つくることの喜びに出会えた3ケ月間。PTD受講生×メンター 対談インタビューvol.4
こんにちは、PLAY THE DESIGNERの長島です。PLAY THE DESIGNER(以下、PTD)受講生の皆さんのリアルな声をお届けする“受講生×担当メンター 対談インタビュー”(これまでの記事はこちらからどうぞ)。今回は、PTDの受講を通して「つくる喜び」に触れたという受講生・のんさんと、担当メンター・岡部ちゆきさんとの対談をお届けします!
※メンター・岡部ちゆきさんの個別インタビューはこちら。
■消極的選択だったデザイナーという仕事。面白さに触れ、「ただ綺麗につくるだけ」から脱却したかった
ーーよろしくお願いします!はじめに、のんさんのこれまでのお仕事について聞かせてください。
のん:文系の普通大学を卒業してデザイナーになったのですが、その頃は就職氷河期ということもあり、実はデザイナーは「消極的選択」だったんです。就職することになった制作会社では、見よう見まねでデザインを作って、手を動かしながら学んできました。現在は転職し、事業会社でインハウスデザイナーとして働いています。
ーーデザイナーになってみて、「面白さ」や「大変さ」として感じたのはどんなところでしたか?
のん:面白いなと感じたのは、知識を得るといろいろ出来るようになる部分。勉強したことを試せる瞬間が一番楽しいですね!知識を得て、それを使ってみて、反応をもらって、といったサイクルが回っているのが理想的です。反対に大変なのは、事業会社でステークホルダーが多いこと。そこで共通理解を作れずに折れるケースを目の当たりにすることもあり、合意形成の難しさを感じています。
ーーそんな中で、やはり「デザインをきちんと学ぼう」と考えたのには、どのようなきっかけがあったのでしょうか?
のん:ただ綺麗につくるだけのデザイナーから脱却したいと思ったんです!きちんと学んだことがなかったので、我流でやっては「これでいいのだろうか?」といつも不安ばかりでした。先輩デザイナーもいない環境でずっと独学だったので、体系化することが出来ず、なんとなく綺麗につくるだけで業務を消化しているように感じていました。
また、制作会社では「クライアントの反応」という指標が一つあったので、反応が良ければデザインも正解だったのかなと思えましたが、実際のところそれも「本当のユーザーの反応」ではないなと。自分の中には常に「これであっているのか」と正しさを求める気持ちがあり、それがなかなか解消できずにいました。
そうした中、デザインに対して説明をする場面もどんどん増えてきたので、フィーリングで作るのをやめたいなと考えたのが受講のきっかけです。
◇やってきたことを体系化しアップデートするカリキュラム
のんさんの場合は「新しいことをやる」というより、今までやってきたことのアップデートと、「今まで見えなかったものを見えるようにすること」を意識してカリキュラムを作りました。通常PTDの授業ではスマホUIをベースにしていますが、のんさんの場合は業務領域を考慮して、ブラウザベースで活かせるものも課題に取り込んでいます。
■デザインの疑問点だけでなく、「生き方」の悩みも共有するメンターとのコミュニケーション
ーー授業が始まったのは8月でしたね。初回はどうでしたか?
のん:最初の授業はやっぱり緊張しました!
岡部:今回はブラウザベースの課題もあるということで、前半はツモマーさんと私の2人体制だったんですが、2対1って緊張するよな~と(笑)。
のん:受講前にツモマーさんにカウンセリングして頂いた時に、デザインファイルを見せてもらったんです。そうしたら、自分の全然知らないことがたくさん描かれていて…!「これが情報設計なんだ!」という驚きもあったし、授業でやることのイメージも持てたので、そのツモマーさんが出てきてくれて嬉しかったです。授業中は「天の声の人」になってましたよね(笑)。
ーー授業は毎回どのように進んでいったのですか?
