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The Main Ingredient & Everything Is Everything
こんばんは!
今回は1994年11月8日に発売30周年を迎えたPete Rock & C.L. Smoothの歴史的名盤であるセカンドアルバム、The Main Ingredient関連のレコードを紹介します!(余計な話多めで)
加えて発売日が1週間違いとなる1994年11月1日にElektra Recordsから発売されたBrand Nubianの内容充実サードアルバム、Everything Is Everythingも紹介します!
まずはThe Main Ingredientから!
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Pete Rock & C.L. Smoothの二人でHip Hopの一つの完成形を作り上げた不朽の名作。珠玉のサンプリングソースに彩られた耳触りの良いリッチでハリのあるプロダクションと、抜群の相性を聴かせるC.L. Smoothのフロウ、ライミングが完璧に融合した類稀なるアルバム。
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今ではアルバム収録曲よりも不人気で、あまり取り上げられることのないTake You Thereですが、当時の僕はどハマりしていて死ぬほど聴いた思い出の一曲。キック(バスドラム)とハイハットの融合がビートに普遍性を与えるPete Rockの手法が堪能出来ます。
裏面のGet On the Mic (Remix)はスネアードラムの鳴りが良すぎる名リミックス!
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いつ聴いても心踊る幸せな名曲、I Got a Loveは曲も良ければジャケットのアートワークも素晴らしい!
The Main Ingredientの裏ジャケット、I Got a Loveの表、裏ジャケット、アーティスト写真を合わせて撮りました!
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USオリジナルプレッシングはプロモーション盤のみとなるSearching。極上のシルクタッチで耳を心地良くなでる、しなやかで優しい音像はいつ聴いても至福の時に包まれる名曲中の名曲ですね!
元々はレアプロモ盤として入手困難なレコードでしたが、後に日本プレッシングで収録曲を増やして再発されました。
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オマケですが、The Main Ingredientと同じく1994年にリリースされたPriest / Endless Searchも、Roy Ayers / Searchingをサンプリング。インディーラップシングルであまり知られていませんが、Searchingを使用しているとなると聴き逃せませんよね!
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Johnny Pate / The Look of Loveをサンプリングした楽曲は何曲かありますが、どれもプロモーション盤止まりで、正規盤として発売された楽曲はありません。これはサンプリングクリアランスが下りなかったためで、販売目的ではないプロモーション盤でフィジカル化するしか方法が無かったということですね。
Pete Rock & C.L. Smooth / Searching (Remix)もまた同様にこの元ネタのサンプリングクリアランスが取れず、リミックスを収録したシングルは幻となりました。1995年にプレスされたブートコンピレーションにこのリミックスが収録されるまでは、Pete RockとMarley Marlのラジオショウ Future Flavaで聴けるのみでした。
が、日本のシスコが1996年にEastwest Japanを通し、リミックスを収録したSearchingを初の正規シングル盤として発売。裏面には未発表曲であるWe Specializeも収録された贅沢な内容に。
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Searching (Remix)と同じくJohnny Pate / The Look of Loveをサンプリングし、お蔵入りとなったShow & A.G. / U Know Now (Buckwild Remix)を棚卸ししていきます。
U Know Now (Buckwild Remix)は2種類の正規プロモーション盤が存在し、①U Know Now表記でこの曲が4ヴァージョン収録された盤、②You Know Now表記でGot the Flavaの裏面に収録された盤があります。
加えてBig LのMVPのプロモーション盤のB面、MVP (Instrumental)表記となっているトラックが実はU Know Now (Buckwild Remix)のインストゥルメンタルが収録されています。これは元々U Know NowのリミックストラックはBig LのMVPのリミックス用に作られたもので、そちらがお蔵入りとなったことにより、Show & A.G.の方で使うことになったということです。
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Heltah Skeltah / Let the Brainz Bloは何種類かシングルがありますが、オリジナルプレッシングとしては写真左上の1995年のDuck Down盤。これが実は滅多に見ないレコードで、見つけたら即買いの逸品です。
右下はUKのCavemanのMC、MCMのPowermoves。The Look of Loveをサンプリングした楽曲は全て正規発売出来ずとは書きましたがそれはアメリカ国内の話で、このドイツ盤はJohnny Pate側にバレずに発売されました。
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こちらはThe Main Ingredientから4曲を選抜されてレコード化されたプロモーションEP。
All the Place、I Get Physical、It's on Youといったアルバム内でも人気の高い3曲を収録した内容の良さもありカルト的な人気を誇るレコードですが、この盤は世界中で全く見ません!Pete Rockのレコードを集めている人でも、この盤を持っている人は極々わずか。マニアの方はぜひ探してみてください!
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普通にレコードを買っていてもまず出会うことは無いレコードがこのThe Main Ingredient Instrumental 2LP。何枚か粗悪なブートレグ盤でThe Main Ingredientインストゥルメンタルアルバムが出ていますが、正規Elektra Recordsのコースターも眩(まぶ)しいオリジナルプレッシングはやはり別格。プロモーションプレッシングのみとなるためプレス数が極端に少なく、マニア垂涎のレコードとして有名です。本当に価値のあるレコードなので、持っている方は一生大切に、持っていない方は一生かけて手に入れてみてください!
