【創作短編小説】醜い顔のソロ冒険者(7,344文字)
私は冒険者だ。
ソロの冒険者だ。
本来、冒険者とは仲間とパーティーを組み強敵に戦いを挑むらしいが、私はパーティーを組んでいない。
そもそも仲間がいない。
どうやら私の容姿に問題があるらしい。
父譲りの勇ましいこの顔は、他の人からすると少々醜いらしい。
それならばそれで仕方がない。
別段、絶対に仲間が必要という訳ではないのだ。
私には父から譲り受けたこの逞しい腕と、父から譲り受けたこの金属でできた棍棒「メイス」がある。
大概の魔物は私がこのメイスで殴りつけると倒すことができる。
多少苦労はするが、特別困っている訳ではないのだ。
偉大なる戦士だった父。
そんな父が2年前に他界した。
いくら屈強な戦士だったとしても、流行り病には勝てなかったらしい。
「お前にはこのメイスをやろう。弱者を守れる、強き優しき戦士になれ。」
父の最後の言葉だった。
父を埋葬した後、私は旅にでた。
父のような立派な戦士になるため、冒険者になることを決意したのだ。
将来の夢は立派な剣を手に入れ、誰もが憧れる強き優しき戦士になることだ。
私は今日もメイス片手にソロで冒険をする。
「助けてくれ!」
私が街道を勇ましく歩いていた時、やや遠方から悲鳴が聞こえた。
目を凝らしてみると、中年の肥えた男性が三匹の犬型の魔物に襲われている。
魔物、それは突如世界に現れたとされる謎の多き存在。
犬型、人型、トカゲ型と様々な種類が存在し、魔物全ての存在が人をまるで親の仇かのように憎しみ襲う。
なかには人に友好的な魔物も例外的に存在するらしいが、それは異例中の異例。
目の前の光景ももれなく魔物が人を襲っている、普段からよく見慣れた光景である。
私は男性を助けるため、地面を蹴り砂埃を巻き上げながら駆けつける。
私の存在に気が付いた魔物たちが一斉にこちらを警戒したのもつかの間、まるで興味を無くしたかのように魔物たちは再び目の前の男性に向き直り、襲いかかろうと姿勢を低くする。
私はその好機を逃さず駆けつけた勢いのまま、一番手前にいた魔物の顔面にメイスを振り抜く。
無防備だった魔物の顔面に吸い込まれるように振り抜かれたメイスは、一撃で魔物の命を狩り断つ。
突然の状況に戸惑いを隠せない魔物たち。
私はもう一匹の魔物の頭めがけて、全力でメイスを振り下ろす。
するとまるで果物を踏み潰したかのようにひしゃげる魔物の頭。
状況を理解した残り一匹の魔物が、私の喉元めがけて飛びついてくる。
私は体を横に反らし、すれ違いざまに相手の顔面にメイスを叩き込む。
飛び込んできた勢いも合わさり、魔物の顔面が体に食い込み絶命する。
一瞬の出来事だった。
いくら相手の隙を突いたとはいえ、私は一対多数の戦いで完勝したのだった。
戦いも終わり安否を確認するため男性に振り向く私。
「ひぇっ!」
男性は振り向く私に気が付き、尻もちをついて倒れてしまう。
あんな戦いを見せた後だし、私の醜い顔だ。
動揺するのも仕方がない。
私は身振り手振りを使い、無害だということを必死に伝える。
「助けて頂きまして、ありがとうございます。なんとお礼を言えばよいのやら。」
なんとか冒険者であることを伝えた私は、ようやく相手の警戒を解くことができたのだった。
「私はすぐそこの村で雑貨屋を営んでおります。お顔も覚えましたので、なにかご用がありましたら是非お立ち寄り下さい。それとこれは僅かですがお礼の品です。是非ともお受け取り下さい。」