岡部:のんさんは疑問点を事前にまとめてくれるので、それらに答えながら授業を進められたのが印象的でした。私もレビューしやすかったし、疑問点から膨らませて会話やディスカッションが出来たのが素敵だったなと。
のん:言語化が得意ではないので、メモしておこうというのがひとつ。もうひとつは、色々教えてもらうと40分ぐらいすぐに過ぎてしまうので、質問しそびれることがないように。作る過程で分からなかったことは書き留めておくようにしていました。
岡部:事前に疑問点を把握できていると、授業を組み立てやすいんです。わからないところが多ければ、話すポイントを増やしたりも出来る。私にとってもありがたかったですね。
ーー毎週課題に取り組んでもらっていますが、特に難しかった課題はありましたか?
のん:だいたい全部難しかった覚えがあります(苦笑)。1番難しかったのは、情報設計に関する部分です。大抵日曜日を授業日にしていて、月曜日はレビュー個所の直しをします。そのため、新しい課題に着手するのは翌火曜日から。岡部さんが本をいろいろ教えてくれるので、すぐにAmazonで買って、到着を待っている間にデザインを作って、本が届いたら読んでみて質問をして…という感じです。
ーーどんな本を買いましたか?
のん:『ソフトウェア・ファースト』『ユーザビリティエンジニアリング』『Design Systems ―デジタルプロダクトのためのデザインシステム実践ガイド』などで、どれもすごく勉強になりました!
岡部:のんさんは能動的に知識を得ようという姿勢があり、そもそも「知ること」が好きな方。なので、会話の中で「こういう知識を得たい」と言っていたものや、興味を持ちそうな本などを沼にハマりそうなセレクトでご紹介していきました(笑)。
のん:見事に沼にハマりました(笑)。
岡部:あと、「迷うことが多い」という話の流れから、羽生善治名人の『決断力』という本も紹介しましたよね(笑)。デザインの過程においても、正解を探し、これでいくと決めた後「どうそっちにもって行く?」という局面はとても多いです。色、形、その他にも要素があるので迷うことも多いですが、そういう時のために決断力を学ぼう!という話をしたんですよね。『決断力』には、汎用的にロジカルな生活を送るために必要なことが書いてあるので、非常におすすめです!
のん:「生き方の参考になるよ!」って言われたら、買っちゃいますよね(笑)。
■「戻る」ことで納得度を上げた最終課題
ーー最後の4週間は最終課題に取り組みましたね。どのようなものを制作したのか、教えてください!
のん:「本の内容を簡単に共有できるウェブサービス」をテーマに制作しました。コロナ渦でのコミュニケーションや気持ちの共有に課題を感じ、気持ちを発散できるようなものをと考え、今回テーマに設定しました。実際、デザインのあらゆるフローを組み込んでのデザイン制作を行うのは初めてでした!
最終課題で制作した設計画面
岡部:PTDは、前半の授業ではアウトプットからの逆算、つまり表層から戦略のほうへと遡っていく形で進んでいきます。それが最終課題では、今度は戦略から表層へという向きに進んでいくんです。ふわふわな状態から始めてもらうわけですが、その中でこれまで学んだことを活かしてもらえたなという感触がありました。
最初はのんさんの作りたいものを起点として、プロダクトの仕様となるドキュメントやペルソナを立ててきてもらいました。それらを画面に落としていく中で「どう表示させようか?」「どう閲覧してもらおうか?」などを細かく話して、最終的に絵や色をつけてもらいました。
実は、表層の部分は最終授業の一つ前の段階と最終的なアウトプットで、トンマナががらっと変わっているんです。前のパターンもグラデーションが綺麗で良かったのですが、ペルソナからトンマナを考えて、よりパキッとした見やすいデザインに変えてきてくれたんです。
のん:もともと、表層については最終課題でしっかり取り組もうと思っていました。ただ、4週のうち2週目をすぎたあたりで、ちょっとした行き詰まり感が出てきてしまったんです。そこで、きちんと作っていなかったペルソナをつくり、もう一度考え直してみることにしました。新しくペルソナを定義してみると、気恥ずかしさがない見た目のほうがいいんじゃないかということに気付き、最後にトンマナを変更しました。
