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スズキさん家の音楽部屋 #3~Sakura_Odyssey:New Frontier/丹下桜~
前回記事(#2 Sakura_Odyssey:MAKE YOU SMILE/丹下桜)はこちら
40過ぎのおっちゃんの音楽部屋へようこそ!家主のスズキと申します。丹下桜さん特集も早くも第3弾です!今回は、1998年9月23日にリリースされた3rdフルアルバム『New Frontier』をレビューしていきたいと思います。
さらに、アルバムレビューに加えて、参戦したライブツアーの記憶も辿っていきます。前回のレビューは全10,773字でしたが、今回もキャリアハイ(笑)を狙っていきます(笑)。それでは、紹介を始めましょう!
M0 アルバム概要
M0-1 Activities in 1998
98年の桜さんの活動には、大きな転機が訪れます。それが、自身の代表作ともなるアニメへの出演です。大人気作家CLAMPさんの作品『カードキャプターさくら』(以下、CCさくら)の主役「木之本桜」役を射止めました。
「射止めた」という表現を使ったのは、アニメ声優業界では、よほどの大御所でない限り、原則オーディションで配役が決まるからです。つまり、毎回自分の仕事を得るために、保証のない戦いを生き抜かなければなりません。
桜さんは、CCさくらのアニメ化が決まる前からこの作品に強い思い入れがあり、原作を読みながら、アニメ化された際には自分が演じたいと強く願っていらしたそうです。
でもその後に発表された『カードキャプターさくら』を見たら、「どうしてもこれはやりたい!」という気持ちがこみ上げて。
でもそのころはまだ私も新人でしたし、役のオーディションというのは自分が望んで受けられるものでもないので、ただただ「オーディションのお話、来ないかな?」と待っていることしかできなかった。そうしたら、オファーをいただいたんですよ!
まさに、これまでの努力の積み重ねが射止めた大役ですね。さらに、ラジオ番組も途中少し期間が空きましたが、FMのレギュラー番組がスタートしました。しかもJFM系列局でネット放送!そうです、地元局で聞けるようになったんです!雑音に悩まされずに聞ける!スズキ少年は大歓喜でした(笑)。
さて、音楽活動の方ですが、この年はシングル3枚、今回紹介するアルバム1枚、さらに初のMV集(当時はPV集と呼ばれていました)、そして初のライブツアー(東京・大阪)と、音楽を主戦場とするアーティストと同等の活動内容でした。
MV集 New Frontier
リリース日 1998年10月9日
媒体 VHS/LD
収録曲 MAKE YOU SMILE/CATCH UP DREAM/New Frontier/BeMySelf/FREE
※なお、この映像作品は一部の方へ殺傷能力が大変高いオフショットが収録されています(笑)
映像の仕事は初めてなんです。撮影って苦手なんですよ。最初は写真のときように思わず息を止めて固まっちゃうんじゃないかと思っていました。だって、ずっと撮られているんですよ、息が抜けないじゃないですか。でも、ビデオはかえってそれがよかったみたい。その分、油断している私の姿も撮られていますよ。あと、去年、写真集を作るときにイギリスに行ったときの映像も入っています。
アルバムは音で、ビデオは映像で「ニューフロンティア」という世界観を表現しました。「ニューフロンティア」というコンセプトがあったからこそ今回、満足のいく作品ができたと思っています。
この年の活動を振り返ってみると、とんでもない大繁忙期だったのかなと感じました。大人になって改めて振り返ると、これほど仕事を詰め込んで体調やコンディションの維持は大丈夫だったのかと心配になるほどの活動量です。
M0-2 参加クリエイター紹介
今作品から、参加クリエイターの紹介文をここにまとめました。(一部の方は曲ごとにご紹介します。)
吉元由美さん(M1、M3、M9 作詞)は、作詞家・小説家・エッセイストとしてご活躍されており、後の実績になりますが、平原綾香さんの「jupiter」の作詞を手掛けていらっしゃいます。桜さんご本人も吉元さんの作品を愛読しており、楽曲制作時には歌詞の内容や方向性について綿密にやり取りをされていたそうです。