そう言って雑貨屋の亭主は、私に回復薬と毒消薬を渡してくれた。
私はお礼を言いその場を立ち去るのだった。
「大丈夫か!しっかりしろ!」
私が更に勇ましく街道を歩いていると、2人組の男性を見つける。
片方は顔色悪く倒れていて、もう片方はその者を支え込むように屈んでいる。
いで立ちからして、おそらく冒険者であろう。
同業者だ。
大丈夫かと思いその者たちに近づくと、
「それ以上近づくな!」
屈んでいるものが戦いで壊れたであろう剣を抜き、大声でさけぶ。
どうやら私の醜い顔と、先程の戦いで血塗れになったメイスを見て恐ろしく警戒してしまったようだ。
仲間であろう者が倒れているのだ。
私でなくても警戒することだろう。
私は再び身振り手振りを使い、無害だということを必死に伝える。
「先程は失礼した。実は仲間が魔物の毒にやられてしまってな。私も負傷してしまい、動けなくて困っていたんだ。」
こんな街道沿いに毒を使う魔物が出たとは運が無かったと言うしかできない。
しかし君たちは運が良い。
私は先程貰った回復薬と毒消薬を冒険者に渡す。
明らかにタイミングの良過ぎる私の対応に最初は怪訝な態度を示すものの、状況が状況だ。
半ば神頼みにも似た面持ちで、冒険者の一人が毒に伏す仲間に薬を使う。
するとどうしたことだろう。
青褪めた仲間の顔色がみるみる良くなり、荒かった呼吸も落ち着きを取り戻す。
安堵した冒険者の方も回復薬を使い、負傷箇所を治していく。
「ありがとう!お陰で助かったよ!良かったらコレを貰ってくれ!」
そう言って冒険者は石化解きの薬を数本渡してくれる。
「この先へ行くなら絶対に必要なものだ。まあオレたちは毒にやられたんだがな。」
ははっ、と乾いた笑いを溢す冒険者。
私はお礼を言いその場を立ち去るのだった。
「きゃーー!」
私が更に更に勇ましく街道を歩いていると、複数の女性の叫び声が聞こえる。
何事かと思い目を凝らしてみると、目の前でトカゲ型の魔物に襲われている集団を見つける。
アイツは!
あのトカゲ型の魔物には見覚えがある。
確か人を石に変える力を持つ強力な魔物だ!
現に複数人の人が石に変えられている。
私は彼女たちを助けるべく、地面を蹴り砂埃を巻き上げながら駆けつける。
するとトカゲ型の魔物は私の存在に気が付きはするも、こちらには目も向けようとせず目の前の女性たちに食らいつこうとした。
させるか!
私はいつもの要領で駆けつけた勢いそのままに、トカゲ型の魔物の頭にメイスを振り抜く。
不意をつかれたトカゲ型の魔物の頭にメイスが命中するも、いつものように一撃では終わらない。
私は更に追撃と二度、三度とトカゲ型の魔物にメイスを振るう。
するとトカゲ型の魔物は勢いに押されたのか、街道沿いの森の中へと逃げていったのだった。
私は安否を確認するため、襲われていた集団の元へと向かう。
「きゃー!」
女性の集団は私の醜い顔を確認するやいなや、叫び声をあげてしまった。
先程まで食べられかけていた状況に、私の醜い顔は少々堪えたらしい。
私は再び身振り手振りを使い、無害だということを必死に伝える。
落ち着きを取り戻した集団は、私に状況を説明してくれた。
自分たちは奴隷であること。
馬車で運ばれているところを、トカゲ型の魔物に襲われたこと。
向こうで石にされている集団が奴隷商の商人と、護衛の冒険者であること。
