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【前編】オーダーメイドのセパレートダイニングテーブルができるまでの2年がかりの物語

PLYLISTという屋号で家具や革小物、金継ぎなどのものづくりしています。
小尾口達貴(@plylist.koguchi)といいます。

この記事は、私が注文をお受けしてから2年かかって完成させた
セパレートダイニングテーブルができるまでのお話しです。

2年前、テーブル作ったことないのに注文を受けました。


私は会社を辞めてしばらくして、木工職人になることを志しました。
そこで、曽祖父の代から大変お世話になっているご夫婦(以下、Nご夫婦)にその報告をしに行きました。

「職業訓練校で家具製作の勉強をしてきます」

とNご夫婦に言いました。
すると、

「それはいい!ちょうど家の食卓を新しくしようと思っていたから、卒業したら作ってほしい」

と、かなり軽い感じで頼まれたのがきっかけでした。
当時はまだテーブルなんてとてもじゃないけど作れるような技術はありませんでした。
それに、1年後、職業訓練校で学んだからといって、
僕がテーブルを作れるような技術が身についているかも定かではありません。
しかし、応援していただいているし、期待に応えたいという気持ちから、

「いつになるかわかりませんが、卒業したらテーブル作ります」

と言いました。
正直、かなり不安でしたけどね。


訓練校を卒業するも、制作環境を整えるのに苦戦


テーブルを頼まれてから1年後。
訓練校で卒業前の作品展示販売会がありました。
Nご夫婦はわざわざこの日のために1年前からスケジュールをあけて、
東京からお越しいただきました。
そして、大変ありがたいことに、
抽選制にも関わらず、私の作品を見事に当選して購入していただきました。

その後、私は無事に職業訓練校を卒業して、技術的な問題はクリアし、テーブルを作れるようになりました。

しかし、いろいろとやることがあって、依頼されていたテーブル制作の準備にはなかなか取り掛かれませんでした。
訓練校を卒業して引越しをしなければなりませんでしたが、
新しい住まいの片付けが本当に大変で、それがなかなか終わらず
(今現在も終わっていません)
とりあえず、衣食住のスペースが確保できるようになった段階で
引越しをしました。

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片付けの様子。とりあえず捨てるものが多すぎて死ぬ。


その合間に知り合いの職人さんが工房をお引越ししたので、
新しい工房予定場所の解体工事やら引越しやらのお手伝いをしたり、
家具屋さんの仕事のお手伝いをしたり、
気づくとそちらばかりに時間が取られるようになっていました。
なので、少しお手伝いの頻度を落として、
自宅の断熱工事をしたり、作業スペースの片付けをしたり、
それでもやることはまだまだ山積みで。
いつ終わるのか見当もつかないので、
とりあえず、ダイニングセットの材料を置くスペースができた段階で
Nご夫婦と一緒に材木屋さんに行きました。
テーブルと椅子の材料となる木を探すためです。

材木屋さんで木を選ぶ


実はお客様と一緒に材木屋さんまで木を見に行くのは
僕の独立後のささやかな夢だったんですよね。
お客さんと一緒につくあげたかったんです。
いろんな木を見ながら、どれがいいかなーなんて話しながら
お客さんとお気に入りの木を見つけるところから一緒に始めるんです。

しかし、こんな風に僕が想像した素敵な材木屋さん見学ですが、
実際に行ってみると、そんなふうにはなりませんでした。

まず、一般の人には材木屋さんにある木の板を見て
どんな木か判断するのはほぼ不可能だったんです。
どの板もみんなただの「野ざらしにされた黒っぽい板」
にしか見えないんですよ。

僕はわかるんで、楽しいんですよ。
「このメープルはすごい杢が出てそうだ!」
とか
「このブビンガ玉杢やば!!」
とか、
「このウォールナット木目まっすぐだし分厚くていいなー」
とか。
でも、Nご夫婦からしたら、どれもみんな同じ汚い板にしか見えない
多分、一枚板のテーブル屋さんに行けば、さすがに分かるんですよ。
でも、あんな風にきれいに削って塗装までされた状態のものは
材木屋さんにはないんです。
土埃まみれのただの汚い板しかないんです。
「自分の家の中にこの板で作ったテーブルがある姿が全然想像できない」
と言われてしまいました。

私も困ってしまい、
お客さんの要望を聞いて、
結局、僕がほとんど決めてしまいました。
なんだかちょっと苦い思い出になってしまいましたが、
それでも、お客さんと一緒に材木屋さんに行くという夢は達成したので、
その点はよかったです。
でも、Nご夫婦からしたら、
なんだかよくわからない埃っぽくて薄暗い倉庫に行っただけなので
申し訳なかったです。

そして我が家に材木屋さんで購入した杉が届きました。
5mもある杉の板は、めちゃくちゃ場所をとります。
決してこんなふうに家の中に入れてはいけません。
一度入れたら、出せなくなります。

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ダイニングテーブルに求める条件

Nご夫婦からの要望はこんな感じでした。

①軽いこと(2人で運べる重さがMAXであること)
②普段2人で使うときは120cmくらいの長さで、親戚などが来たときに180cmくらいになるテーブルが理想
③テーブルの高さはベランダにあるテーブルと同じ(68cm)
④色は暗め

お話を聞くと、「軽さ」を一番重要視されている様子でした。
ということで、前述の通り、材木屋さんで「杉」を選びました。
杉だったら、かなり軽いから問題ないかなと。
ただ、杉は柔らかいためにすぐに傷がついてしまいがちですが、
透明なビニールのマットを敷いて使うとのことだったので、
杉でも問題ないと判断しました。
写真の通り、めちゃくちゃきれいで立派な杉なんです。
節がなくて、まっすぐで、年輪もわりと細かい。
幅は太いところが80cm。細いところで60cmくらい。
長さは5m。
正直「長すぎ」かなとも思いましたが、
これを選んで正解でした。(ほとんど無駄なく使いました。)
ということで、この段階で軽さの問題はクリアできそうと判断しました。

次の問題は②です。これが一番難しいオーダーでした。

②普段2人で使うときは120cmくらいの長さで、親戚などが来たときに180cmくらいになるテーブルが理想

天板が伸び縮みできるタイプのエクステンションテーブルかー。
と、その時は思いました。
普通のテーブルに比べると作る難易度が高くなります。
そして、問題は「杉」で作るということ。
杉って、めちゃくちゃ軟らかいんですよ。
強度的な不安がめちゃくちゃありました。
それでも、いろんなデザインをスケッチしてみて、
あーでもないこーでもないと、設計図をこねくり回しまくって、
気づいたら3ヶ月経ってました。
(もちろんこの仕事だけやっていたわけではないですが)
ようやく、「これならいけそうか。。。!?」
みたいな設計ができたので、
1/10モックアップを作って見ていただきました。


後編に続きます。
【後編】オーダーメイドのセパレートダイニングテーブルができるまでの2年がかりの物語


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PLYLIST 小尾口達貴
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