水島康貴さん(M2、M3、M10 アレンジ)は、作曲家・アレンジャーとして大活躍されている方です。この98年ごろには、SPEEDの全曲をアレンジされるほど多忙を極める中で、この作品に参加されました。J-POP最先端のアレンジが桜さんの楽曲と協力タッグを組んだ、まさに奇跡とも言える人選です。
福田裕彦さん(M1、M8 アレンジ)は、作曲・編曲・プロデュースとマルチに活躍されている方で、今回の個人的最重要人物(笑)と言えます。福田さんはシンセサイザー業界では知る人ぞ知る存在で、YAMAHAの「DX7」シリーズにおいて解説や音色カートリッジの開発にも携わられていました。
当時、自分も中古で「DX7-2FD」を手に入れた際、福田さんが開発したカートリッジを楽器屋さんでおまけとしていただき、お名前と作った音色を知りました。アレンジされた曲のスタイルなどについては後述しますが、福田さんがある人物の雇い主であることが発覚します。なんと、大ちゃんの雇い主だったのです。
ここで少し大ちゃんのプロフィールについて触れます。大ちゃんは高校時代、地元浅草の楽器屋さんでバイトをしながら楽器を買い集めていました。シンセサイザーへの造詣が深すぎて、店に並ぶすべての機材でバグ出しをしてしまうほどの能力が買われ、高校生ながらYAMAHAから開発業務の委託を受けました。
そして、高校卒業後に個人事業主として委託を受け、福田さんの事務所に所属したと推測されます。事務所時代にはゲーム音楽の仕事をいくつか担当し、アレンジ面で福田さんに相談していた可能性もあります。
※2025/01/29 一部訂正
別の話題経由ではありましたが、福田さんがX(旧Twitter)にて大ちゃん雇用の経緯をポストされていました。こちらが事実となるため、Xのポストを引用させていただきます。
この辺の出来事は大福の1回目のライブでめっちゃ詳しく説明したのですが、浅倉くんは
— 福田裕彦 8歳708ヵ月 (@YasuhikoFK) January 28, 2025
・高校卒業後、俺と生方の会社「TimeBase」に正社員として入社
・YAMAHAに出張、新商品のデバグ要員として認められ、多くの製品のデバグに関わるようになる
・新商品EOSの開発、デモンストレーションを行う… https://t.co/CzHAE8V2hm
これも大福ライブのVol.1で詳しく語ってるのですがw、ある日会社にYAMAHAの人から電話があって、某楽器店にデジタル楽器を暴走させて遊んでいるバイトの高校生がいるので会ってみないか、と。何だそいつ、会いたい!と言って会ってみたら、それが浅倉くんで、即、入社しないかと誘いました。 https://t.co/eZAD7kQE2c
— 福田裕彦 8歳708ヵ月 (@YasuhikoFK) January 29, 2025
この後、大ちゃんプロデュースの木村由姫さんの作品で福田さんがアレンジを担当したり、現在は「大福」というライブイベントをお二人で開催したりと、事務所を離れ一躍有名になった後も恩師との交流が続いているようです。そのため、桜さんの一部作品は勝手に1/4大ちゃんファミリーに認定します(笑)。
M0-3 アルバムコンセプトなど
リリース日 1998年9月23日
レーベル KONAMIレーベル(キングレコード)
オリコン最高位 23位
※2024年11月現在、サブスク配信(AppleMusic、Spotifyなど)なし。
今作は、前作「MAKE YOU SMILE」の旅を終え、たどり着いた場所からセカンドステージを始めるというコンセプトが設定されています。その中でも「強さとやさしさの両極」「両面性・二面性」を表現するアプローチがとられています。また、制作フローにも変化があったようで、さらに桜さんの中でも心境の変化があったことがうかがえます。
1枚目2枚目は、最後にタイトルをつけたんです。結局、アルバムに入っている曲がタイトルになってきたのです。でも、今回は逆で、最初にアルバムタイトルをつけました。それに向かって曲作りをしてゆきました。
このアルバムを出したことで、ひとつの区切りになったような気がします。
1枚目のアルバムは「はじめまして」で、2枚目が、手探りの中で捜し物をして、3枚目でなんとなく、これが私なのかなというものが見つかっていったような感じだったのです。
そんな「新天地」を目指したコンセプトアルバム。今回の自分的音楽テーマは「プログレ組曲 New Frontier」です。楽曲紹介の中で、その理由などをお話しします。前置きが長くなりましたが、早速曲紹介を始めましょう!
