インプロとアドリブの違い
先日、友人のインプロバイザーである堀光希くんがこんなツイートをしていました。
僕はこの考え方に「真理だ!」と思いました!
そしてアドリブ力が必要な人と、インプロ力が必要な人が分かれるような気がしました。
今日はその気付きと思考の展開について記します。
イマーシブシアターに必要な即興力は「アドリブ力」
最近流行っているイマーシブシアター。お台場にも常設の施設が出来ましたね。
いわゆる観客参加型演劇で、演者は観客とコミュニケーションを取ったり、観客を劇世界にリードする存在となります。
このイマーシブシアターに参加している演者(イマーシブ俳優とでも呼びましょうか)には、当然即興力が求められますが、ここで必要なのはアドリブ力だと思います。
なぜなら、物語の大筋は決まっており、何かトラブルが起きた時にはそこに修正しなければいけないからです。
インプロでは、むしろそのトラブルを活かして、新たなストーリーを展開させたりします。しかし、ここでそれは必要ありません、というかやっちゃダメなことです(笑)
インプロ力はアドリブ力を包括する
ここで言っておきたいことの一つは、インプロ力がアドリブ力を含むということです。
どちらも未知に対応する力になるので、大まかに見ると必要な基礎力は同じなのですが、アドリブが「元の展開に戻す」という方向に舵を切るのに対し、インプロでは「様々な展開に行ける」ように開かれている必要があります。
なのでインプロをやってる人なら、その「様々な展開」の中の一つとして「元の展開」を選ぶことが出来ますが、逆は難しいと思います。
アドリブ=インプロだと考えている人は頭で展開を考える
アドリブをメインにやってる人って誰だって話ですが、アドリブとインプロを同じものだと考えてる人がたまにいます。
しかし、先述した通り、アドリブとインプロは別物です。
アドリブの感覚でインプロをやると、大抵頭の中で先の展開を考えてしまいます。なぜならアドリブする時は、行くべき先があるからです。
このことをインプロの世界では「ブリッジング」と言います。頭の中で至りたい展開や結末を予測して、そこに向かうために演じることです。
アドリブではやるべきことなのですが、インプロではやらない方がいいことになります。
インプロはどんな人に必要なのか?
じゃあ、あらかじめ展開が脚本や構成によって用意されているものを演じる人にとって、いわゆる俳優さん(イマーシブに限らず)にとって、インプロをやることの意味って何なのでしょう?
アドリブ的な技術を求めているのだとしたら、確かにインプロはやる必要ないことかもしれません。
しかし、インプロは先も言ったように、「様々な展開に行けるように開かれている」必要がありますし、そうなれるようにトレーニングしていきます。
つまり技術ではなく、在り方のトレーニングなのです。
学ぶことで自分の在り方がどう変わっていくのかを簡潔にまとめると
・どんなことが起こっても大丈夫だと思えるようになる…(未知に対する)不安・恐れ→安心・喜び
・慣れてる道か新しい道かなら、新しい道を選べるようになる…安定→変化
・自分が出したアイデア、選んだ道を信じられるようになる…自己不信→自己信頼
・他者が出したアイデアに対して、肯定的かつ協力的になれる…ネガティブ→ポジティブ
・今ここで起きていることに気付けるようになる…内向→外向
…などです。
これを見ると、インプロがGoogleやPixarなど、世界的なクリエイティブ企業で研修として扱われている理由がわかると思います。
俳優云々以前に、正解が一つとは限らない世界を生きる現代人にとって必要なジャンルなのではないかと思います。
まとめ
インプロをやることでアドリブ力が身に付くことは大いにあります。
ですが、それに限った話ではなく、インプロではもっと大きなものを扱います。
それぞれの人としての在り方、思想、哲学にまで介入し得るものです。
ただ技術だけ身に付けるためなら、ひょっとしたらインプロに触れず、現場をたくさん踏めばいいのかもしれません。
しかし、そこまで興味のある人だったら、一度インプロを体験してみることもおすすめします。
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