【目指せソムリエ#36】広大な大地が多様なワインを生む、オーストラリア
はじめに
プレソムリエの皆さん、おはようございます!お盆も過ぎ、そろそろ涼しくなってもいい頃なのでは?と思いますが、なかなか落ち着かない暑さですね。ここ100年の間で最も暑い夏だそうです。。収穫間近のブドウも焼けてしまわないか心配です。
今期のソムリエ対策noteを始めたのはまだ凍えるような寒さの頃で、あと半年以上もあると高を括っていたソムリエ試験もあと1週間で期間終了となりました。時の流れが早過ぎます・・。
さて、今回はオーストラリアです!!
オーストラリアの概要
オーストラリアはヨーロッパ全体の約7割(日本の20倍ほど!)に相当する大きな国です。しかし、国土の大半は砂漠や乾燥した草原のため、ブドウ栽培地は国の南半分にあたる南緯31〜43度、東端のニュー・サウス・ウェールズ州から西端の西オーストラリア州まで3,000km以上に渡りワイン産地が点在しています。
オーストラリアは使用可能な水資源が限られており、ブドウ畑の増加を妨げる一番の障害となっています。また、灌漑用水のコスト上昇に伴い、安価帯ワイン用の畑は採算が合わなくなってきているようです。
消費側としてはBYO(Bring Your Own)と呼ばれるレストランへのワインの持ち込み文化が発展しています。日本のレストランでもBYO(持ち込み)制度を導入しているお店がありますね!
オーストラリアの歴史
遡る事1788年、ニュー・サウス・ウェールズ州の初代総督だった英国海軍アーサー・フィリップ大佐が南アフリカ喜望峰とブラジルからシドニーにブドウ樹を持ち込みました。
1825年にはオーストラリアのワイン用ブドウ栽培の父とも言われるジェームズ・バズビーがハンター・ヴァレーに本格的なブドウ園を開設し、その後1831年にはフランス・モンペリエの植物園をはじめとしてヨーロッパを巡って入手した欧州系ブドウを王立シドニー植物園に植樹しました。
1840年代にはバロッサ・ヴァレーに現ドイツ周辺から宗教的迫害を逃れてきた人々が入植、ワイン造りを始め、1843年に現存する同国最古のシラーズが植栽されます。1877年にはヴィクトリア州でフィロキセラが発見され、この頃から栽培・醸造は南オーストラリア州中心となっていきます。
1880年代以降は辛口ワインから酒精強化ワインへ生産が移行し、フィロキセラ禍でダメージを受けたポートワインの代替品として英国への輸出が拡大します。1890年にはクナワラでJohn Riddoch ジョン・リドックがブドウを植樹、1929年以降は英国の優遇策があり輸出に拍車がかかり、生産の大部分が酒精強化ワインとなりました。
現在ではブドウ破砕量5,000t以上の大手生産者36社がワイン生産量の90%を占めている一方、500t以下の小規模ワイナリー数は全体の8割(しかし生産量は3%未満)を占めています。また、近年ナチュラル・ワインの若手生産者が多数登場しています!
オーストラリアのブドウ品種
オーストラリアの代表品種といえば、シラーズ!フランスのローヌ地方ではシラーと呼ばれますが、オーストラリアではシラーズとなります。
シラーズは白・黒ブドウ合わせても栽培面積が最も広いブドウです。
他に栽培されている品種も、馴染みのある国際品種ばかりですね!
オーストラリアのワイン法
「オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)」の食品基準4.5.1(ワイン製造要件)により、アル コール4.5度未満はワインと認められません。また、補糖は不可となっています。
オーストラリアのGI(地理的呼称)制度はEUの原産地呼称制度に比べ、厳格な規定・制約が無い分、栽培・醸造面での自由度が高く、理解が容易です。
GIは最も大きな「State(州)」から、「Zone(地域)」「Region(地区)」「Sub-region(小地区)」まで細分化されています。
酸化防止剤、保存料の表示が義務付けられ、その番号がラベルに記載されます。(この数字が地味によく問われるのでよく覚えておきましょう▶︎亜硫酸:220、ソルビン酸:200、アスコルビン酸(ビタミンC):300)
ワイン生産地域
オーストラリアのワイン産地は6つの州に属しています。
どの州にどの地域が属しているか、よく確認しましょう!
各州についてもひとつずつ見ていきたいと思います。
西オーストラリア州(WA)
ワイン生産量は2%ほどの産地ですが、品質は国内トップクラスの重要な州、西オーストラリア州!
1820年代後半、Swan Valley スワン・ヴァレー周域で英国からの移民によりブドウ栽培が始まったと推定され、1834年、初めてワインが生産されました。
1955年に西オーストラリア州政府がブドウ栽培適性調査を依頼したところ、西オーストラリア州南部一帯がボルドーの気候条件に似てブドウ栽培に好適と報告を受けました。
1966年、西オーストラリア大学の農芸化学者John Gladstones ジョン・グラッドストーンズ博士は、「マーガレット・リヴァー」も栽培好適性があることを発表しました。
西オーストラリア州最古のワイン産地はSwan District スワン・ディストリクトです。暑い地中海性気候ですが、「Fremantle Doctorフリーマントル・ドクター」という海風によって暑さが和らげられています。
その他の主要な産地には、Margaret River マーガレット・リヴァー(最西)、Great Southern グレート・サザン、Geographeジオグラッフ、Peelピールなどがあります。
南オーストラリア州(SA)
南オーストラリア州はオーストラリア大陸の中央に位置しており、オーストラリアワイン生産量の大半を担う、オーストラリア最大のワイン生産州です。ここでオーストラリアの半数近くのワインが生産されています!
