『The 1975・Notes On A Conditional Form』アルバムレビュー【音楽】
**The 1975 **
**Notes On A Conditional Form **
待ちに待ったThe 1975の超大作
Notes On A Conditional Formが遂にやってきました。
正直言うとこのアルバムを聞くのが怖かったです。
なぜならば、ずっと楽しみにしてきたものがなくなってしまう気がしたからです。
例えるなら、お金を貯めて買った物が届いてしまうような感覚です。
**このアルバムを一言で表すなら、 **
音楽史に残る現代版ロックオペラ
です。
もっとわかりやすく言うと
**60年代から続く音楽をぎゅーっと凝縮して **
**それを更に抽出し **
**THE1975によって描いた **
**音楽史に残る超大作です。 **
**厳密にいうとロックオペラではありません。 **
**ただ完璧にオーガナイズされた曲順で **
**環境問題・社会問題・ジェンダー含め **
オープニングからエンディングまでのプロセスで
聴き手に人生を聴いているかのような気分にさせてくれるという意味では
オペラと言っても過言ではないと思います。
そんなthe1975の22曲に渡る
Notes On A Conditional Formをどんどんレビューしていければと思います!
1曲目
**「THE1975」 **
今作もTHE1975という曲で開幕します。
これには意図があり、
マティー曰く
日本の昔の任天堂やセガのPSのゲームのオープニングには
凄くプレイヤーを引きつける効果音が使われていて、
それを一曲目のオープニングとして取り入れたとの意図が込められているとのことです。
今作は環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんの環境啓蒙で始まり
どれだけ環境問題が深刻で、それをどう私たちが変えていけるかをグレタさんが提示した後に
「目を覚ませ」「目を覚ませ」「目を覚ませ」
と2曲目の
「people」
に突入していくんですけど
この流れが凄すぎて本当に鳥肌が立ちました。
曲調もこれまでのThe 1975にはないパンクロックで
とても殺気立っていて
もう1000回しか朝は訪れないと1曲目の提唱の伏線を回収し
社会的に弱者な人たちを追い込む社会にアンチテーゼを表明すると共に
それをアルバムのテーマとして最初の曲に組み込んできます。
「people」が終わり
3曲目の
**「THE END」(Music For Cars) **
は
曲のインターバルとしてオーケストレーションのような伴奏が入るんですが
どこか切なく
それはアルバムタイトルにある通り一つの物語にピリオドを打つ意味が込められているように感じました。
このインターバルは曲と曲の間の所々に入るのですが、
インターバルが入るおかげで
一度アルバムのテーマを考える時間を与えられているような気分になり
同時に心地よくディズニーのオーケストラに浸っている気分になります。
4曲目
**「frail state of mind」 **
Peopleで怒りを唱えた後に
この曲では人間がもつ不安であったり強迫観念が歌われます。
このギャップはさながら
日本でも問題になっている
**引きこもりの人達の心の中を歌ったような曲は **
**マティーヒーリーの持ち合わせている **
**人としての多面性を音楽として浮かび上がらせています。 **
**多くの人々がこのバンドに惹かれるのは、 **
**単に彼らの音楽が素晴らしいだけではなく **
**彼らの音楽が開放する人間としての多面性 **
**時に怒り・時に笑い・時には鬱になる **
**それはマティーの歌い方にも **
**ビジュアルにも現れます。 **
**時にはスーパークールなパンクで **
**時に引きこもりの男の子様になる **
**彼の人間としての魅力に自分を投影したくなる。 **
**そんな魅力が彼らの音楽と交わった時に **
**聴き手は救われた様な気分になります。 **
6曲目
**「The birthday party」 **
マティー自身2ndアルバムを完成した時点で薬物中毒になっており、
マインドシャワーという仮想空間に自分を送り込み
デジタルデットクスを受けるセラピー療法があるのですが、
この曲はその仮想空間の中での出来事を歌っており
この曲でも沢山の社会問題が取り上げられています。
良い曲ではあるのですが、個人的にはどうしても思い入れを入れることが出来ません。
7曲目
**「Yeah I know」 **
ではRadioheadのKid A
を想起させるデジタル音で
聴いているだけで
謎な気分になります。
どこか広く暗いクラブでネオンを浴びながら
一人体育座りをしている様な気分に。
9曲目
**「 Jesus Christ 2005 God Bless America 」 **
アルバムで一番好きな曲です。
アルバム数少ないのアコギトラックで
ゲイとレズビアンの男の子と女の子が
自分自身のセクシャリティを声に出せないことを歌っていて
憂鬱な気持ちがとにかく美しい歌詞とサウンドに乗って聞こえます。
I'm searching for planes in the sea, and that's irony
Soil just needs water to be, and a seed
So if we turn into a tree, can I be the leaves?
