父と母と弟と私 #5
ICU入ったことあるのかい、ないのかい、どっちなんだい
みなさん、ICUには入ったことがありますか?
そうです。医療ドラマとかでよく見る、集中治療室です。
私は17歳の時に、脳内出血で倒れた父に会うために入りました。衝撃でした。
お父さんを手術してくれた先生がずっと担当してくれるということを知らされ、かなり安心したのを覚えてる。
というのも、執刀医と担当医が異なることは大いにあり得ることだと、事前に調べていたから。(天才?)だから、すごく安心したのを覚えてる。
ICUの扉が開いて中にいる看護師さんが左に案内してくれた。
先生は一番先頭にいたが、看護師さんに案内をバトンタッチして一番後ろにいた私と弟のところまで下がってきてくれた。
「お父さん、助かってるからね。ちゃんと顔見てあげてね。」
先生は、私たち2人にしか聞こえない声で言った。
この時の先生の言葉、すごく感謝してる。
この一言がなければ、多分私もお父さんに続いてぶっ倒れていたと思う。
と言うのも、お父さんのベッドまで行った時の衝撃がすごかった。
見たことない光景
鼻にぶっといチューブを通して、点滴打ってて、脳(頭)を手術したから頭にガーゼがたくさん貼られてて、寝ているようにも見えたけど苦しそうに呼吸していた。
これがお父さん?
正直な私の感情。
脳内出血で倒れて脳の血管がド派手にやられてしまったから、副作用?後遺症?で会話なんて出来ない。
話せたとしても「うー」とか「あー」とかだけと先生に聞かされた。
あと、視界がボヤけているから、こちらを認識しているかどうかすら分からんみたい。でも耳は完全に聞こえてるってさ。
つい数日まで一緒に暮らしていたお父さんとは全く別の人がそこにいた。
お父さん子の私には、かなり辛い現実やった。
先生や看護師さんが教えてくれるお父さんの現状。
家族として聞かなあかんのに理解しないとあかんのに、もうそれ以上聞きたくなかった。
夜中倒れる→緊急搬送→手術成功→命助かる
これだけ見たら「良かったやん!」ってなる。
でも、これは助かったうちに入るんか?と思ってしまうほどの現実がそこにあった。
いや、もちろん助けてもらえてほんまによかった。手術に失敗してたら、というか、そもそも先生が手術をしてくれなかったら、お父さんは今ここにおらんへんからさ。
そう思ったら、めちゃくちゃありがとうございますという気持ちが勿論湧いてくる。
でも、私が会いたかったお父さんじゃない。怖い、受け止めたくない。でも生きててくれてほんまにありがとう、でも・・・の気持ちが交互に来て頭がおかしくなりそうやった。
お母さんは、先生や看護師さんの話をしっかりと聞いていた。
もちろんおじいちゃんおばあちゃん、ノブヨばあちゃんも弟も。
少し前にも話したように、男の子ってやっぱりこういう時強いなぁと思った。
私は、信じられない現実を目の当たりにしてもう絶句、てな感じやったけど、弟の感情は読めなかった。泣きもせずに、ただまっすぐ前を見て先生の説明を聞いていた。
何分経ったやろう。分からん。
「では、詳しくお話しさせていただきますので別室にご案内いたします。」
先生が言ってきた。みんなで別の部屋に移動するために場所を変える。
この現実を見て、まだ何か聞かないとあかんことがあるんか。結構きつい。
別室へ向かって歩く度に、足がすくみそうやった。でも後ろにいた弟が両手で背中を押して支えながら歩いてくれた。
「大丈夫?」も何も言わずに、ただ支えて強く前に押してくれていた。
誰の顔を見ても泣きそうやった。でも病院やし耐えた。(えらい)
背中を支えてくれる弟の手が、とても温かく心強かった。
これから私たち、何を聞かないとあかんのやろうなぁ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?