【狐と狸の化かし合い】(新釈ことわざ辞典)記事版
狐は狸を、狸は狐を化かそうとしている? ── いえいえ、そうばかりとは限りません。
選挙期間中は、狸も狐も、それぞれありとあらゆる権謀術策を弄して我々ニンゲンを騙そうとしています。
ご注意を!
選挙を茶化すつもりは毛頭ありません。
売れなくなったタレントが安定した収入源を確保しようと考えているわけでもなく、票確保のため耳障りのいい対症療法的なバラマキ政策を羅列する選挙巧者でもなく、国政で行き詰まったので首長選に流れてきたわけでもなく、真面目に問題の真因を論じる候補者もいるようです。
── 狐でも狸でもないヒトもいる。
選挙期間中に特定の候補者について具体的に語るのは(私の記事を読む人の数などたかがしれているとはいえ)不適当と控えていましたが、昨日投票が行われ、結果も判明したのでもういいでしょう。
例えば少子化対策です。東京では出生率が初めて1を割り、0.99となったニュースが流れたばかりです。
当然、どの候補も政策として訴えています。
小池さんは基本、対症療法型バラマキです。出産・教育関連で助成や無償化を行う、と言っていました。
蓮舫さんは(具体策はわかりにくいけれど)、若者の正規雇用への転換など、手取りを増やすことで、結婚をためらう人たちを支援する、と訴えていました。
しかし、そもそも東京で結婚や子育てがしにくいのは、人口が集中し過ぎて住居コストを含めた生活コストが高すぎるためです。
小池さんは教育無償化どころか子育て世帯への家賃負担軽減まで言い出しました。これはもはや政策ですらない。
純粋なバラマキであり、人口集中をますます高め、何よりも東京に本社を置く大企業が全国で稼いだ金から出した税金を都民だけのために使う、というきわめて不公平なバラマキです。
そんな中では、石丸伸二さんの少子化対策は、
真因に直球です。具体策はぼかしていますが、『東京一極集中』をなんとかしない限り、少子化も防災などその他の問題も解決できないって、彼だけでなく、本当はみんなわかっている。
わかっているのに言わない。
なぜかは次のような《信仰/常識》のせいでしょう。
今朝の『羽鳥慎一モーニングショー』で、玉川徹さんが、石丸伸二さんの政策について、
「東京から人を減らす、と言っているようなものだから、この人は本気で都知事になろうとしているのではなく、次の地方の選挙を見ているのではないか」
と言っていました。
石丸さんが何を考えているかはわかりませんが、玉川さん意見の背景にある、
《人口が増える=税収が増える;それは《善》である》
という《信仰/常識》です。
でも、この《信仰》は、もはや東京には当てはまらないのではないか、と私は思います。
少子化や防災を含め、危機管理コストを含め、全てを考慮に入れれば、東京はこれ以上人を増やしてはいけない、むしろ減らすべきでしょう。
かつ、日本の名だたる企業が本社を置き、大きな税金を落とす首都東京は、東京のことだけを考えていてはいけない。
そう、東京だけの《バラマキ》ではなく、《全体最適》を考えなければならない。
今後、高齢者が増える東京で介護の人手をどう確保するか、も選挙戦のテーマになっていましたが、住居コストの高い東京で年金生活を送る高齢者の介護を行うこと自体、『無理』とはっきり言うべきではないでしょうか?
今回、玉川さんが言うような《信仰》にもかかわらず、石丸さんが一定の票を集めたことで、
「東京都民もけっこうわかってるじゃん!」
という気持ちにさせられました。
「狐や狸に化かされないヒト、けっこういるじゃん!」
あ、言っておきますが、私はこの人物のことを支持しているわけではなく(そもそもよく知らない人なので)、彼の政策(特にこの記事内の引用部分)を支持しているのであり、誤解のないようにお願いします。
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