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K-DefもMain Ingredientは相当好きだそうで、アルバム収録曲でどの曲が一番好きか聞いてみたんですよ。その答えがEscape!
Pete Rockのみがラップしている楽曲なんですが、キックとハイハットの親和性が限界点を超える高さで、その上モコモコのフィルターをかけて薫(かお)り高く仕上げてある恐ろしくカッコ良い曲なんですよ!実は僕もアルバムの中で一番好きな楽曲で、セカンドヴァースのネタの抜き差しで毎度死亡してます。
そのEscapeをK-Defが2012年発売の自身のアルバムでカヴァーしているんです。曲中でPete RockはEscapismと連呼していたので、それに倣(なら)ってこの曲はEscapizmとタイトルが変わり、しかもInIのRob-Oをヴォーカルに迎えてPete Rockすぎる布陣でカヴァー!素晴らしすぎますよ!
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The Main Ingredient、アルバムの一曲目を飾る人気曲In the House。ボコボコなキックの鳴りにブッ飛ばされる、Q-Tipの声ネタもバッチリハマった名曲ですね!
そのIn the Houseですが、写真のコンピレーションにも収録されており、断然The Main Ingredientで聴くよりもこちらの方が音圧は高いです。そのこともあって、DJはIn the Houseをかける時にはこのEddie F.のコンピレーションを使っていましたね。
ちなみにこのコンピレーションというのは、Pete Rockも在籍したプロデューサーチーム "The Untouchables" の親分、Eddie F.監修の元で各プロデューサーの音源を集めて作られたThe Untouchablesのアルバムで、一員であるPete Rockも自身のセカンドアルバムの宣伝にと楽曲提供をしているという訳です。
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こちらはPete Rock & C.L. Smoothのセカンドアルバムがリリースされた翌年の1995年に、レア音源を寄せ集めて作られたブートレグ盤。このNever Comming Out EPにもIn the Houseは収録されており、オリジナルアルバムよりも音圧が高いことから、こちらの盤でIn the Houseを使うDJもいました。
そしてこのEPに収録されているのがTake You There (Foundation Mix)。これはJeru the Damaja / You Can't Stop the Prophets (Pete Rock Remix)と全く同じトラックのリミックス作。本来はTake You Thereのリミックス用に作られたトラックがボツとなったことより、Jeruに流用されたのではと言われています。
ちなみにこのブートレグ盤のさらにブートレグ盤が存在し、盤面の印刷が荒いものや、コースター上部のElektraのロゴが無い粗悪なレコードも存在します。
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ファーストアルバム、セカンドアルバム収録曲のリミックスなどを集めて作られたブートレグ盤であるRare Tracks。内容は全く同じですが、ステッカーのジャケットの方が1LPで、写真のジャケットの方が2LP仕様。シングル持ってればいらないレコードですが、クソブートレグでもジャケットがカッコ良いと買ってしまいますよね!
話は変わって、Pete Rock制作曲と使用するサンプリングソースが同時期に被(かぶ)ってしまった楽曲について少し触れておきます。
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同じRising to the Top使いでサンプリングソースがバッティングしてしまったPete Rock & C.L. Smooth / Take You There、Buckwild制作のO.C. / Born 2 Liveは両曲共1994年の作品。
同時期に同じサンプリングソース使いで被ってしまうことはよくあることですが、鳴りの良いビートを根幹に丁寧でしなやかなプロダクションを制作する両者は、共通項が沢山あるように感じることからよく比較もされました。
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さらに同じくPete RockとBuckwildが使用したサンプリングソースがバッティングした1995年の作品がこちら。
Pete Rock制作のAz / Gimme Yoursのアルバムヴァージョンと、Buckwild制作のLord Finesse / Hip 2 da Game (Remix)は同じような時期にリリースされ、両曲共にMinnie Riperton / Here We Goをサンプリングしています。
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今度はPete Rockが同じレーベルメイトとサンプリングソースがバッティングしたこちら。
George Benson / Face It Boy, It's OverをThe Main Ingredient収録曲のIn the FleshとI Get Physicalでサンプリング。同じサンプリングソースを使用した楽曲を2曲も同じアルバムに入れてしまうPete Rockのチンピラ気質は素晴らしい限りです。2曲分のサンプリングクリアランス費用を1曲で済ませたと考えれば、ビジネスマンとして最高の発想ですね。
ほぼ同時期に発売されたBrand Nubianのサードアルバム収録曲、Step Into da Cipherでも同じくFace It Boy, It's Overをサンプリングソースとして使用しており、Pete Rockのネタ被り事件はここでも起きていますね。こちらの制作者はLord Jamarです。
さらに同じく1994年にFace It Boy, It's OverをサンプリングしているのがEdo. G / Love Comes and Goes。
Edo. G / Be a Father to Your ChildとThe Main Ingredient収録のSerchingは同じサンプリングソース使用ということもあり、さらにPete RockとEdo. Gは後にタッグ作をリリースするなど、何かと連想してしまいますね。
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加えてPete Rockが重罪なのは、実はThe Main Ingredientと同じく1994年にリリースされたChamp MC / Keep It on the Real (Pete Rock Remix)にて、やはりGeorge Benson / Face It Boy, It's Overをサンプリングしているんです!