何人かの奴隷は混乱に乗じて逃げ出したが、自分たちは逃げ遅れて魔物に食べられそうになったこと。
…長くなりそうだったので、私は話も途中で石にされている集団の元へと向かう。
これまた都合良く私は石化解きの薬を持っているのだ。
石にされている人全員を元に戻すため、持っている薬全てを使う。
途中奴隷たちの集団から「あっ」と戸惑いの声が聞こえたが知ったことではない。
戦士とは分け隔てなく、困っている全ての人を助けるのだ。
徐々に解けていく石化。
一番恰幅の良い男性の石化が解け、意識を取り戻し私の顔を見た瞬間に「ぎゃ!」と叫び声をあげる。
やはり私の醜い顔は意識を取り戻した直後には刺激が強過ぎるようだ。
私はまたまた身振り手振りを使い今までの経緯、そして無害だということを必死に伝える。
「いやー、なんとお礼を申せばよいのやら!商品も数名は逃げてしまいましたが、無事でなによりです!」
「助かったぜ!本当にありがとう!」
誤解の解けた奴隷商の商人と冒険者たちに礼を言われる。
「お礼と言ってはなんですが、コチラをお持ち下さい。」
そう言って商人は宝石のあしらわれた首飾りを渡してくる。
「それはおそらく名のある名家の装飾品とお見受けします。ここまで来る途中に運良く拾った物なのですが、他にお礼としてお渡しできるものがありませんでして…。売るなり着けるなり是非ともお好きにして下さい。」
私には装飾品を着ける習慣はないので正直扱いに困ったが、折角の善意だ。
なにかの役に立つかもしれないと、その首飾りを頂くことにする。
私はお礼を言いその場を立ち去るのだった。
「お嬢様をお守りしろー!」
私が更に更に更に勇ましく街道を歩いていると、なにやら前方で複数人の人が争っているのが見える。
目を凝らしてみると、装飾のされた豪華な馬車の周りを複数の甲冑を着た戦士が守り、その周りを蛮族の格好をした男たちが取り囲んでいた。
おそらく盗賊の類だろう。
しかし数が圧倒的だった。
甲冑を着た戦士のおおよそ3倍ほどの数の盗賊が馬車を取り囲んでいる。
私は襲われている人たちを助けるため、地面を蹴り砂埃を巻き上げながら駆けつける。
私の存在に気がついた戦士や盗賊たちは死が迫る戦いの中だというのに、驚いたように一斉にギョッと体を硬直させ私を見る。
私の醜い顔がとんでもない速さで近づいて来ているのだ。
ビックリして体を強張らせても仕方がない。
私は何時ものように駆けつけた勢いそのままに、盗賊の顔面にメイスを振り抜く。
するとメイスを振り抜かれた盗賊は顔をひしゃげさせ飛んでいき、二転三転と地面を転がる。
そのままピクリとも動かなくなり絶命したことを物語る。
仲間がやられた状況を理解した盗賊たちは憤怒し、一斉に私に飛び掛かってくる。
甲冑の戦士たちは未だに状況を飲み込めず右往左往している。
できることならば手を貸してほしいのだが…
私は迫りくる盗賊たちを避けては殴り、避けては殴りを繰り返していた。
やはり専門の訓練を受けていない野良の集団。
統率がとれておらず、数は凄いがそれだけなのだ。
私が三人目の盗賊の命を狩り取ったところで、甲冑の戦士たちがようやく状況を理解し戦いに参加する。
それからは一方的だった。
甲冑の戦士たちは流石に統率のとれた動きで盗賊たちを圧倒する。
半数以上の盗賊の命を断ったところで、彼らは一目散に撤退するのだった。
