アマゾンプライムお薦めビデオ④ 168:ベタでネタでメタで何が悪い(というか悪いわけがない)!歴史に残る傑作コメディ(というかパロディ)『スペースボール』
あなたがもし、今、疲れているなら、今、困っているなら、今、悩んでいるなら、迷わずまずはこの映画を見ることをお勧めする。そう、パロディとしても傑作であり、一つの映画作品としても傑作である、1987年の作品、映画『スペースボール』である。
この映画、お察しの通り、「スターウォーズ」のパロディである。しかし、パロディーの枠を超えていると言ってもいいだろう。確かにこの映画は本家である「スターウォーズ」がらみのネタはある。しかし、「スターウォーズ」を知らなくても、あるいは何となくしか知らなくても、十分に楽しめる作品となっている。そう、「スターウォーズ」は名作であるが故に同時にある意味「ネタ」であり「ベタ」の宝庫でもある。そしてこの映画、なるほどそう来たか、と思わせてくれるところももちろんあるが、基本的には、こちらが映画として見せて欲しい、映画としてカタルシスを上げて欲しい、というところを見事に見せてくれている。つまり、この映画「スターウォーズ」という歴史的傑作を「パロディー」として再解釈することによって、あるいは言い方を変えれば「メタ作品」として「スターウォーズ」をもその笑いの対象として捉えるという暴挙にも見事に成功している、まさに「これぞコメディ、これぞパロディ」という傑作である。
と、まあ、ここまで書けばこの映画の魅力はある程度は伝わるだろうが、敢えてもっと分かりやすく言えば、この映画、故志村けん氏の「バカ殿様」のような映画である。バカ殿様の魅力は、もちろん志村けん氏の天才的なバカ力(「ばかぢから」ではなく「ばかりょく」)のたまものであるが、それに加え、だれもバカ殿様の白塗りちょんまげの顔には敢えて突っ込まないという暗黙のルールにもある。「バカ」は決して見かけではなく内面なのである。そこで繰り広げられる笑いはバカな人がバカなことをやっていることに対する笑いであると同時に、しかし、やっている本人は決してバカではないし、バカにしてはいけないという理解、つまりはメタ的な理解に基づいている。バカはバカであるが故にバカにはできない。志村けんという人物以外に誰がこれを体現し得たであろうか。強いて言えば「Mrビーン」で有名なローワン・アトキンソン氏くらいかもしれない(マンガであれば「天才バカボン」のバカボンのパパがまさにそうでる)。バカであり続けること、そしてバカを敬うこと、それが恐らく志村けん氏が生涯をとおして我々に訴えてきたメッセージであろう。バカ殿様というコメディのなかで様々なパロディも演じてきた志村氏であるが、欲を言えばテレビ番組としてではなく映画としての「作品」も見たかった。「志村けんのバカ殿様」ではなく「バカ殿さまの忠臣蔵」「バカ殿様の用心棒」「バカ殿さまの必殺仕事人」などである。それはもう無理な願いであるが、我々はその想いをほかの映画に託すことができる。「スペースボール」もその作品の一つである。