どうしたら経営者保証を解除できますか?
こんにちは。
元銀行員で財務コンサルタントをしている岩瀬と申します。
最近、「経営者保証の解除」に関する相談が増えていますので、経営者保証を解除する要件や解除した場合のメリット、デメリットなどについてお話ししたいと思います。
経営者保証とは
逆に言えば、経営者保証がなければ会社が融資を返済できなくても、経営者個人が返済する必要はないということです(※個人事業主は連帯保証人ではなく債務者となります)。
経営者個人が連帯保証人になることで「資金調達しやすくなる」というプラス面もありますが、「会社が倒産した場合に経営者個人も破産せざるを得ない」というマイナス面もあるため、こういった課題を解決するために2013年に「経営者保証に関するガイドライン(guideline.pdf (zenginkyo.or.jp))」が作られました。
経営者保証に関するガイドライン
「経営者保証に関するガイドライン」の主な内容は以下の3つです。
今回は「借りる時(経営者保証を契約する時)」に関する話が中心となります。
経営者保証ガイドラインの3要件
①法人と経営者との関係の明確な区分・分離
②財務基盤の強化
③財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保
経営者保証に関するガイドラインができたことにより、経営者保証を解除するための大まかな枠組みはできましたが、具体的な判断基準は各債権者(銀行など)が決めることとなっているため、経営者保証を不要とする取り組みはまだまだこれからなのが実情です。
また、信用保証協会が2018年4月から以下のような条件で経営者保証を不要とする取り扱いを始めましたが、中小企業にとってはなかなかハードルが高いため、あまり利用は進んでいないように感じています。
そんな中、経営者保証を不要とする取り組みを更に加速させようと信用保証協会が2024年3月から始めたのが、「事業者選択型経営者保証非提供制度」です。
事業者選択型経営者保証非提供制度とは
信用保証協会が行っている「保証料の上乗せで経営者保証が不要となる」制度のことで、具体的な利用条件は以下の通りです。
対象者
保証料率
利用条件がかなり具体的に決められており、中小企業にとって現実的な決算目標となるような水準になっているため、利用を検討できる方も多いのではないでしょうか。
経営者保証を解除するメリットとデメリット
経営者保証の解除にはメリットとデメリットがありますので、それぞれについてお話しします。
メリット
一番のメリットは経営者個人の財産を守れることだと思います。
会社の経営が苦しくなったときに、真面目な方、責任感が強い方ほど経営者個人の財産を使ってでも何とかしようとします(それが経営者保証の狙いでもあります)が、経営者保証を解除すれば少なくとも経営者個人が破産するような事態は避けられるはずです。
デメリット
メリットの裏返しでもありますが、経営者個人による信用力の補完がなくなるため、今後の融資条件が悪化する可能性があります。
経営者保証の実務
ここからは経営者保証の実務についてお話ししたいと思います。
どうしたら経営者保証を解除できますか?
私の答えとしては、「銀行に確認しないと分かりません」という回答になります。
もちろん「経営者保証を解除するためにやるべきこととその手順」は分かりますが、「こうしたら必ず解除できます」とは言い切れません。
その理由は、「銀行によって対応が異なる」からです。
経営者保証に関するガイドラインはあくまでも銀行業界の自主的なルールに過ぎず、法的な拘束力はありません。
また、経営者保証を解除するかどうか判断するための明確な基準はなく、どのように運用していくかも各銀行に委ねられています。
信用保証協会が行っている「事業者選択型経営者保証非提供制度」についても、あくまでも保証業務を行っている信用保証協会が決めた申込み条件に過ぎません。
仮に申込み条件に該当したとしても、実際に融資を行う銀行が本制度を利用した融資の申込みを受け付けてくれない場合もあります(つまり経営者保証がなければ融資しないということです)。
逆に、こちら(会社側)から依頼したわけでもないのに、「今回は経営者保証なしで大丈夫です」と銀行から言われることもあります。
経営者保証は「解除しよう」とするものではなく、業績が向上すれば「解除される」もの
銀行は金融庁などに報告するためにいろいろな書類を作成しています。
経営者保証なしで融資を行った件数を確認して報告したり、経営者保証ありで融資を行った場合には本当に経営者保証が必要なのか検討した書類を作成して保存する必要もあります。
国の方針として、「経営者保証なしの融資を増やしていきたい」というのはある程度はっきりしているため、銀行としても国の意向に沿った方針で経営せざるを得ないわけです。
つまり、銀行は「経営者保証なしの融資を増やしたい」ということです。
逆に言えば、「銀行から経営者保証なしでの融資を提案されない」ということは、「現時点では経営者保証を解除する条件を満たしていない」と考えられます。
経営者保証を解除するための一番の近道は、業績を向上させることです。
業績を向上させれば経営者保証は解除されますし、もっと良い条件で融資を受けられるようになります。
お気軽にご相談ください
慣れていない方からするとどの銀行も同じように見えるかも知れませんが、銀行によって、もっと言えば支店や担当者、タイミングなどによって判断が大きく変わることもあります。
日頃からしっかりと銀行対応をしておけば、どうしたら経営者保証を解除できるか、どのくらい融資を受けられる余力があるか、銀行はどの部分を懸念しているか、などといったこともちゃんと教えてくれます。
初回相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。
ご相談のお申込みは以下のお問い合わせフォームやSNSのDMにてお願いします(※氏名、企業名、業種、メールアドレスなどの連絡先、希望の連絡方法、ご相談内容などを添えていただけると助かります)。
また、士業、不動産業、保険業、高額な商品やサービスを販売している企業など、取引先の資金調達が必要になる事業者の方からのご相談もいただいております(※基本的に弊社のクライアントを紹介することはありませんのでご注意ください)。