「ありがとう。貴殿の助力のお陰で、なんとかお嬢様をお守りすることができたよ。」
甲冑の戦士の中で、一番強そうな男が私に礼を言ってくる。
「…貴方様ですか?私達に助力して下さった戦士様というのは?」
そう言って馬車から一人の少女が出てくる。
「私はこの地の領主の娘…ひゃ!」
少女は私の顔を見るなり叫び声をあげる。
私の醜い顔は、今は返り血も浴びてデロデロで大変な状態なのだ。
「取り乱してしまい申し訳ありません…あの…その…」
少女には刺激が強過ぎる状況なので、青白く震えていても仕方がないのだ。
「お嬢様、あとは我々で対応しておきますので、無理はなさらないで下さい。」
私と少女の間に戦士が割って入る。
そうだ。
先程貰った首飾りをあげて、少女には機嫌を治してもらおう。
私は自分には分不相応な首飾りをそっと少女に差し出す。
「…!それは私が無くした領主一族の首飾り!」
なにか不穏な言葉が聞こえる。
「貴様!さては族の一味か!」
戦士全員が私に剣を向ける。
私は焦った。
私は何度も行う内に上手になった身振り手振りを交え、今日一日の出来事を必死に伝える。
「それは失礼した。してその首飾りはお嬢様にお返し頂けるのだろうか?」
私はもちろんと答え、首飾りを少女に渡す。
「ありがとうございます!ありがとうございます!首飾りを無くしてしまい本当に困っていたのです!なにかお礼をさせて下さい!」
私は貰い物なので礼などいいと答えるのだが、それでは少女の気が済まない。
「貴方様の今日一日の行いは正に清く気高いもの。なにか…そうです!」
少女はなにか思いついたのと同時、馬車の中へと入っていく。
そして数分の後、一本の剣を持って馬車から出てくる。
「これは名工の手によって鍛え上げられた名剣!是非とも貴方様がお持ち下さい!」
そう言って少女は私に、それはそれは立派な剣を手渡してくる。
私はあまりの出来事に四苦八苦していると、「貴方様のような戦士様に使われてこそ価値があるのです。」と満足気にしている。
私はでは遠慮なくと剣を貰うことにした。
私はとうとう立派な剣を手に入れ、憧れの戦士になることができたのだった。
私は街道をそれはそれは意気揚々と歩いていた。
私の醜い顔もだらしなくニヤついていたかもしれない。
いけないいけない。
戦士とはこんな腑抜けた顔では駄目なのだ。
もっと毅然とした態度をとらないといけないのだ。
気を引き締め顔に力を入れるが、夢にまで見た立派な剣を手に入れたのだ。
腰に下げている剣に視線を落とす。
自然と顔が緩んでしまった。
(…グスッ…)
ふと、街道沿いの森の方から誰かの声が聞こえた気がする。
私は森の中へと入っていく。
「グスッ…グスッ…」
そこでは身なりがボロボロの少女が、元気もなく座り込んで泣いていた。
雰囲気からおそらく、先程の奴隷商の商人が魔物に襲われた際に逃げ出した1人だろう。
私は安否を確認するため少女に近づく。
すると少女は私の存在に気が付き顔をあげる。
「グスッ…お腹が…」
少女は私の顔をジッと見つめ、特に動揺する気配もなく…
「…お腹が…お腹がすいたよぉー!うえぇぇーーん!」
とうとう大声で泣き出してしまった。
私は大いに動揺した。
いつもであれば私の顔を見た者が動揺するはずなのに、少女は逆に私を動揺させる。
こんなのは初めてだ。
私はどうしたものかとワタワタと取り乱す。
戦士なのにこんな姿を晒してどうするのだ?
