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『振り返れば奴がいる』オープニングでチャゲアスが登場する理由と分析

皆さんは、邦楽ポップスデュオCHAGE and ASKA(以下チャゲアス)のヒット曲で、印象に残っていることはありますか。いろんな思い出、各メディアで流れたこと、チャゲアスファンの話からブリはいろんなことを知りました。
彼らのヒット曲の多くは、ドラマ、映画、CMに使われて、多くの邦楽ファンに知られました。特に1991年から1996年までのチャゲアスブームで、彼らの楽曲を耳にする機会が増えたため、今も邦楽ファンの間で語り草になっています。

ブリが特に印象に残っているのは、ドラマ主題歌のヒット曲ですが、その中でチャゲアス本人が登場するドラマがあると知りました。本人が出るといっても、ドラマ内で俳優とともに出るのではなく、オープニングのみに登場します。
それは、1993年に放送されたテレビドラマ『振り返れば奴がいる』です。このドラマを簡単に説明すると、腹黒い天才医師と、正義感あふれる医師が対立する、医療サスペンスドラマです。著名な脚本家、三谷幸喜(みたにこうき)のデビュー作として知られています。彼はコメディータッチの作風が特徴ですが、このドラマは終始シリアスな内容です。このドラマのヒットから、三谷は後に幅広いテーマのテレビドラマ、映画の脚本を手がけて、多くのヒット作を出しました。

『振り返れば奴がいる』(1993年)
写真左から主演の織田裕二、石黒賢

主題歌はチャゲアスの代表曲『YAH YAH YAH』です。ドラマの挿入歌はカップリング曲『君はなにも知らないまま』が流れます。1993年に発売されたシングル曲で、CDが200万枚も売れた大ヒット曲です。ドラマのオープニング映像では、主な登場人物たちのシーンの後、CHAGEとASKA(以下チャゲちゃん、あすちゃん)がスタジオのような場所で歌うシーンが挿入されます。

ドラマ内の楽曲は、あすちゃんが担当しています。インストグループのS.E.N.S.(センス)、編曲家の澤近泰輔(さわちかたいすけ)、キーボードの矢賀部竜成(やかべたつなり)、彼らはあすちゃんとともに楽曲制作をしました。
ちなみに、S.E.N.S.はチャゲアスと同じ、福岡出身のグループで、多くのドラマ、アニメ内楽曲を作りました。澤近、矢賀部はチャゲアス、あすちゃんの楽曲やライブに関わりました。

『振り返れば奴がいる』
オープニング映像のチャゲアス

通常、主題歌で使われるアーティストは、スタッフクレジットで曲名、アーティスト名、所属レコード会社で出るのみです。このドラマではアーティスト本人がオープニングで登場するという、特別感があります。当時のテレビでは、珍しい演出でした。

『振り返れば奴がいる』
スタッフクレジットでの主題歌表示

でも、なぜこのドラマでチャゲアス本人が登場するのか、気になりました。チャゲアスに関するたくさんの資料を見て、いろんな発見がありました。

現在、このドラマは三谷幸喜の新作映画の公開記念に、2024年9月6日から地上波で再放送されました。当時を見ていた視聴者、チャゲアスファンの間で盛り上がっています。そんななか、どうして『振り返れば奴がいる』のオープニング映像で、チャゲアスが登場するのか、ブリの独自分析で理由を考えました。



♪実はメンバーがドラマ本編に出演予定だった

チャゲアスにまつわる資料から、オープニングでメンバー本人が登場した経緯です。このドラマは1993年以前から制作が練られていました。実は、あすちゃん主演で制作される予定でした。長い期間にわたって、テレビ局の制作スタッフはあすちゃんに出演交渉しましたが、スケジュール調整、ドラマ内の重要性を検討した結果、チャゲアス側は制作スタッフの提案を辞退しました。しかし、テレビ局のドラマのプロデューサーは、どうしてもあすちゃんが出演してほしいと思っていました。その結果、オープニング映像のチャゲアスが出演するシーンができました。
ドラマ本編は、最初に選ばれた脚本家から変わり、三谷幸喜が担当することになりました。主演は俳優の織田裕二(おだゆうじ)、石黒賢(いしぐろけん)が出る内容になりました。2人は当時、ヒットしていた人気俳優でした。

あすちゃんは1984年頃、音楽活動の途中で、俳優活動に挑戦したことがあります。結局、俳優の仕事を兼ねずに、音楽活動に集中することにしました。ブリはチャゲアスファンからの話で、若き彼のドラマを見ていきましたが、容姿が美しい彼でも、やっぱり彼は音楽が向くと思いました。彼がドラマの出演交渉から辞退して、当然だと思いました。

