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ありがたし (30)

資料になるような古書、古本、絶版本というものは、古書街を巡るか、定期的にネットで検索して買う。のどちらかではあるのだが、ネット価格が本当にバラバラである。

先日、見つけた欲しい古書。
ネットで探すと数点出品されていたのだが、1番の高値が3万円。そして2万4000円、数万円代の出品が殆どをしめている。

ちなみにその本は昭和後期の本で定価は1000円である。
それが数万円代に値が跳ね上がっているのだから希少価値が高いのであろう。

これは流石に今すぐは手が出ないな。と7点ほど出品されている値段を見比べていると一つだけ

「800円」良品。

と。叩き売りのような出品が一点。

もちろん怪しむどころか即購入したのであるが、数日後古書店から1通のメールが届く。

正直、あっ。ヤバい店だったかな。騙されたかな。と一瞬頭によぎったのであるが届いたメールには以下のように記されていた
↓↓↓

検品作業において状態不備が判明いたしました。

上記商品につきましては、お読みいただくには支障はございませんが
お客様からお代金を頂くお品物ではないと判断し、
誠に勝手ながら、商品代金・配送料ともに無料でお送りいたします。
わずかでもお役に立てれば幸いでございます。

本件につきましてご不明な点がございましたら、ご連絡ください。

このたびはご注文いただいた商品に不備がありましたこと、
深くお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした。

と、非常に心がこもったメールと、返金に加え無料で読みたい古書が頂けたわけである。

もちろん、物が到着、返金されるまでドキドキであったが、新手の詐欺かと疑い続けた自分が少し恥ずかしくなってしまった。

「わずかでもお役に立てれば幸いでございます。」

やはり優しさや誠意に勝るものはないのである。

何の変哲もない私の文章で感謝を伝える事しかできないが、春と夏の間のやさしい季節にまた一つ優しさに触れる事ができ感謝である。

店主の顔も名も分からないけれども、サービスとして送ってくれたその店主の顔や人柄を想像しながら届いた本を有難く読もう。

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±3落語会事務局
この連載は±3落語会事務局のウェブサイトにて掲載されているものです。 https://pm3rakugo.jimdofree.com