M1 女神たちの夜明け
Lyrics by 吉元由美 Composed by 朝井泰生 Arranged by 福田裕彦・朝井泰生
突然ですが、この楽曲は個人的に「ベストナイン」「ゴールデングラブ賞」「MVP」を総取りするような一曲です!桜さんの楽曲の中でも、一番衝撃を受け、思い入れのある曲です。
その理由として、第0回からお話ししてきたように、自分の中で大ちゃんの存在が非常に大きく、桜さんにも大ちゃんが作るような楽曲を歌ってほしいという願いを密かに抱いていました。この楽曲は、ほぼその願いを叶えたバックトラックであり、桜さんのボーカルの魅力が存分に引き出された一曲です。
アルバムを開封し、デッキに入れて最初にこの音が流れてきたとき、思わず声を上げてしまうほどの衝撃を受けました。後に福田さんと大ちゃんの関係を知り、「そりゃこういう作り方ができるな(笑)」と確信しました。この曲の解説は長くなりますが、どうぞお付き合いください(笑)。
まず、イントロで聞こえるロングトーンのシンセ音。これは、大ちゃんや小室先生がライブで盛り上げる際によく使う手法です。観客を煽るような効果的な演出ですね。
続いて、倍音成分が強いシーケンス音に続いて、アタックの強いピアノサウンドが登場します。
この音色は、Roland社の「JD-800」の53番「AC.piano1」です。JD-800の53番は「小室ピアノ」として知られ、globeの「DEPARTURES」など、小室先生の楽曲で多用されており、その固くきらびやかなサウンドは、多くの人に馴染みのある音色です。
ピアノサウンドに絡むきらびやかなリード音、そして前作で登場したバグパイプ系音色のメインリフが連続で押し寄せてきます。イントロだけで、大ちゃん要素と桜さんの音楽性の相性が抜群で、引き込まれること間違いありません。
メインリズムは、ダンスミュージックの王道であるTR-909が採用されており、これまでの桜さんの楽曲では考えられないほどビート感が強調されています。
また、Bメロで登場するベル系音色(いわゆる「なぞり」)は、女性ボーカル楽曲でよく使われる手法で、桜さんのボーカルとも抜群にマッチしています。これには思わず笑ってしまうほど感心しました(笑)。
さらに、サビ前のオルガンのグリッサンドはaccessの作品でよく見られる手法で、ギターサウンドはTMRevolutionの作品で葛城哲哉さんが弾いているようなバッキングとソロを彷彿とさせます。
作曲の朝井泰生さんと福田さんが「浅倉くんっぽいことをやろうか?」と企んでいたのではないかと思わせるような完成度です。この曲には、そんな遊び心が随所に感じられます。
「新天地」を目指すセカンドステージの冒頭を飾る曲として、これほどパワフルなバックトラックはふさわしいと言えます。実際、この曲がライブのオープニングで使われた際の異常な盛り上がりを、いまだにはっきりと覚えています。
さて、本題の桜さんのボーカル、歌詞、そして世界観についてです。この曲のボーカルは、いつもの「120%POSITIVE」な雰囲気ではなく、少し抑えめながら力強さがあり、光と影が交錯するような印象的な歌唱が際立っています。
特に、2コーラス目のサビ終わりで少し抑えたフレーズが、急に空が陰るようなイメージを与え、鳥肌が立ちました。キー設定も桜さんがのびのびと歌えるように調整されており、ラストサビの転調後も苦しさを感じさせず、むしろ羽ばたくような伸びやかなボーカルが際立っています。
吉本さんの歌詞も素晴らしく、光と影、つらい気持ち、そしてそれを乗り越えて進む女性らしい強さと柔らかさが巧みに表現されています。
もし「さくらプレイリスト」を作るなら、この曲を絶対に1曲目に選びます。このシリーズが落ち着いたらプレイリストも考えてみたいと思います。本当に未来に残したい桜さんの名曲のひとつです。
M2 Brand-new everyday
Lyrics by 丹下桜 Composed by 上畑正和 Arranged by 水島康貴
ライト系バンドサウンドを思わせる、明るく元気な楽曲です。作詞の際には「CCさくら」の「木之本桜ちゃん」をイメージして書かれたそうです。
この楽曲は「120%POSITIVE」な歌詞で、ボーカルにもそのエネルギーが感じられます。さらに、ボーカルからは自信と安心感が強く伝わってきます。これまでの2枚のアルバムで培った経験の賜物でしょうか、とても心強く聞こえます。
まさに、セカンドステージが始まり、毎日を前向きに過ごしている世界観を明確に見せてくれています。バックトラックには、水島さんらしいリズム感のあるカッティングギターが使用されており、「SPEED」の「wake me up」や「BODY&SOUL」を思わせる明るく元気な雰囲気を後押ししています。
また、サビ前には桜さん楽曲初の「オーケストラヒット」が採用されており、サビへの導入とパワフルなサビの始まりをうまく演出しています。