トンマナを変更し、納得度のあがったデザイン画面
こういう風に「戻る(=考え直す)」ことって、自分の中ではすごい抵抗があったんです。でも岡部さんも「いったりきたりするのは悪いことではない。それを繰り返すと納得感が生まれるよ」とおっしゃってくださって。それで「戻る」というフローを挟んでみたんですが、習ったことも復習できたし、プロダクトとしても精度があがったように感じました。
ーー「戻る」ことに抵抗を感じるデザイナーさんは多いかもしれないですね。
のん:そうなんです、今までかなり抵抗を感じていました。何かまずいことが起きるのではないか…と(笑)。でも、「戻ってもいい」と思えたことで、デザインへの臨み方も変わりました!改良を重ねれば、自分としてもより納得できますよね。
◇「戻る」ことは悪くない
実際のプロジェクトでもよくあることです。ジャーニーマップやペルソナなど、1か所変えるだけで様々な部分で違和感が出てきたり、アウトプットを変えないといけなくなったり、条件が変わって成立しない部分が出てくるもの。全部ちょっとづつ壊したりして、元通り以上のものにするといったテコ入れ修正は頻繁におきますね。
僕は、アウトプットに関しても100%というものは存在しないと考えます。まずはいったん形にして、どの方向に転ぶ可能性があるかを考慮して作っていくことも重要だと感じています。
■つくることの喜びに出会えたPTDでの3ケ月
ーーさきほど本の紹介のやりとりについてお聞きしましたが、他に授業の中で印象的だったエピソードはありますか?
のん:岡部さんは本当に知識量がすごいんです!そのことに甘えて、自分でちゃんと言語化せずに、曖昧な質問をしてしまうこともありました。そんな時には、岡部さんが「それはなんじゃろか?」と言ってくださるので、自分も「あ、これ言語化出来てない!」って気づけるんです。そのおかげで「デザインについて、一番わかりやすく伝える練習」が出来ました。同僚同士ではなあなあになってしまうようなところも、授業だと「わからないところを明確にする」「わからないところを的確に伝える」という訓練になりました!
岡部:私は毎回授業で「作った意図を教えてください」という時間を設けるようにしています。それは、「言語化が苦手なんです」とおっしゃる生徒さんが多いから。でも、一回じっくり伝わるまで話せる時間をつくれば、「こういう風に伝えれば私岡部が「なんじゃろか?」と言わない」伝え方を会得してくれるはず。このスタンスがいい訓練になっていれば嬉しいですね!
のん:「なんじゃろか?」って言われたら、「しまった!」って気づけるんですよね(笑)。
ーー確かに、「なんじゃろか?」すごく絶妙な言いまわしですね(笑)。でも、そうして手を動かすデザインだけでなく、コミュニケーションの部分でも実践的な訓練になっているのは嬉しいです。のんさんは今後、どのようなデザイナーを目指していますか?
のん:「ただ綺麗に作る」だけのデザイナーでしたが、今後は、PTDで学んだユーザビリティや情報設計をデザインに取り入れていきたいです。情報設計部分だと、すぐ仕事で役立てられないかもしれませんが、副業なども含めて柔軟にアウトプットしていきたいですね。
PTDを受講した3ケ月の変化として、つくることに喜びを感じられるようになったんです!今後もまた、「納得してプロダクトをつくった!」という喜びが得られるように、頑張ります!
岡部:のんさんは「自信がない」とずっとおっしゃっていましたが、知らないことも沢山あった中、ひとつひとつの授業をちゃんと振り返り、最終課題を作りこんでアウトプットしてくれたのは本当にすごいこと。もっと自信を持って回数をこなしていった先で、またどこかで今度はお仕事としてご一緒出来たらいいなあと思ってます。楽しみにまってます!
のん:こんなにちゃんと続けられたのは、岡部さんと、ツモマーさんの天の声のおかげ。伸び悩んでいるデザイナーや中堅デザイナーが知識をアップデートするのに、本当いい機会になったと思います。最後までやりきれてよかったです!
Interview&Text:Shiho Nagashima
※2021/3/1追記: 新規受付は停止いたしました。
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