Lycoris
今朝も目が覚める
覚めている錯覚なのか
少しわからなくもなる
大切なことが書かれてある
時と命を削り
紡ぎ出される言葉を
ひとつひとつ
頭を動かそうと
部屋を出ると
肌に感じる止まった風は低くて
クーラーで部屋を温めているかのよう
この星は実は寒く冷たくて
ひのひかりでなんとか
生命を維持している
そんなこと
今はいらないことばかりが
湧き出てくる
こゝろの地盤が沈下して
じゅぶじゅぶと
隠してあった罅から
押し出される
色も失った
そんな古い記憶
今を保存するストレージ
その入り口は塞がれてしまって
悪しき記憶は幾重にも
あみを張っている
そこまでかと絶望する程に
絡まりあっていて
その糸口すらはじめの欠片が固まって
握り潰しているままだ
こゝろに彩りを戻してくれる
言葉をひとつひとつ
新しい記憶へ
時の飛沫を手繰り寄せる
いつか見かけた桃いろのリコリス
探しにいった
その蜻蛉は
何を話しかける
まだ早いよ…か
その花は
残る暑さの合間に
この先を予告する
色でした