休日に何も約束がなく木漏れ日に浴びながら
独りでもの思いに老ける時に
僕の隣に寄り添ってくれる曲です。
11曲目
**「 Me & You Together Song 」 **
この曲に関しては過去の動画にて
取り上げさせて頂いたので概要欄に貼っておくので是非チェックして頂けると嬉しいです。
12曲目
**「 I Think There’s Something You Should Know 」 **
このアルバムで一番アディクティブな曲だと思います。
この曲もKid Aからどこかインスパイアを受けていると思っていて
ただただ I Think There’s Something You Should Knowという歌詞が
強烈に頭の中で聴き終わった後に聞こえてくると思います。
この曲を皮切りに
13・14・15曲目と
非常にロボティックな声とダンスデジタルサウンドが展開されていきます。
この曲を含めこのアルバムでは凄く曲どうしの関連性が高く
同じメロディーを違うチューンを使い表現していることが多く
そう言った意味でもこのアルバムはこれまでの音楽とは一線を隠していると思います。
16曲目
**「 If You’re Too Shy (Let Me Know) 」 **
この曲はこのアルバムのメインチューンです。
1stでいうchocolate
2ndでいうthe sound
3rdでいうits not living
に当たる曲になります。
この曲に関しても過去の動画にて取り上げさせて頂いたの是非チェックして頂けると嬉しいです。
17曲目
**「 Playing on My Mind 」 **
この曲もアコギが使用されている安らぐ音楽です。
サウンドはブリッジの使い方等々
前作のshe lays downという曲によく似ていて
But I won’t get clothes online 'cause I get worried about the fit
But that rule don’t apply concerning my relationships
凄くマティーらしいと思いました。
僕は個人的に大好きな曲です。
21曲目
**「Don’t worry」 **
この曲でいよいよアルバムはクライマックスを迎え
22曲目
**「Guys」 **
**これまでのThe 1975の全てが詰まった曲です。 **
**バンド結成して17年以上同じメンバーで続けてきて **
**メンバーに愛を伝える曲。 **
**それだけでとても尊く **
**MVの彼らの奇跡は見ているだけで涙ぐみますし、 **
**歌詞・メロディーとっても只々美しいです。 **
**言葉が出ないくらい美しいです。 **
**大切な人の存在とその尊さを再認識させてくれる曲になっています。 **
**1stのgirlの対比になっているとは個人的には思っていませんが、 **
**アルバムをこの曲でおわらすということは、 **
**一つのバンドとしての区切りをつけ **
**新たな形で再スタート切ることを暗示している様にも聞こえました。 **
**全体的にみると **
**これまでのアルバムは彼らの個人的なことを歌っていたことが多かったのですが、 **
**その観点でみるととてもフラットでジェネラルなアルバムでした。 **
**それでいてコンセプチュアルで様々な要素が多面的に重なり合い **
**美しさを保ったまま **
**一つのアルバムという形式を持って **
**形成された絵画の様なアルバムでした。 **
**Music for carプロジェクトは一つの区切りを終えましたが、 **
**これは彼らの始まりに過ぎないのかもしれません。 **