…そうだ、私は戦士なのだ。
強き優しき戦士なのだ。
なれば行うことはただ一つ。
私は大声で泣く少女をその場に置いて、今来た道に振り返り走り出した。
街道まで出て、今来た道をひたすらに引き返す。
途中、豪華な馬車を追い抜く。
途中、奴隷を引き連れた集団を追い抜く。
途中、2人で支え合いながら歩いている冒険者を追い抜く。
そしてようやく辿り着いた村に私は勢いそのままに入っていく。
「きゃーー!」
私の存在に気がついた村人たちが私の醜い顔を見て大声で叫ぶ。
しかしそんな事は気にもならない。
私は辺りを見回す。
すると騒ぎで店から飛び出してきた見知った顔を見つけ、私はその中年の肥えた男性と共に雑貨屋の中へと入っていった。
ワタシは一人、森の中でただただ泣いていた。
両親はいない。
2年前に流行り病で亡くなってしまった。
その後親戚に引き取られたが、そこでの扱いも酷く数日後には奴隷商に売り飛ばされてしまった。
ワタシはいらない子らしい。
それから馬車に乗せられてからは、よく覚えていない。
人が減っては増え減っては増えを繰り返し、気がつけば周りの人の顔ぶれが最初の頃と全く代わっていた。
ワタシはいつまでも馬車の中にいた。
最初の頃はそれなりに食べさしてくれた食事も、今はクズやさいのスープを少しだけ。
最近はろくにお腹が膨れたことがない。
ワタシは段々と動けなくてなってきて、いつも馬車の端の方で伏せてしまうようになった。
奴隷商の人や周りの人が、ワタシのことを邪魔者のように見てくる。
ワタシはその視線が嫌いだった。
そんな時だった。
馬車が魔物に襲われたのは。
場は混乱し、人々が一心不乱に逃げ惑う。
幸いワタシは誰にも心配されない、誰にも気にされない存在だったので、気づかれずに森の中へと逃げ込むことができた。
それからワタシは一人、最後の力を振り絞って森の中を歩いた。
しかしろくに食事もできなかったワタシの体力はすぐに底をつく。
動けなくなってしまい、その場で座り込んでしまった。
なんとなく自分はもう駄目なんだなと思う。
そう思うとワタシはもうただただ泣くことしかできなかった。
そんな時だ。
戦士様が現れたのは。
戦士様は腰からとても立派な剣を下げていた。
きっと名のある戦士様なのだろう。
その戦士様がこともあろうか、ワタシのことを心配して顔を覗き込んできた。
久々に見る他人を気遣った優しい目。
両親がワタシが転んだ時によく向けてくれる優しい表情。
それからはもう駄目だった。
我慢していた感情が一気に爆発してしまった。
ワタシは空腹で鳴り止まないお腹を押さえながら、ただただ大声で泣いてしまった。
するとしばらくオロオロしていた戦士様は、どこかへと走り去ってしまった。
ワタシはまた捨てられたのだ。
もうワタシの感情は止まらない。
いつまでもいつまでも泣いていた。
…あれからどれぐらいの時間が経ったのだろうか。
戦士様が戻ってきてくれたのだ。
ワタシは今度は嬉しくて泣いた。
大声で泣いた。
いったいワタシのどこにこれだけ泣ける体力が残っていたのだろうか。
しかしワタシは泣きながら気がついてしまったのだ。
戦士様の優しい笑顔。
戦士様が両手一杯に抱えきれないほどの食べ物を持っていること。
そして…
あれだけ立派だった剣を、もう持っていなかったことを。
私は少女を連れて小高い丘まで来ていた。
時刻は夕刻。
眩しく感じるほどの夕焼けが辺りを照らす。
私は少女と共に、ただひたすらにご飯を食べていた。
二人では食べきれないほどのご馳走。
少女はお腹が空いていたらしいが、私もお腹が空いていたのだ。
今日一日色々あり過ぎて、ろくに食事もとっていなかったのだ。
少女は最初遠慮をして細々とご馳走を食べていたが、今ではしっかりと食べている。
それで良い。
すると少女はお腹が落ち着いたのか、食事の手を止める。
すると一言。
「ありがとう、戦士様。」
やめてくれ、私はもう戦士ではなく冒険者だ。
それに様などと呼ばれる立場ではない。
少女は少し考える。
「そう…、わかった。じゃあ…ありがとう、ゴブリンさん」
少女は私の顔を見つめ、満面の笑みでそう言ってくれる。
私は恥ずかしくなり、照れを隠すようにご馳走を豪勢に頬張る。
今日は色々あったが、明日はどんな一日になるだろう。
しかし大丈夫だ。
私には屈強な魔物の父から受け継いだ逞しい腕、丈夫なメイス、そして父とそっくりな戦士の顔を貰うことができたのだ。
明日からも上手にやっていけるだろう。
私はソロ冒険者だが、一人ではなくなったのだから。
夕焼けの照らす丘の上、二人の食事はいつまでも続くのだった。