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アマゾンプライムお薦めビデオ② 96:キング版とキューブリック版の『シャイニング』の和解?:映画『ドクター・スリープ』

先日、Dommuneで町山智浩さんと平山夢明さんの解説付きでAmazonウォッチパーティーをやっており、最高だったので、その流れで、続編である『ドクター・スリープ』を見てみました。

キューブリックによる映画版の『シャイニング』を原作者のスティーブン・キングは評価していなかったのは有名な話ですが、確かにあの映画ではタイトルにもなっている超能力としての『シャイニング』はそれほど描かれません。しかしだからこその狂気映画(恐怖映画=ホラー映画ではなく狂気映画)としてジャックニコルソンの怪演と妻役のシェリー・デュヴァルの名演(演技というよりも、本当に精神的に追い込まれていたらしい)を伴う名作なのですが、しかし、そっちじゃなくて肝は「シャイニング」という能力の方なんだけど、、、(しかもジャックもそんなに悪い奴ではなく利用されてただけなんだけど、、、)というキング側の意見も分かる。実際キングはその後、自分で製作総指揮でテレビドラマ版を作成したり、また40年後の話としてこの『ドクタースリープ』を書いていたりもしています(でも、改めてそのドラマ版を見てみると、映画版もある意味原作に忠実であったことが確認できますが)。そしてそれを映画化したのがこの作品です。

今回はそのあたりに気を使ったのか原作に忠実で、『シャイニング』という超能力の方を前面に取り上げています。そのためか、いささか現実離れした超能力大会、超能力戦争的な感もなくはないのですが(また、主役のダニー(前作でのジャックの息子)が能力への恐怖からアル中になっているという設定なのですが、主役のユアン・マクレガーがどうしても二枚目なのであまり悲愴感がなかったりはしますが)、しかし、一応キングの要望にはしっかりと答えておいた後で、監督含むこの映画の制作陣がやりたかったのは、やはり後半の映画版の再現、オーバールックホテルでの映画版『シャイニング』とのオーバールック(重ね合わせてみること)のほうなのでしょう。

実は映画版『シャイニング』の世界の再現は、スピルバーグによる『レディ・プレイヤー1』のほうが先で、そちらのほうがある意味出来もいいのですが、しかし、そちらはあくまでゲーム内世界という設定であり、こちらは本当の40年後という設定です。まあ、ここでも超能力合戦が繰り広げられるのですが、そうなると結局超能力というのはいわゆる霊力なのではないか、という疑問がここで新たに浮かんできます。超能力も霊力に含まれるのであれば、つまりはやはりは霊的なものがこの世にはあり、それに敏感なものが超能力者となる、と考えると、キューブリック版との辻褄もあってきますし、ドラマ版との整合性もついてきます。そしてさらに言えば、今度はいわゆる霊力というのは実は幽霊などの力ではなく、もともと人間にはある能力であり、幽霊というものはその能力が視覚化、概念化されるとそうなってしまうのだ、という解釈もできるでしょう。つまり今度は霊力のほうが人間側の力である超能力に含まれる、という解釈です。

となると、結局はキューブリックもキングも同じテーマを描いていたということにはならないでしょうか。そう、そのテーマは結局は超能力でも幽霊(霊力)でもなく、人間なのです。だからこそ映画であれ小説であれキューブリックやキングの作品は名作ぞろいなのです。そこに描かれているのはあくまで人間なのですから。

ということでこの映画、映画版のシャイニングとドラマ版のシャイニングとも併せてみることを是非お勧めします。


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