1836年頃に最初の移民が入植し、ブドウ園はフィロキセラから完全に守られ、この南オーストラリア州の優位性を保つことにつながりました。また、オーストラリア最古のブドウ樹が現存する州(シラー/シラーズとして世界最古)でもあります。100年以上の古樹が多く存在し、バロッサでは2009年に「古木憲章」が制定され、古木の維持・振興が進められています!
ヴィクトリア州
ヴィクトリア州は州全体がブドウ栽培に適しており、内陸部から沿岸部まで様々な気候・土壌の産地が点在しています。
ヤラ・ヴァレーより北の産地は、シラーズ、カベルネ・ソーヴィニヨンが中心で、ヤラ・ヴァレーより南の産地は、冷涼な産地が多くピノ・ノワールとシャルドネが中心です。
1860年代には「John Bull’s Vineyards (英国民のブドウ畑)」として知られ、同州のワイン生産量、英国向け輸出量が国内最多でした。
1838年にヴィクトリア州で初めてブドウが植えられた地域はYarra Valley ヤラ・ヴァレーです。Mornington Peninsula モーニントン・ペニンシュラはタスマニアと並ぶピノ・ノワールの重要な生産地として存在感が高まっています。
その他の主要産地には、Geelong ジロング (フィロキセラが最初に発見されたエリア)、Goulburn Valley ゴールバーン・ヴァレー、Beechworth ビーチワース、Henty ヘンティー、Rutherglen ラザグレン(大陸性気候、酒精強化ワインの産地)などがあります。
ニュー・サウス・ウェールズ州
ニュー・サウス・ウェールズ州はオーストラリアワイン産業発祥の州です!
ニュー・サウス・ウェールズ州ではブドウ栽培が1790年代にシドニー周辺で始まり、1820年代にハンター・ヴァレーに広がりました。
大手ワイナリーが拠点を置くなど、重要なワイン産地として君臨してきましたが、1990年代後半からは、南オーストラリア州にワイナリー設備を統廃合したり、より冷涼な産地を求めて標高の高い所へブドウ畑を開発する動きが活発になります。
近年、極めて寒冷なキャンベラ・ディストリクトからアロマの豊かなシラーズ生産者が登場しています。
クイーンズランド州
クイーンズランド州は日常消費用ワインのブドウ栽培から始まり、今日では高級ワインのブドウ栽培において急成長を遂げている産地です!
主要産地には、Granite Belt グラニット・ベルト、South Burnett サウス・バーネットがあります。
タスマニア州
冷涼なタスマニア州では、栽培面積の4割以上でピノ・ノワールが育てられています!
タスマニア州には1823年、最初にワイン用ブドウ樹がもたらされました。1840年代には州都ホバート近郊で小規模なブドウ栽培が行われていました、1970年代半ばに入ってから商業用規模のブドウ畑が開かれています。
ワイン産地は島の東側に分布しています。
北の都市ランセストン近郊のテイマー川流域「テイマー・ヴァレー」はワイン生産量の5割を占める最大の産地です。
土壌は、地球上の陸地として非常に古く、ワイン産地のサブソイル(心土/土壌下層部)は、デボン紀、三畳紀、ジュラ紀の火成岩と堆積岩で占められています。最も広い範囲に分布しているのは「ジュラシック・ドレライト(ジュラ紀の粗粒玄武岩)」で、1億7,000万年前に形成されたものだそうです!
酒精強化ワイン
1880年代以降、ワイン造りは辛口のテーブルワインから酒精強化ワインへとシフトしていきます。1930年代~1960年代までは、酒精強化ワインの生産量がワイン全体の70%を占めていました。
主要産地は「バロッサ・ヴァレー(南オーストラリア州)」と「ラザグレン(ヴィクトリア州)」で、以前は勝手にシェリーやポートと名乗った酒精強化ワインを生産していたのですが、現在はそういった名称が使用禁止となって改名しています。
おわりに
今日も学習お疲れ様でした!
ソムリエ試験の範囲は学習してもしても中々終わらず、試験日直前になってもまだまだやり残した箇所がたくさんあるような気がして不安になってしまいますよね・・!わかります。でも、この半年余りで歩んできた道も、振り返ると結構な蓄積ですよね。
私もこのnoteをまとめるのは覚悟していた以上に体験だったので、なんでこんな事始めたんだろ?と思いながら早起きしたり、夜更かししたりしながら毎日何時間も使って更新をしてきました。あと少しが凄く長く感じますが、もう少しで本当に終わり。今までのnoteを見返してみると、不完全なところもたくさん目につきますが、こんなに書いたのか〜!と自分でも自分を労いたくなるような気持ちになります。
試験が終わったら少しは自分を甘やかしてあげたいですね〜!これは、合否に関わらず、全力で頑張った者のみの特権!
プルールではオーストラリアのワインをはじめ、世界各国のワインを取り扱っています。
オンラインショップにはほんの一部のみの掲載なので、ワインをご希望の方はお気軽にこちらまでご相談ください☆
また、よく見直しをしているつもりなのですが、noteの間違いに気がついた方はこっそり教えて頂けるととても助かりますm(_ _)m