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DOSUKOI DONUTS 毛柴有喜さん【すみだのひとと、ひととなり vol.1】
墨田区にいる、みんなが気になる”あの人”にインタビュー。普段見えない彼/彼女の一面を明らかにしてしまおうというコーナーです。第1回目はDOSUKOI DONUTSの生みの親、毛柴さんに突撃しました!
コーティングされたドーナツの胴体に、むっちりした手足で四股を踏む力士のキャラクター。かわいらしく微笑むが、不思議な奇妙さも併せ持つ。その名も「DOSUKOI DONUTS(どすこいドーナツ)」。ステッカーや帽子、Tシャツなどのグッズもあり、墨田区でここ最近話題になっている。
このキャラクターの生みの親こそ、今回のインタビュー相手である毛柴さんだ。
どすこいドーナツのステッカー(上)
グッズ販売イベントでの1枚。写真左手前が毛柴さん(下)
墨田区に引っ越し「まぼろし空間ユブネ」を構える
以前は世田谷区に住んでいた毛柴さん。時々、友人が住んでいる「あをば荘」に遊びにきていた。その角部屋が空いたタイミングで、勢いでお引っ越し。それが4年前のことだ。そしてここで一緒に暮らす同居人が、墨田区で出会った人を紹介してくれるようになり、友達の輪が広がり始めたのだそう。
「この場所はもともと長屋でお風呂がありませんでした。以前の入居者がお風呂を設置したようで、物件唯一のユブネがあります。このスペースは日常的に開けているわけでもないので、言ってみればまぼろし空間。藤子不二雄が言いそうじゃないですか。何か作品の展示などをするときはそういう意図も入れて、『まぼろし空間ユブネ』と呼ぶことにしました。」
墨田区要素が入ったユニークなプロジェクトたち
毛柴さんは、引っ越してきてから数々のプロジェクトを手がけている。おでんは現代アートか?を問いかける「おでん展」(2016)、辞書をランダムにめくり、目に入った言葉を書題に書く「書道の衝動」(2017)、灯油缶を持って街中をランウェイのように歩くルックブック「灯油コレクション」(2017)など、ユニークなものばかりだ。
墨田区に来てから手がけたプロジェクトの数々。
おでん展(左上)、書道の衝動(右上)、灯油コレクション(下)
もちろんこれらは「仕事」ではない。墨田区で出会った人と、話をする中で湧き上がったアイディアを形にしてきたものだ。
例えば、架空のラブホテルをテーマにした「IMAGINARY LOVE MOTELS展」(2019)は、架空のホテルのネオン(ネオンに見立てたトートバッグ)やルームキーを作り、ホテルに向かう道中にカーステレオから流れるカセットテープとともに展示した企画。ルームキーに記されたホテル名は、街の気になる名前をピックアップしたそう。また部屋番号は「404」、つまり「not found(=存在しない部屋)」だ。この展示は、トラックメーカーsoshi_takedaさんとのコラボ。soshiさんと飲み会で遭遇し、この企画のアイディアが浮かんだ時に「一緒にやろう」と声をかけたことがきっかけになっている。
展示されたカセットテープ(左)とホテルのルームキー(右)
PLAYLIST vol.1で紹介した「牡蠣と妄想はハネムーン」ともコラボ!横川に住む真鍮職人のねずみさん(トラックメイクを担当)と共作した。
次々生み出されるプロジェクト。その理由は?
「僕はもともと人付き合いが苦手で、何か武器を持っていないとと思ってて。だから、ものづくりをしているんです。」と話す毛柴さん。
誰かと出会って、盛り上がってアイディアが生まれる。その熱が冷めないうちに形にしていく。これが毛柴さんなりの関係性の深め方なのだ。
「相手に「何かしたいね」って言われたら一旦受け止める。極力、その意見に応えるようにしているんです。そして、遊びのプロジェクトが、それぞれつながるように、布石みたいなものを置いています。そうやって繋がりをつめこんでいくのが楽しいんですよね。」
冒頭のどすこいドーナツは、元々アパレルをやっている友人に頼まれてつくったキャラクター。ここから派生した「プレスリードーナツ」は靴下として今販売されている。伏線のように張り巡らされた繋がりは、毛柴さんの墨田区でのネットワークそのものなのだ。
プレスリードーナツの靴下(上)、屏風やキャップにまで広がるどすこいドーナツグッズ(下)
墨田区はちょっと厚かましいけど水が合う
「やっぱり、墨田区は水が合ってるなと思いますね。」
ここではちょっと厚かましいぐらいの距離感で、周りが近寄って来てくれるから動きやすいのだそう。
「『動いてたら、ミラクルにぶつかる』っていうのが、笑福亭鶴瓶に教わったことなんですけど。墨田にいると、変な人や変なものに遭遇することも多いし、違和感を感じることも多い。けどこういうズレに対して、墨田の人の視線もやさしいし、逆に良いグルーヴ感を生んでいる。その辺を放任する姿勢が街の個性を作っていると思うんです。整備されているきれいな街も素敵だけど、こういう部分が墨田区の良さだと思う。」
「本業はデザイナーです。仕事はやっぱりビジネスなので、人との繋がりが大事にされていない部分もあって。偉業を成し遂げるために余計なこと(人との繋がりなど)を放棄する方針なのかもしれないけど、僕にとっては人との繋がりとか、コミュニケーション上で何か生まれていくことの方が大事なんですよね。そのやりとりから生まれたものが創作のヒントになることが大半です。そうして生まれたものが、エピソードも込みで人から人へリレーのようにつながっていくのが、ほんとに面白いなって思ってます。」
運命的な引っ越しを経て、人とのコミュニケーションから次々にうまれる毛柴さんのプロジェクトは、これからもっと増えていきそうだ。
毛柴さんが新たに手がけるラジオ番組。この裏側にも、面白い出会いとミラクルなエピソードが潜んでいる。
[毛柴さんの"PLAYLIST"]
近所まで旅にでる(spotify)
[プロジェクトはここからチェック!]
・dosukoi donuts
・shoe mean duck
・sheets of sound
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写真提供:毛柴有喜
取材執筆:及川静香
バナーデザイン:おおのあやか・田川貢