M3 Journey Into Myself
Lyrics by 吉元由美 Composed by KAN Arranged by 水島康貴
今作もやってまいりました、著名アーティスト提供楽曲シリーズです。なんと今回は、「愛は勝つ」や「やまだかつてないWink」への楽曲提供で大ヒット曲を生み出した「KAN」さんが参加されました。
出典は忘れてしまったのですが、KANさんへのオファーが複数回断られたものの、スタッフさんの粘り強い交渉により制作していただけたという記事を読んだ記憶があります。
バックトラックについてですが、こちらも水島さんがアレンジを担当されており、M2とほぼ同じ構成(オケヒットも含む)で、M2とM3の繋がった世界観がはっきりと感じられます。
M1でセカンドステージの覚醒、M2で毎日の生活を送り、M3で自分を取り戻す旅に出る。3曲を通じてそのような世界観を感じました。
ここで、音楽的テーマとして挙げた「プログレ」について少し触れたいと思います。「プログレ」は「プログレッシヴ・ロック」の略称で、クラシック音楽などをテーマにした長編の組曲的な作品が主に発表されています。自分もそこまで詳しくはないのですが、代表的なアーティストとして「エマーソン・レイク・アンド・パーマー」の「展覧会の絵」が挙げられます。このアルバムは、前作の映画的なストーリーというより、一人の深層心理の世界のような組曲感が感じられるため、「プログレ」というテーマをつけさせていただきました。
まさに、第1楽章「覚醒」、第2楽章「日常」、第3楽章「旅立ち」と、明るめの内容が続いていますが、次にはどのような展開が待っているのかというワクワク感が感じられます。
M4 FREE-album version-
Lyrics by 松浦有希 Composed by 松浦有希・吉田潔 Arranged by 吉田潔・松浦有希
先行シングルのアルバムバージョンです。まずは、シングル盤の紹介をさせてください。
シングル FREE
リリース日 1998年9月4日
レーベル KONAMIレーベル(キングレコード)
オリコン最高位 47位
この曲は桜さんの6thシングルとしてリリースされました。前述のMV集の関係で、この曲からMVが付きました。そこで期待してしまうのが「ランキング番組での露出」ですが、当時のオリコンランキングは群雄割拠。小室先生のTKファミリー、B'z、L'Arc~en~Cielなど強豪揃いで、ランクインは至難の業です。
それでも、今やランキング番組の老舗となった「カウントダウンTV」で、たまたまTOP100紹介の週とFREEの発売週が重なり、ほんの数秒ですがFREEのMVを目にすることができた思い出があります。
さて、楽曲の方ですが、シングルとアルバムでの違いは間奏の長さになります。アルバムには制作時の本来の長さで収録されています。小室先生的に言うと、シングル版が「Radio Edit」、アルバム版が「Straight Run」ってやつですね(笑)。
今回改めてこの楽曲を聴いてみて感じたのは、作りはJ-POPですが、とにかく「ロッカバラード」だということです。優しさと強さの二面性を力強く表現しており、バックトラックの印象とは裏腹にとてもロックな印象を受けます。
桜さんのボーカルも、一つ一つ言葉をかみしめながら歌っているような印象を受けます。MVのイメージもありますが、まっすぐ前を見つめて強く歩き出そうとする感覚がひしひしと伝わってきます。
そして、この楽曲の世界観はジャケット写真とリンクしています。「森」に迷い込み、その森の中を自分を見つめながら歩いていくという世界観を感じます。プログレ的には第4楽章「森林」といったところでしょうか。
森に迷い込み、自分と向き合うことで、このあとどんな展開が待ち受けているのか。この楽曲は、そんなワクワク感も届けてくれる素晴らしい作品です。
M5 Silent Song
Lyrics by 丹下桜 Composed by 宮島律子 Arranged by 重実徹
M5~M7までのアレンジには重実徹さんが参加されています。
重実さんは、福山雅治さんやKinKi Kidsなど著名アーティストへのアレンジ提供をはじめ、自身もキーボーディストとしてCHAGE and ASKA、中島みゆきさん、吉田拓郎さんなど、そうそうたるアーティストのサポートメンバーとして活躍されている方です。
楽曲には、プログレ的に第5楽章「瞑想」と名付けたいような世界観があります。森の中で岩や木に少し腰掛け、誰かへの想いに耽る姿が目に浮かぶようです。
この楽曲でも桜さんのボーカルには絶対的な安心感を覚えます。このレビュー企画のために各アルバムを跨いで聴いている影響もあるかもしれませんが、今作でのボーカルの力には本当に脱帽します。
