラーの「推し」で一番人気はアントニオ猪木、2に豊登でした。
後に何故か国会議員になった猪木のことは知っていても、豊登を知らない人は多いかもしれません。
豊登は大相撲からプロレスに転身し、力道山亡き後、日本プロレスの2代目社長に就いた人物です。
色黒で筋肉質、1964年にデストロイヤーを破ってWWA世界ヘビー級王座を奪取したくらい強かったのですが、ギャンブル好きが高じて会社の金を私物化するなど問題が多い人物でもありました。
私が「教室後ろで4の字固め」をかけられている頃には、既に日本プロレスから追放され、ライバルの国際プロレスに雇われていました。
東海高校柔道部出身のサンダー杉山と組んだタッグは、日本プロレスの馬場+猪木より強いんじゃないか、と子供ながらに確信したものです。
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さて、本題です。
豊登はプロレスラーとしての実力以上に子供たちに《ウケていた》のは、試合前の彼のパフォーマンスでした。
両腕を大きく広げると前で交差し、右手と左脇、左手と右脇の間で、「パコン、パコン」と大きな音を鳴らすのです。
それは、彼の色黒とも相まって、なんだか動物園のオスゴリラが興奮し、荒ぶってるようなワイルドさを感じさせたものです。
外国人レスラーがこの音を気持ち悪がる、という説もありました。
豊登は、レスラーとして不調な時でも、このパフォーマンスで客の喝采を浴びていました。
(パコン動画を探したのですが、見つからない……)
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夏になり、体育の授業でプールが始まると、海パン姿になった男子小学生が豊登を真似て必ずやるのが、この「パコン、パコン」でした。
これも巧拙があり、うまく音を出す子とそうでないのがいましたね。瘦せているとうまくいかず、肉付きがいい体形がいい音を《奏でて》いました。
NHKの科学番組か何かで、「豊登パコン」音響効果決定メカニズムを解明してもらいたいものです。
チコちゃんに、
「豊登のパコンパコンって、あれ何?」
と質問してもらう手もありますが、パコン自体知らない人ばかりでは問題として成立しませんね。
私見ですが、脇の下と手のひらの間で完全に空気を閉じ込めることができないと、大きな音は出ないように思います。
閉じ込められた空気の急激な圧力変化が決め手なのでは……?
プールサイドで「パコン、パコン」やり出す《バカな男子》を見て、紺色スクール水着姿の女子は、
「また、やってるよ、〇〇君たち」
「**君は全然いい音出てないじゃん」
的クスクス笑いで見ていたようです。
これだけは女子水着では(たぶん)不可能な《芸》で、上半身裸の《バカな男子》特権(?)でしたね。
オスのインド孔雀が羽を広げるような《対メス・ディスプレイ行為》だったかもしれません。
桑田佳祐は1983年、小林克也率いるナンバーワンバンドに、「プロレスを10倍楽しく見る方法〜今でも豊登を愛しています」という曲を提供しています。
当然、歌詞中にもやはり、「パコン、パコン」と小林克也が絶叫する箇所があります。
ここまで書いた後、そういやしばらくやっていないな、と風呂場でトライしました。
……全然鳴りませんでしたね。
小学生時代がパコン全盛期だったのかなあ……。