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2024年6月6日公開
2024年9月6日更新


はじめに

研究プロジェクト「人間のためのプレイス・メイキング」では、孤立・孤独を減らし、人々が健康で、それぞれが自分らしく、生きがいをもっていきることができる社会を目指しています。

では、その問題の出発点である「孤立」「孤独」とはどのようなものでしょうか。この定義から見ていきましょう。

孤立とは

まず、「孤立」とは、個人を中心に置いたときに、その個人がもっている社会ネットワークが狭く、他者とのつながりが乏しい状態のことを指します。簡単にいえば、家族、友人、知人の数が少ないこと、また、それぞれとの関わりが少ないことです。人間関係において、多くの人と濃密な関係を築くことができればそれはそれでよいことでしょう。しかし、数はすくないが、深い付き合いをしている人もいるし、深い付き合いはしていないが、非常に交友関係が広い人もいるでしょう。「孤立」とは、数も少ないし、関わりも少ないことになります。

「孤立」は集団のレベルでもとらえることができます。集団の構成員どうしで知り合いではなく、その関わり合いも少ない状態を指します。一人暮らし用のマンションでは、同じ建物の中に住んでいながら、互いに名前も顔もしらない、交流もないということがあります。逆に、昔ながらの共同体では、家族の境界をこえて交流があり、互いにどのような性格か、普段どのような行動をしているか、どのような仕事をしているかを知っています。濃密すぎる人間関係は息苦しく感じるときもありますが、逆に、互いに孤立している集団は健全とは言えません。できるだけ孤立の少ないコミュニティをつくっていきたいところです。

孤独とは

対して、「孤独」とは、精神的なよりどころがなく、負の感情を抱いている状態と、本プロジェクトでは定義しています。孤立は他者とのかかわりに関する客観的な状態の概念であるのに対して、「孤独」は当人の精神的(主観的)な状態のことを表しています。人間は社会的動物であり、他者との関わりに中にいることで安心感を得ます。家族や学校のクラス、職場の集団、地域のコミュニティ、趣味の仲間など、自分が居心地のよいと感じる集団の中にいることで落ち着きます。

しかし、家族や友人と毎日顔をあわせていても、自分は疎外されているのではないか、一人ぼっちかもしれない、と感じることがあります。このような孤独感に苛まれる要因については、様々な説がありますが、いずれにせよ、「孤独」と「孤立」は別次元の現象といえます。

孤立と孤独

孤立と孤独がそれぞれ別の現象であるとすれば、その両者の関係は2×2のマトリクスで表し、4つの類型を抽出することができます。

Type1:孤立しており、かつ孤独を感じている
Type2:孤立していないが、孤独を感じている
Type3:孤立しているが、孤独とは感じていない
Type4:孤立していないし、孤独も感じていない

このように考えると、支援方法を考えるときも、孤立や孤独の少ない社会を目指す上でも、対象とする人々がいずれの状態にあるかを把握する必要があるといえます。私たちの研究ではこの四つを区別し、それぞれがどのような性格をもっているかを調査しています。


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