まさに自身が語る「表現者」として、この世界観を伝えるプロフェッショナルな姿を見せてくれる、そんな印象を受けました。
「職業は?と聞かれたら、表現者ですって答えるようにしています。表現することが仕事。うたっているときも、ナレーションをしているときも、吹き替えをしているときも、伝える作業をしているんだって。そのために、いつもコンディションを整えておかなくてはいけないと思っています」
M6 少女時代
Lyrics by 原由子 Composed by 原由子 Arranged by 重実徹
アルバムレビューでは、初の「カバー曲」が登場です。
あの原由子さんの楽曲「少女時代」のカバーです。
この楽曲をカバーしたことについては、桜さんからもコメントが残されていました。
「少女時代」はSASの原由子さんのカバー
「少女時代」は高校生のとき大好きだった曲です。シングル「FREE」では森高千里さんの「道」をカバーしましたが、今回は自分でリクエストして「少女時代」に決めました。カバーするならこの曲、とずいぶん前から思っていました。念願がかないました。
原さんのことも大好きで、ほっとするあたたかさがありますよね。不思議な魅力の女性です。憧れます。
早速楽曲について紹介したいと思います。リンクを貼った原さんのバージョンとの大きな違いは、原さんがキーボーディストであるためキーボードサウンドがメインであるのに対し、桜さんバージョンはギターを前面に出した「グランジロック」系サウンドになっている点です。この新約版「少女時代」と言っても過言ではない「さくらスペシャル」なバックトラックとボーカルが最高です。
自分の妄想ですが(笑)、ライブで演奏するなら後半戦の1曲目、暗転から桜さんがテレキャスターを手にイントロ~Aメロのコードを自ら弾きながら歌う姿を想像します。ぜひ実現してほしいです!(笑)なお、資料収集のついでに、こんな感じの形や色が素敵なテレキャスターを見つけました(笑)。
今回改めてこの楽曲を聴いてみて、現代の楽曲でもし桜さんがカバーしたらおもしろそうだと感じるものがいくつか浮かびました。この辺の話もいずれ書けたらと思っています。
※追記
「少女時代」ですが、斉藤由貴さんバージョンも発見しました。そもそも斉藤由貴さんへの提供曲であり、原さんがセルフカバー、その後桜さんがカバーしたという時系列だったそうです。
斉藤由貴さんバージョンは、まさに80年代の打ち込みサウンドに仕上がっています。参考資料としてApple Musicのリンクを貼っておきます。
M7 New Frontier
Lyrics by 丹下桜 Composed by 中山手瞬 Arranged by 重実徹
アルバムのタイトルトラックです。まず、歌詞の視点が「男性視点」で展開されている世界観が新鮮さを感じさせます。
もしかしたら、「New Frontier」にはこれまでとは逆の視点の世界を表現するという意味も込められていたのかもしれませんね。
この楽曲での桜さんのボーカルは、「代弁者」の姿を表現していると考察しています。適切な言葉が思い浮かばず悔しいのですが、桜さんの声で「ボク」や「君」といった言葉が発せられることで、同性が同じメッセージを発するのとは異なる刺さり方をします。柔らかくも深層心理にしっかり届く。そんなパワーを感じました。
バックトラックでは、「バグパイプ系音色」やハープなど、オリエンタルなサウンドが「さくらワールド」を演出しています。さらに、この楽曲のアウトロは1分ちょっとあり、ラストサビ後に新たな展開が始まります。改めて聴くと、これは「プログレ」的な構成だと感じました。このアルバムの音楽的テーマにふさわしい一曲です。このままあと15分くらい続いて、さらにいろいろな展開を見せても良いのではとも思っちゃいました。
余談ですが、この楽曲にはMVもあり、歌詞に出てくる桟橋と思われる場所とスタジオでの歌録りの様子をミックスした作品になっています。個人的な感想ですが、ボーカルの「振り」は視覚的イメージとしてとても重要だと思っています。前々回に特例で動画を埋め込みましたが、桜さんの歌う際の「振り」はボーカルや人物像に非常にマッチしていて、自分はとても好きです。
アルバムの中でも最重要なこの楽曲は、お気に入りの1曲です。
M8 じぶんにできる何かで
Lyrics by 西脇唯 Composed by 西脇唯 Arranged by 福田裕彦
桜さん楽曲では初の「ユーロビート系楽曲」です。ユーロビートといっても実はいくつか流派があり、この楽曲は「ハイエナジー」というユーロビートの始祖(80年代後半~90年代前半)のスタイルに近いバックトラックになっています。「◯◯◯D」などで使用されるユーロビートよりもテンポがゆっくりで、シンセの音数も少なめな落ち着いた雰囲気のダンストラックです。アレンジはM1に続いて福田さんが担当されています。個人的には「安心安定の福田さん曲」としてお気に入りの一曲です!