チャゲアスは1993年当時、日本全国、アジアで人気を広めていました。1991年のシングル曲『SAY YES』のヒットから、彼らの注目が高まり、彼らの音楽が多くの人々に知られていきました。彼らのヒットをきっかけで、彼らの楽曲はドラマ、CMに広く使われました。
(チャゲアスブームについて、説明した記事はこちらへ)
チャゲアスは、シングル曲『SAY YES』がテレビドラマ『101回目のプロポーズ』の主題歌になったことで、ドラマとともにシングル曲もヒットしました。そして、テレビドラマ『振り返れば奴がいる』も彼らが主題歌に選ばれました。偶然ヒットしていたシングル曲『YAH YAH YAH』は、ドラマと合いました。
脚本家の三谷は、チャゲアスのシングル曲を聞いて、彼らの良さに気づいたと語りました。

CHAGE and ASKA『YAH YAH YAH』(1993年)


♪所属レコード会社とのつながり

ブリは、彼らのシングル曲がドラマ主題歌に選ばれた理由について、有力説が浮かびました。
彼らのヒット曲、映像資料を振り返ると、彼らの楽曲は、フジテレビ系のドラマによく使われていると気づきました。『101回目のプロポーズ』『振り返れば奴がいる』『妹よ』『天気予報の恋人』、彼らの楽曲が使われたドラマは、フジテレビ制作のものです。他に、彼らが出演した音楽番組も、『夜のヒットスタジオ』『MUSIC FAIR』と、フジテレビ系の番組が多く占めています。その傾向は、彼らが1985年にレコード会社を移籍した頃から増えました。

チャゲアスはデビューした1979年から1985年までワーナーパイオニア(現ワーナーミュージック)に所属していました。彼らが表現したい音楽性の変化から、キャニオンレコードへ移籍することになりました。
(チャゲアスがレコード会社を移籍した事情は、別記事へどうぞ)
キャニオンレコードは、現在のポニーキャニオンに改名されました。チャゲアスは1985年から1997年に所属している間に、人気が高まり、多くのヒット曲を連発しました。ポニーキャニオンは、ニッポン放送の関連会社として設立されました。ニッポン放送はフジテレビ系列のグループにある、企業です。ポニーキャニオンは、フジテレビとつながりが強いのです。つまり、フジテレビは当時人気があったチャゲアスに注目して、つながりが強いレコード会社から、積極的に彼らの楽曲を使い、音楽番組に出演させて、プッシュしていました。

ポニーキャニオン、1980~1990年代に
使われたロゴ

彼らを『振り返れば奴がいる』のオープニングに出演させたのは、当時のチャゲアスブームもありますが、所属レコード会社がフジテレビに密接したところだったから、選ばれやすかったのです。テレビ局がつながりの強いレコード会社から、アーティストに番組タイアップを付ける手法は、現在も続いています。
フジテレビは1990年前半、テレビドラマでヒット作品を飛ばしていました。チャゲアスブームを盛り上げたメディアのひとつでした。


♪配信版では歌うシーンは見られない

テレビではなく、インターネットの公式配信でドラマを楽しむ方に残念なことがあります。民放テレビ公式配信サービス「TVer」、フジテレビ公式配信サービス「FOD」で、このドラマを見たい方に伝えます。
オープニング映像のチャゲアスは、別映像に差し替えられて、見ることができません。

地上波の再放送ではチャゲアスが歌うシーンはしっかり映りますが、各配信サービスでオープニング映像は、俳優たちが現れるシーンに差し替えられています。
これはテレビ局で作品に出演する俳優たちの肖像権が可能な状況である一方で、配信サービスでは作品配信は二次使用に当たり、権利事情がしっかり許可されていないので、映像が差し替えられてしまったと思います。素敵なチャゲアスの姿を見たかった視聴者の方々にとって、残念な編集です。当時の流行、時代の雰囲気を味わいたいチャゲアスファンにとって、さびしいです。でも、配信版でも名曲はしっかり流れますのでご安心ください。
初見の視聴者のなかには、チャゲアスの姿を見て、「これはドラマに出ないのに誰なのか」と混乱する方々がいると思います。


♪まとめると当時の流行と注目度上げ

以上、『振り返れば奴がいる』オープニングで、チャゲアスが出る理由と分析でした。メンバー出演のドラマの草案から変わって、メンバーがオープニング映像で映ることになりました。彼らが歌うシーンから、当時のチャゲアスブームの勢い、レコード会社からのプッシュの背景があります。

ちなみにブリは主題歌目当てで、このドラマを最後までしっかり見て、どんでん返しに驚きました。あと、チャゲアスは『YAH YAH YAH』だけではなく、素敵な楽曲がたくさんありますので、ヒット曲から他の曲もぜひ聞いてみてください。

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