終わってますよね?自身の楽曲で3回使い回すって、3曲とも同じ1994年発売ってイカれすぎてるでしょう!こんなPete Rockが一生好きです。
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さらにGeorge Benson / Face It Boy, It's Overをサンプリングした楽曲といえば、1997年にArtifactsのセカンドアルバムからのサードシングルとして準備されていたIt's Gettin' Hot (K-Def Remix)も有名ですね。
K-Defに直接聞いたのですが、この素晴らしいリミックスがお蔵入りとなったのはレーベル(Big Beat)の意向で、Pete Rockが使用したサンプリングソースだっただけに新鮮味に欠けると発売が見送られたとのことでした。
お蔵入り決定後に、K-Def本人が自主でプレスしたのが写真の12インチシングルです。似たようなクソブートレグもあり注意が必要ですが、オリジナルプレッシングとしてはこのレコードになります。
白プレーンジャケットに、"Pete Rockと同じGeorge Benson使いのRemix"とK-Def本人に書いてもらいました。笑
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The Main Ingredient収録曲でGeorge Benson / Face It Boy, It's Over使いの2曲をカップリングしたブートレグ盤もありますね。正規を装ったサギコースターが悪どいです。で、なぜかドイツ盤のコースターデザインを踏襲しているという謎っぷり。
ここからはThe Main Ingredientと同じく1994年に発売されたBrand Nubian / Everything Is Everythingに話は移ります。
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Brand Nubianのサードアルバム Everything Is Everythingは、Lord Jamarがほとんどの楽曲をプロデュースし、ジャケットのアートワーク同様にモノクロ感も醸(かも)し出す渋さと当時の現行感を両立させた完成度の高いアルバム。
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当時はプロモーションビデオも頻繁に流れていたので、ストリートヒットした記憶があります。裏面には前出のStep Into da Cipherを収録。
プロモーション盤のみにBuckwild制作の分厚すぎる強力な一曲、Alldatが入っています!
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Lord Jamarプロデュースのヒットシングル Word Is Bondは、大人のJazzを意識したような洒落たつくりの名作。この曲のSadat Xの一節がTen Thieves / It
Don't Matterの声ネタになっていることも知られていますね!
スネアー連打が気持ち良すぎるBuckwild Remixには、当時Elektra Recordsが売り出そうとしていた3人組Dredknotzをフィーチャリング。
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全編Radio Versionとなるプロモーション盤とUS正規盤では、ジャケットが全く同じものでも、ハイプステッカーが違います!気の狂ったマニアの方は両方揃えておくと精神が安定します。
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Everything is Everything発売当時の販促品、ハンドタオルです!ジャケットと同じの12インチサイズ。もはやこれ以外現存していないのではと思われる国宝級の逸品。知らない人から見ればタダのゴミ。
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Brand Nubianと同じくElektraから1994年にデビューするも、シングル1枚で消えてしまったDredknotz。先ほどのWord Is Bond (Buckwild Remix)にフィーチャリングしていたのはコイツらです。
プロモーションシングルのみにRespectという楽曲を収録しており、これがまた荒々しくてカッコ良いんですよ!大好き!
両作共にGet Hype!に掲載!
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Pete Rock仕事のおまけです。
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1994年発売のHeavy D & the Boys / Nuttin But LoveにはPete Rockは2曲をプロデュース。これがThe Main Ingredientと同じ年に作られたものかと耳を疑う適当仕事。絶対に手を抜いてますね。
もちろん両曲とも悪いわけではないんですけどね!
本投稿の途中でEddie F.の名前も出て来たことですし、The UntouchablesのPete RockやSpunk Biggaが関わったヤサグレ2人組のEPをオマケで紹介します。
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Pete Rockがファーストアルバムとセカンドアルバムの中間点となる1993年にリリースされたYG'zのEPでは計4曲をPete Rockが制作しています。ちょうどPete Rockの音像もファーストアルバムとセカンドアルバムの中間といった感じで興味深いです。
シングル曲Street Ni××a (Do or Die)が有名ですが、わずかな隠し味を加えてより重厚で派手に仕上げたStreet Ni××a (Pete Rock Remix)がとにかく好きで好きで。ど頭のスネアー連打で気分は高揚しまくりですよ!
もう一枚のシングルカット曲、Ghetto CelebもPete Rockが手がけた良作!噛めば噛むほど味の出るスルメ感がたまりません!隙(すき)の無いプロダクション。
C.L. Smoothの声ネタを使用した爆烈チューンSumthin' 4 da Headもバッチリすぎます!
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YG'zのこちらのシングルでもPete Rockはリミックスワークで参加。お約束となるフック(サビ)でのPete Rock本人の合いの手も入っていますね!