無自覚装具難民と訪問料について
こんにちは、義肢装具士のみうらです。
生活期の装具対応を行っていると必ず問題になるのが、訪問によってかかる時間や交通費です。
従来の義肢装具士の営業方法であれば「〇〇病院は何曜日の何時から何時まで義肢装具士がいるので、その時間に装具が必要な方を集めておいてください」といったスタンスです。
しかし、在宅となるとそうは行きません。
往復一時間かかる自宅にベルト修理のため訪問し、800円もらって帰ってくるのではどう考えても赤字です。
そのため、多くの会社では必要な訪問料を頂くことで赤字を回避している状況です。(訪問料を設定したところで黒字とまではいかないのですが…)
しかし、そのやり方には大きなデメリットがあります。
装具難民の半数以上は、使用者本人が装具の不具合に関して無自覚です。
もし不具合の自覚があったとしても、交通費や訪問料を支払ってまで装具のメンテナンスを依頼する気力はない、という方が大半です。
たとえ現状本人に自覚がなくても、装具の不調が歩行能力の低下に繋がり、さらに関節の可動域制限や拘縮などの問題を引き起こすことを考えると、放ってはおけません。
そのため周囲のセラピストやケアマネが装具の不調に気づいて声をあげる必要があるのですが、訪問料がかかるとなると相談するハードルが一気に上がってしまいます。
では、どうすれば訪問料なしで装具の在宅支援を続けられるのでしょうか。
私が重要だと思うのは以下の二点です。
①とにかく企業努力!!
私たち義肢装具士は「在宅は経費がかかるから難しい」ではなくて「在宅対応の効率をあげるためにはどうしたら良いか?」を考えなければいけません。
今、あらゆる業界でIT化による効率UPが目覚ましい勢いで進んでいますが、義肢装具業界はようやくCADCAMを大企業で取り入れ始めた程度です。
今でも多くの製作会社では、20年前と全く同じやり方で仕事を続けています。
製作過程の効率化はもちろん、訪問回数を減らすためオンラインで破損状況を確認(Zoomやラインで簡単に実現します!)、患者情報の管理・共有(QRコードによる情報管理システムも開発されていますね!)、ルート管理の徹底(Uberにならって位置情報を活用!)など私たちにできることはまだまだあります。
②地域の医療職・介護職と連携!!
在宅対応の効率をあげるためには、訪問リハビリ・通所リハビリに携わるスタッフとの連携が必須となります。
どのような状況で、どういった修理が必要なのか。それは修理で対応するべきなのか、それとも作り替えが必要なのか。
こういったことを、事前に情報共有しておくだけで対応が非常にスムーズになります。
「ベルト修理をしてほしい」と依頼を受けて行ってみたものの、装具の対応年数は大幅に過ぎており、適合もよろしくない。となると、そこから作り替えの説明や手続きを始めることになり、初めの訪問は無駄になってしまいます。
このブログを通して、まずは皆さんが利用者の装具に意識を向けてもらい、装具の適切な利用を助けてもらえると幸いです。