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霜花——迷迭香 2

 美術部員は三人。その中に彼女はもちろんいない。目があった瞬間少しの気まずさを覚える。確か同じクラスだった気はするが私は名前を覚えるのが得意ではない。必死に名前を思い出そうとしている間に彼女は私の隣で雲を眺めていた。パッとこちらに振り向くと、かすかにシャンプーの香りが舞う。
「あなたも生徒指導?こんな暑い休日に学校なんて最悪だよね……。ねえごめん名前なんだっけ?」
「八宮。違うよ。作品が私だけ終わってないの。あなたは確か……浅…倉…?」
ぶっ。思わず彼女が吹き出す。どうやら違っていたようだ。
「佐伯 霜花。霜花でいいよ。よろしくね八宮さん」
そう言うと再び蒸し暑い扉の先へと消えていった。夏に生徒指導で学校に呼び出されるなんていったい何をしたんだろう。またそんなことを考えながら再び窓の外へと視線を移す。空から少し下に目線を移すと向かいの教室で生徒指導の教員が霜花と何か話しているのが見えた。
「なるほど。あのエロ教師に捕まったのか。」
誰に聞かせるわけもなく呟く。あの教員は隣のクラスの担任が産休に入ったその埋め合わせで七月初めに入ってきたばかりだが、あまりいい噂を聞かない。初めはその容姿から勝手に誰かが妄想した作り話かとも思ったが、確かに目線が気持ち悪くもあった。
 しかし、よくよく教室を見てみると霜花以外にも指導を受けている生徒がいるようで少し安心する。結局今日も何も手をつけないまま一日が終わってしまったが不思議と焦りはない。最近こうして何も考えられなくなってしまうことが多くなってきた。これも一種の現実逃避なのだろうか。
 カバンについたキーホルダーが薄く汚れているのを見て一つため息をつく。

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