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アマゾンプライムお薦めビデオ② 92 すべてのクリエーターへの応援にして慰めの映画『ショック・ドゥ・フューチャー』

今回お薦めするアマゾンプライム映画はこちら。80年代初頭のフランスのテクノ・クラブ音楽シーンの芽生えとそこで生き、もがく女性たちを描いた傑作『ショック・ドゥ・フューチャー』です。

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フレンチ・テクノとして真っ先に思い浮かぶのはやはりダフト・パンクでしょうが、調べてみたところダフト・パンクのデビューは1994と思ったより遅いです。この映画は80年代を舞台としているので、フレンチ・テクノ、フレンチ・エレクトロの夜明けの時期がその舞台なのですが、とうぜん80年代には既にクラフト・ワークもYMOも大ヒットしているので、その意味ではフランスは遅れていたと言えるでしょう。しかし、遅れていたからこそ出せる新しさがあリます。そう、それがフレンチ・テクノ、フレンチ・エレクトロのなんとも言えないアンニュイなおしゃれ感です。日本で言えば渋谷系といったところでしょうか。

そしてそのおしゃれさは、おしゃれな人が集まるクラブ文化と結びついていきました。つまりは生演奏として演奏するのではなく、DJがかける音楽としてヒットしていったのです。この映画でもクラブではないが自宅でのパーティーシーンがあるのですが、(この自宅が凄い!旅に出ている友人の留守中に借りているという設定なのですが、当時であれば、総額でいくらになるのかも想像もつかないような機材がぎっしりとそろっています)そこでは、目利きのレコードコレクターがおすすめの音楽をかけており、いわゆる業界人も来ています。そんな中で、主人公は意気投合したボーカル(二人とも女性)と作った手応えのある自作曲を変えるのだが、、、というのが基本的な話の流れです。

この二人は、言わば「時代に早すぎた人」でしょう。「時代遅れの人」同様、「時代に早すぎた人」にもある種の切なさがあります。一言で言うと孤独であり孤立であるという意味での切なさです。もちろん、この映画に限らず、今までのそのような「時代に早過ぎた人」は無数にいたことでしょう。そしてその多くが、歴史に名前を残す事もなく消えていきました。この主人公もその一人です(調べられませんでしが、もしかしたら後に成功する実在の人物をモデルにしているのかもしれません)。しかしだからと言ってその人達の人生がきらめいていなかったわけでは決してありません。その人達の人生は確実にきらめいていたし、そのきらめきが世に出る瞬間もあったでしょう。この映画はまさにその瞬間と、その切なさを見事に描いている映画です。映画自体は、ほぼ丸1日か2日程度の話です。クライアントから受けたCMソングの仕事に納得できず、それを蹴り、そんな渦中でローランドの最新のドラムマシーンを手に入れ(というか頼み込んで貸してもらい)、それを使ってデモソングを作ってみたところ、本来はCMソングの収録として来たボーカリストに出会って、一緒に曲を作って、夜のパーティーでその曲をかける。この濃い1日には全てが凝縮されているといっても過言ではないでしょう。そしてこのような1日は、実際には何度もこの主人公や世に出ることなく消えていった早すぎた人達には何度も訪れていたはずです。そう、その意味でも、間違いなくこの主人公が代表するような時代に早すぎた人達の人生は輝いていたのです。

と、この映画、音楽好き、テクノ付きの方に限らず、超おすすめです!しかも主人公を演じているのがあの鬼才、ホドロフスキーの孫娘というからさらにお薦めです。

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