※参考音源(ハイエナジーと一般的ユーロビートの違い)
どちらもとっても馴染みのある楽曲を選びました(笑)
①ハイエナジー(カイリー・ミノーグ/Tune It into Love)
②一般的ユーロビート(Domino/Mickey Mouse March〈Eurobeat Version〉)
作曲・作詞はシンガーソングライターの西脇唯さんが担当されています。女性アーティストを中心に多くの方へ楽曲提供をしており、印象的なのが、某金融CMソングで一躍有名になったジョー・リノイエさんのプロジェクト「Romantic Mode」への歌詞提供です。それも「機動新世紀ガンダムX」のOP楽曲でした。本当にマルチにご活躍されています。
楽曲の世界観ですが、M7のアンサーソング的な位置づけの楽曲なのではないかと考察しています。「これだけ想ってもらっているのに、自分は何ができるのか?」「自分でできる何かを探している」というテーマを感じました。この楽曲はアルバムの中でもキーがかなり低く、特にAメロでは桜さんの声域の中で最も低い音を使っているのではないかと思います。実際にご本人も、このキーの低さに試行錯誤されたコメントを残されています。
ここまで通して聴いていくと、M4以降、深い世界観が展開され、M1に登場するキャラクター(女性)とM7で現れた男性の関係性を描いた楽曲に変わってきています。アルバムの終盤に差し掛かり、「あれ?この二人はすれ違っているのでは?」という疑問がふと湧き上がってきます。新天地の行方はどうなるのか?というワクワク感を、この楽曲は見事に演出してくれています。
M9 Thinking Of You
Lyrics by 吉元由美 Composed by 川上明彦 Arranged by 川上明彦
コンセプト作品としてはアルバム最後の楽曲です。4分音符で刻むストリングスサウンドとフェンダーローズ系のピアノサウンドを使用したバックトラックが、MISIAさんを代表するR&B系の雰囲気を演出しています。
歌詞や世界観ですが、M8からの流れが気になるところです。それぞれの道を歩む結論に達したようで、寂しさや悲しさが少し垣間見える瞬間もありますが、基本的にはポジティブ。それぞれ新しい道に向かって歩いて行こうという雰囲気が、桜さんのボーカルからはっきりと感じられます。そんな中、「あなたから先に歩き出してほしい」という歌詞には、自分が先に行きたくない、見送ってから歩き出したいという儚さがあり、心に深く刺さりました。
ちなみに、個人的にはaccessの「TEAR'S LIBERATION」と同じ雰囲気を感じました。
「新天地」を探すストーリーの最後を飾る素晴らしい楽曲です。
M10 CATCH UP DREAM
Lyrics by 丹下桜 Composed by ながつきまろん Arranged by 水島康貴
アルバムラストは、先行シングル曲です。まずは、シングル盤の紹介をさせてください。
シングル CATCH UP DREAM
リリース日 1998年3月27日
レーベル KONAMIレーベル(キングレコード)
オリコン最高位 49位
タイアップ 文化放送ラジオ「CLUBときめきメモリアル」ED
※ジャケ写…いいですよねぇ…
この曲は桜さんの5thシングルとしてリリースされました。アレンジは水島さんが担当しています。ギターリフとシンセブラスを前面に出したアレンジで、SPEEDの「GO GO HEAVEN」や「ALL MY TRUE LOVE」のようなパワフルなバックトラックに仕上がっています。
歌詞やボーカルの世界観はおなじみの「120%POSITIVE」。おなじみだからこその良さと安心感があり、大好きな楽曲のひとつです。本作にはシングル盤そのままで収録されています。
M9まで内容の濃いコンセプトが続き、この曲がアルバムのエンドロールのような役割を果たし、「良い作品だったな」と振り返ることができるような雰囲気を感じます。
少し脱線してしまいますが、個人的にこの楽曲にはエピソードがありますので、紹介させてください。
この曲が発売される少し前、念願のシーケンサーを購入しました。始めは雑誌付録のスコアをそのままコピーして打ち込みをしていましたが、ある日「月刊歌謡曲(ゲッカヨ)」という、歌詞とギターや鍵盤で演奏できるコードが書かれた雑誌に、この曲が掲載されていたのです。
「これはやるしかない。しかもアレンジは自分で考えよう」と一念発起して制作しました。イントロのブラスリフは何度も聴き、一生懸命耳コピしました。作って満足すれば良いものの、スズキ少年はMDにダビングし、番組宛てに送るという暴挙(笑)に出ます。
おそらくスタッフの方が丁重に処分してくださったと信じていますが…その節はお手間をおかけしました…(苦笑)。若気の至りですね(笑)。
番外編 Sakura Tange First Concert Tour "New Frontier" 1998
その1 About this Live
ツアータイトル Sakura Tange First Concert Tour "New Frontier" 1998
スケジュール
1998年10月3日 梅田HEARTBEAT(大阪)
1998年10月11日 赤坂BLITZ(東京)
2都市2公演
1998年10月11日 赤坂BLITZ セットリスト
M1 女神たちの夜明け
M2 MAKE YOU SMlLE
M3 Journey into Myself
(MC)
M4 道
M5 Silent Song
M6 少女時代
M7 2色だけのパレット
M8 それがあなたのいいところ
(MC)
M9 New Frontier
M10 じぶんにできる何かで
M11 Thinking Of You
M12 tune my Iove
(MC)
M13 Stand by Me
(おはなし)
M14 Brand‐new everyday
M15 CATCH UP DREAM
EC1 FREE
(MC)
EC2 Be Myself
その2 記憶と感想をたどってみる!
