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アマゾンプライムお薦めビデオ③ 138 :ヤバい!私が『みぽりん』に浮かれている間に松本大樹監督は次のステージに進んでいた。映画『極道系Vチューバー達磨』

「ヤバい」、というかこの作品を観ずしてファンを名乗り、イベントにまで足を運んでいた自分が今となっては恥ずかしい。

かつてこのマガジンで絶賛した『みぽりん』の松本大樹監督のおそらく現時点での最新作が今回紹介する『極道系Vチューバー達磨』である。

まあ、言い訳にはなるが、未見だったと言っても仕方がないであろう。松本監督はいわゆるインディ系の監督で、その作品がいわゆるシネコンでかかるような監督ではないからである。しかし、『みぽりん』もそうだが、それを平気でプライムビデオのラインアップに入れてしまうアマゾンプライムビデオはやはり侮れない。改めてであるが、かつて我々がミニシアターや名画座をあちこち巡っていたことが今やネットでできてしまう時代なのである。

恐らく映画としては、というか、いわゆるカルト系、マニア系の映画としては『みぽりん』の方が評価は高いであろう。なぜなら『みぽりん』はある意味めちゃくちゃでやりたい放題なのだから。それに比べて本作、『極道系Vチューバー達磨』は映画としての完成度は高い。めちゃくちゃさの要素は十分に残しながらも、映画としてきちんと泣けるもの、感動するものに仕上がっている。プロレスファンである私としては、インディーとメジャーという言い方はメジャーが上、インディーが下というニュアンスがあるのでは好きではないが、この作品を持って、松本大樹監督は、インディーからメジャーへの階段を上がったと言えよう。しかしもちろんインディーとしてのスピリット(精神)をしっかりと持ったままである。

そしてそのスピリットは、恐らく彼が敬愛しているであろう、タランティーノ監督のスピリットにも通じるものである。この映画内でもいくつもタランティーノオマージュ、タランティーノレスペクトと言わざるを得ない表現が見られるが、(そしてさらに言えば、映画中に流れる曲というか歌はタランティーノ監督が更にレスペクトする我らがミューズ、梶芽衣子氏オマージュでもある!)それは即ちいわゆるグラインドハウス映画へのレスペクトである。グラインドハウス映画、あるいはエクスプロイテーション映画のスピリットとは、一言で言えば、「敢えての挑発」、「敢えて「じゃないほう」へ行く」、という精神である。それはある意味では単にセンセーショナル性をもって世間を煽(あお)る、ということなのかもしれない。しかし、映画というものは、さらに言えば何らかの作品を世に出すということは「煽ってなんぼ」以外の何物でもない。そうなると問題はその「煽り方」ということになる。インディーとは、まさにインディープロレス団体がそうであるように、デスマッチに代表される過激さで客を煽る(繰り返すが、私は決してそれを否定しない、というかむしろ大好物である)。我々はインディーだということを認めた上で、敢えて過激な方向、メジャーと言われるところがやらない方向に向かうのである。そしえ、一方のメジャーは、これもメジャープロレス団体がそうであるように「俺たちはメジャー」だ、というプライドの下、「正統派」とされる技の応酬、カウント2.9の応酬で観客を煽る。そう、単に、それらはやり方というかスタイルの違いに過ぎないのである。我々映画ファンは、そして我々プロレスファンは、そのどちらにも興奮し、煽られるのである。

さて、話をこの作品に戻せば、この作品を持って、松本大樹監督はインディースピリットを携えて、メジャー団体に乗り込んだ、とも言えよう。となると、気になるのは次の手である。メジャーに上がってしまったことでメジャーに飲み込まれてしまった(もっと言えば潰されてしまった)インディープロレス団体も過去には少なくなかった。しかし、今や、メジャーに飲み込まれることなく、さらに言えば、メジャーの中に新しい流れとしてインディスピリッツを注入している団体もある(例えば大メジャー新日本プロレスジュニアヘビーのエースであるエル・デスペラード選手はインディーファン、デスマッチファンを公言し、実際に自身もデスマッチを行っている!)。そして、我々が松本大樹監督に期待するのもその路線である。インディー出身のレスラーがインディースタイルを貫き通したまま、メジャーのリングで戦い、メジャーのタイトルベルトを撒く、これ以上の挑発にして興奮はあるだろうか。そしてこの映画を見ればわかるように、その日は、もうすぐそこにまで来ているのである。


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