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霜花——迷迭香 4

雨か。
確かにここ一週間ほど降っていなかった。轟轟と叩きつけられた雨粒が跳ね返って泥と一緒に喫茶店の窓を少し汚している。あまり客は入っていないが、なかなかに落ち着く。カランカランと乾いた音と共にびっしょりと濡れた霜花が入ってきた。右手には見事にプラスチックの布がなくなり、骨だけになった傘が握られていた。マスターに渡されたタオルで髪を拭きながら向かいの席に座わる。
「改めて、お久しぶりだね!八宮さん元気にしてた?」
そう言いながら彼女はマスターに出されたホットミルクにストローをさして両手でグラスを包む。噛まれて潰れたストローに口紅が付いているのをぼんやりと眺めながら適当に「元気だよ」と返した。真夏にホットミルク。あの時と変わらない姿に少し安心した。

  濡れた体を冷房の風がさらに冷やす。十分前の美しい入道雲がこんなにも激しい雨を降らすなんて思ってもなかった。制服のワイシャツからふざけた柄のTシャツが透ける。カバンからスケッチブックを取り出すと、少し水分を含んで縒れていた。ふと向かいのあの教室を見ると電気は付いていない。全体的にくらい教室に髪から垂れた雫の音だけが響く。なんとなく孤独を感じながらティッシュで短い髪の水を絞った。


 

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