ほとんど記憶がなくて申し訳ないのですが、前回再会を果たした管理人Mさんのファンサイトで、記憶を可能な限り呼び覚ましてきました(笑)。
赤ベコ県競馬場市の実家から深夜バスで移動し、早朝に新宿で降りて赤坂見附まで行きました。ライブは夕方でしたが、午前中にはBLITZにいたと思います。
「することないかな?」とも思いましたが、赤坂BLITZはライブハウスで、オールスタンディングのため整理券が配られていました。午前中に整理券を手に入れたおかげで、席はかなり前の方だったと記憶しています。
ライブの内容について、M1でお話した「女神たちの夜明け」のイントロから桜さんが登場する場面が鳥肌ものでした。そして、改めて思い返すと、ずっと歌い続ける桜さんに引き込まれていたように思います。本当にあのとき思い切って参加して良かったですし、「スズキ少年、よくやった!」(笑)と思っています。
ライブメンバーは桜さんとDr、Gt、Bs、Keyの5人構成。たしか「さくらバンド」と紹介されていたと思います(違っていたらごめんなさい)。ここでスズキ少年の偏った音楽感が、ちょっとしたカルチャーショックを受けます(笑)。
終演後、機材を見たくて最前列へ行き、「使われたシンセを見よう!」と思ったのですが、セットされていたのは「YAMAHA EOS B900EX」たった1台だけ。
入門機だけど、MIDIで接続し、セット裏に大量の機材をラック積みしているのだろう…と思ったのですが、よく考えるとライブ中はほぼアルバムと同じオケが流れていました。つまり、一般的なDATマスターテープ(現代ならDAWからオーディオデータ)を再生し、そこにバンドメンバーが少し演奏を加える形式だったのです。(歌手系の方はこれが普通です!!!)
スズキ少年は大ちゃんや小室先生のライブばかり見聞きしていたため、シンセを大量に持ち込み、ツアーごとに打ち込みを作り、生演奏するのが普通だと思い込んでいました。
※参考記事
こんな記事や写真を日常的にみてたらそりゃ感覚麻痺しますね…(苦笑)
しかし、ライブには多大な予算が必要で、本当に集客が見込めるアーティストでないとワンマンライブは難しいのです。赤坂BLITZは閉館してしまい調査できませんでしたが、都内で2,000人規模のライブハウスを貸し切るとなると、箱代だけで推定200万円はかかります。
そこにサウンドスタッフの依頼料、バンドメンバーの出演料、イベントスタッフの給料が加わるため、公演するだけでも相当な費用が必要です。そんな中でフル打ち込み生シンセなんて、無茶を言っていたと今では反省しています。本当にごめんなさい…。
※補足
小室先生はTM NETWORK第1期にコカ・コーラやローソン、大ちゃんはaccessで大塚製薬(カロリーメイトのブランド名)のスポンサーが付いてツアーを回っていました。スポンサーが付かないと、あのような大規模なライブは難しいですよね…(苦笑)。
あ、でも、せめて入門用のYAMAHA EOSではなく、もう少し良いシンセを用意してあげてほしかったですね…(当時ならKORGのTRINITYやYAMAHAのSY99とか)。
そんな勘違い甚だしいカルチャーショックはありましたが、ライブ自体は本当に楽しく、盛り上がることができました。ファンサイトの掲示板で交流していた方々ともお会いでき、ファン同士の交流も楽しめた高校時代の大冒険でした。
その3 勝手にセレクション!スズキ的「さくらバンド」!
