生きる屍が満月の日に幸せになる覚悟を決めた話。#0003
第三話
店を出て数十分後、僕は知らない街にいた。
とても静かで美しい街。
どこか懐かしさもあった。
はじめてきたのに。
そんなボクの心の動きを知ってか知らずか
小さな女の子がボクの洋服の裾をクイクイひっぱりながら
こう尋ねてきた。
お兄さんも「作家さん」?
その問いにボクは一瞬戸惑いつつも
ああ。そうだよ。
正確にはこれからなるのだけど。
そういうと少女はとても嬉しそうに
やっぱりそうだったんだ!!
だってね。この土地に入れる人は
何らかの形で「文章」に携わっているの。
その中でもやはり、作家さんが多くて。
だからお兄さんも作家さんかな?思ったの。
そう彼女は言った。
その言葉をきき、ボクはある本を思い出した。
その本のタイトルは、『生きる屍』
ボクと同じ病で生きにくさを感じながらも
40代で作家デビューをした女性の話だ。
この本を知らない方のために、
ボクが少し説明しよう。
彼女の名前は、たかはしあやさん
横浜市にお住いの40才の女性。
プロフィール写真にある彼女の笑顔からは
想像できないが、それはそれは大変な人生だったそうだ。
いじめ、てんかん、広汎性発達障害(アスペルガー傾向アリ)
どこに行っても毛色が違い過ぎて生きにくかったそうだ。
幸か不幸か親が面倒を見れる程度の家庭であったため、
家に引きこもり、発信を続け、依頼があればそのライティングスキルと
豊かな感性を活かした文章を作成販売していたそうだ。
しかし、勉強している期間も含めると最初の3年はほぼ無収入で
親兄弟に申し訳ないという思いと、才能があると言ってくれた方達に
申し訳ないという気持ちがあり、益々うまくいかなくなったが、
ある時、徹底的にさぼり、「何もできない自分」を認めたら
「何か知らんけどいるだけで和む」という強みを活かせるようになり
「こころの座敷わらし」として人気を博し、
その人生に興味を持たれ始め、作家かつどうだけでなく、
ラジオ、テレビなどの各種メディアや出身地湯河原をはじめとする
地方再生、カウンセラー、セラピストとして活躍するだけでなく
障害者も豊かに暮らせる社会づくりに力を入れている。
というとても素敵な方だ。
当然ボクは魅了され、すぐにでも会いたい。
そう思い、ボクは彼女に会うためにバイトをし、
お金を貯め、会えた時に訊きたいことをすべてメモし、
彼女の活動の足しになればと寄付もするようになった。
なので、ボクは声をかけてきた少女が
彼女の本に出てきた「彼女の娘さん」だろうと
あたりをつけた。
そして、それを確かめるために
今度はボクが質問した。
つづく
はじめましてたかはしあやと申します。 記事作成・キャッチコピー・タイトル付けを 生業としておりますが このままだと止めないと いけなくなるかもという位 金銭的に困っていますので、 サポートをしてもらえると 泣いて喜びます。 どうぞよろしくお願い致します。