アマゾンプライムお薦めビデオ② 93 アマプラだからこそ出会える傑作『大阪少女』
今回お薦めする映画はこちら、『大阪少女』です。
まあ、この映画、何らかの偶然がなければ、おそらく多くの人は出会うことはないでしょう。と、そういう意味でまさに「見っけもの」の傑作です。
監督の石原貴洋氏のプロフィールを調べてみたところ、「大阪外道 OSAKA VIOLENCE」(2012年)「大阪蛇道 Snake of Violence」(2013年)「大阪少女」(2020年)「大阪闇金」(2021年)と、大阪にこだわっていることが分かります。最近は映画監督というよりも映画制作を指導する側に回った、あの、林海象氏とはなんらかの師弟関係にあるようですが、とにかくこの『大阪少女』は令和版の『じゃりん子チエ』ともいうべき傑作です。というか大阪は昭和も令和も変わっていない、大阪には大阪のストリートカルチャー、ストリートライフがあるんだ、ということをしっかりと見せつけてくれる作品です。
まあ、とにかくこの映画について言えば、主演のまさに「大阪少女」である坪内花菜(ちほ)が凄い!20歳になった今も女優業は続けられているようですが、もっともっと世に出ていい!、というかこの人材を使いこなせていない映画、映像、舞台業界はどうかと思うくらいです。この映画の時はまだ「子役」ですが、「子役」の概念を見事にぶち破ってくれます。子供の持つ弱さではなく、子供だからこそ持ち得る強さを坪内花菜は表現しています。
確かにある意味ではその強さは単に世間を知らないことから来るのもしれません。しかし、映画上ではそこに二重の仕掛けが施されています。女優としての坪内花菜は確かにまだ世間知らずでしょう、しかし、その役の上においては、坪内花菜は実はすべてを知っているのです。そしてその上で、家賃の取り立て、という少女にとっては過酷な仕事にあたっているのです。
そしてそこで大切な立ち位置になるのが主人公の祖母、即ちおばあちゃんです。まあ、この人、一筋縄ではいかない人ですが、表面的にはあくまで普通のおばあちゃんです。暴力はいけない、悪いことは悪い、おばあちゃんは主人公に何度もそう諭します。そして主人公もそれを受け入れます。この手の映画であれば、主人公の「大阪少女」をある意味すれた少女として描くのが定石でしょう。しかし、この映画において主人公の「大阪少女」は口は悪いが基本的に純粋な、というかしっかりした少女です。そしてそのギャップに、見るものはやられてしまいます。しかし、実はそれこそが「大阪」の本質なのです。一見口は悪いが、こころは純粋、それこそが大阪人の気質であり、大阪人が大阪人であるが故の魅力なのです。
と、そんなことを考えさせてくれる映画ですが、同時に何も考えないで見ることもできるエンターテイメントとしても傑作に仕上がっています。最後のセリフで「まあね、なるほどね」となることは請け合いです。是非、ご覧ください。