最後に少しお遊び的な企画です(笑)。もし自分が「さくらバンド」のメンバーを選べたら!?という妄想で、個人的おすすめバンドメンバーを編成してみましたので、少しだけお付き合いください(笑)。
スズキ的「さくらバンド」トップチームラインナップ(笑)
※敬称略
BGMは侍JAPAN中継でおなじみのこの曲で行きたいと思います(笑)
Vocal
丹下桜:言わずもがな、このバンドのメインですね。桜さんがいなかったら成り立ちません(笑)。もちろん「少女時代」でお話したとおり、この曲ではギターを弾いていただきます(笑)。
Guitar
野村義男:旧ジャニーズ事務所出身で、たのきんトリオや「金八先生」出演からまさかのギタリスト転身という異色の経歴をお持ちのスーパーギタリスト。浜崎あゆみさんや我らがウツ殿下(宇都宮隆さん)のサポートなどでおなじみです。対応できるジャンルも幅広く、ギターだけではなく、ベースやウクレレと守備範囲が広いのも選定理由です。
Bass
西村麻聡:ロックバンド「FENCE OF DEFENSE」のリーダーかつ、TMNETWORK初期のサポートメンバーとして活躍されているベーシスト。代表曲にアニメ「シティハンター」のOP曲「SARA」があります。TMNETWORKの経験値があり、打ち込み系やシンセベースで演奏されたフレーズを生ベースで演奏できる強みが選定理由です。
Drums
神保彰:フュージョンバンド「カシオペア」の初代ドラマーであり、ソロドラマーとして世界的に活躍されているレジェンド。通常の演奏に加え、「ワンマンオーケストラ」というドラマー1人ですべてのパートを演奏する活動をされています。自分も二度ライブに参加させていただき、大変衝撃を受けた思い出があります。
Keyboard
nishi-ken:作曲家、編曲家、そしてソロアーティストとしても活躍する、金沢が生んだスーパーキーボーディスト。自分と同い年という思い入れもあります。ウツ殿下のライブで2度演奏を見たのですが、小室先生や大ちゃんの系譜をしっかり辿りつつ、同郷の音楽仲間である中田ヤスタカさんのような超エレクトロなアプローチもできる点が選定理由です。また、nishi-kenくんはGReeeeN(現:GRe4N BOYZ)のアルバムにも毎回参加しています!
スペシャルゲスト枠
Violin
NAOTO(Silent Song):ウツ殿下のソロ活動でよくコラボされているバイオリニストです。演奏がとても好きで、「Silent Song」のバイオリンをぜひ弾いてもらいたいと思い、ゲスト枠に選びました。
ちなみに、キーボードでなぜ大ちゃんを選ばなかったのかという理由ですが、大ちゃんはレコーディングで作った音をライブで徹底的にぶち壊すスタイルを取っており、おそらくライブではシンセの「ギュインギュイン」する轟音で良い意味で破壊しかねない(笑)。ちょっとロックすぎて桜さんのスタイルとは合わないかなと思い、選定を見送りました。ただし、楽曲はぜひ作ってほしいです(笑)
M99 あとがき
全10曲+番外編と、今回も盛りだくさんでお送りしました。本当に最後までお付き合いありがとうございました。そして、今回の「New Frontier」が、リアルタイムで聴いていた最後のアルバムになります。
次回からは、現代のスズキさんが聴いた考察や感想となります。「なぜ急に聴かなくなってしまったのか?」については、次回お話したいと思います。
今作品は本当に完成度の高いアルバムでした。それだけに、ランキングや露出が少なかったことが本当に悔やまれます。もしタイムマシンでプロモーション関連の方に意見できるなら、「CCさくら」を活用して、なぜ「ポップジャム出演」を狙わなかったのか?と伝えたいところです。
当時、同じようにNHKの作品に出演していた椎名へきるさんがポップジャムに出演していたのに、桜さんが出演できなかったことを今でも悔しく思います。
「声優さん」というカテゴリで括られてしまうことが多いですが、前回のあとがきでも書いたように、J-POPの舞台でも十分に勝負できるアーティストだと本気で思っていますし、今でもそう信じています。
もしポップジャムに出演できていたら、「女神たちの夜明け」と「FREE」をメドレー形式で披露して、多くの方に興味を持っていただけたのではないか、と想像します。今となっては、そんな悔しい思い出も良い記憶の1ページなのかなと思っています。
さて次回ですが、フルアルバムのレビューを一旦お休みして、ミニアルバム「Alice」を取り上げたいと思います。ミニアルバムとはいえ、シングル曲やおすすめの曲が凝縮されているため、急遽記事を書くことにしました。次回もまた読んでいただけたら本当に嬉しいです。
それでは、恒例のご挨拶で締めさせていただきます。
ほなまた!