田島環さんのこと vol.3[五味ウララの場合]
環さん初のオンライン・ワークショップ「⭐️イメージ・プリズム〜イメージに光を、そしてバラバラに。」(通称イメプリ)は、ゆりさんくじらちゃん同様、純粋にすごく楽しい時間でした。ふだんの私の業務は、ワークショップ事業部の事務方でつねに研究所内とWS参加者をサポートする意識が働いてるので、接客業 として私は捉えていたりします。対面で話すことができればわりと簡単に伝え合えることも、リモートだとメールやSNSなど慎重に文字言語と思考を使わなくてはならない時間が倍増。気軽な外出も憚られ、リモートワーク中心で在宅時間が長い日々が続くうちに、本来は右脳的(感覚的)な私はPCを閉じても仕事にまつわるエトセトラの言葉で頭の中がいっぱいでリフレッシュもできず疲れきっていた頃、イメプリがスタートしました。
そんな状態の私にとって、環さんのワークショップは自分を取り戻せる癒しとプレイフルな時間でしかありませんでした!言葉や思考を挟まずに作品をつくることだけに没頭できたからです。こう書いてしまっていいのか分かりませんが、、、事務局(仕事)としてではなく完全に五味ウララとして楽しんで参加しちゃってましたね 笑。美術が好きというのもあるのですが、私がわたしとして参加できた大きな要因は、環さんのファシリテーションにあったと思います。
環さんのオンライン・ワークショップが他のひとと決定的に違うのは、チェックインをしないことです。多くのファシリテーターは場をひらく一番最初に、今日はどんな1日でしたか?とか、今どんな調子ですか?と投げかけて、参加者全員にひとことふたこと話してもらい、全員が場に対して何となくつながりみたいなものを感じてからワークを始めます。それとは対照的に、環さんは時間になったらいきなりワークに入ります。なので参加者は、当日何人集まっていようが、他のひとがどんな面持ちで参加していようが気にすることなくすぐに自分だけの作業に入ることができるのです。事務方の私も、出欠さえ把握できればあとは参加者に気を使わず、みんなと同じように自宅で黙々と作業に没頭することができたのは本当にありがたかったのです。
そのときは分からなかったけれど、今になって考えてみるとこれは環さんの意図的な戦略だったのだと気づきました。というのは、ゆりさんの投稿のファシ講でのひとコマについてこう書いてあったからです。(私はそのとき不在でした)
オンラインのアーツ・ファシリテーター養成講座で、特別ゲストとしてお呼びした時のことです。絵の作業を体験する前に、「まず一分間目を閉じてください」と指示をされました。今までのたまきさんの現場では経験したことのないことだったのでとても印象に残っており、ふりかえりの時間で、そのことを聴いてみました。すると、
「始める前に自分の内側に集中して欲しかったんです。チェックインで和気あいあいしたいい雰囲気だったからこそ、一度、自分の内側に立つというスタートをしてほしくて」
ときっぱり言われました。
納得です!
そのおかげで、すぐにワークに集中することができていたんですね。
ワークショップ前半4回は、筆を使って絵を描くようなことではなく、オートマチック技法という偶然にできる線や色の表現を楽しむものだったので、環さんの声による作業指示に耳を傾けながら言われるままに絵の具の付いたビー玉を紙の上にコロコロころがしたり、ある時は折り紙をチョキチョキ切って貼ってみたり。毎回同じ作業をくり返してある程度の数のものを作っていたので、頭を使う方向からどんどん無心に、そして童心に返って(でも数をこなしていくうちに、偶然の美しさから少し作為的になって偶然を装ったものを作りそうになって、いかんいかん!と思考を振り払い、禅とか瞑想とかのような境地になっていくのがまた面白かったです)作業をしていました。
自己意識のコントロールの利かないことにゆだねた結果、偶然生まれたものの美しさと、二度と同じ表現を再現することができない無二のものが生まれるおもしろさに取り憑かれて、その日のワークショップが終わってあとも、日付が変わるまでひとりで黙々と作業し続けていたこともしばしばでした。後半のワークも、いろいろと自分で試しながら、そうするとどうなる?こうしてみるとどう変わる?というような実験に近いものだったので、とにかくクリエイティブで私にとっては生き返るような心躍る時間でした。今もつくったものを窓に貼って味わっています。
またその時間がやってくると思うとワクワクします。自分ひとりでそういう時間を取ろうと思ってもなかなかできないものですしね。それに、他の参加者の作品を見るのもすごく面白いです!環さんから同じ指示を受けて作業しているのに、他のひとのは自分がつくったものとまったく違う出来栄えの作品だったりするので、すごく興味をそそられます。そうするとなんだか自分のが色褪せて見えてきて「ああいうふうなのを作りたい」などという小賢しい考えが頭をよぎったりするところがオトナの嫌らしい部分だなと思ったり。。。上手/ヘタなんていうのはオトナが作り出した概念で、アートは否定も批判もせず、まずはただおもしろがって体験してみるだけでいいのだ!という、とてもシンプルなことに気づかせてもらえた気がします。(上達というのはまた別のステージです。)
こういうふうに意識化して言語化して振り返ってみると、絵をつくっている自分のことばかり思い出され、そこにファシリテーターの環さんの存在がうすいように感じられるかもしれません。でもそれこそが環さんのファシリテーターとしてのすごさだと思います。いつの間にかやるべきことだけに誘導されている感!!参加者はあたかも自分が考えて素晴らしいものを作っていると錯覚してしまう……。こういうファシリテーションは、簡単そうで実に難しいことだと思います。
是非多くのひとに環さんの絵画ワークを体験してもらいたく、ただいま4月3日(日)に中目黒で対面ワークショップを絶賛企画中です!近日中にお知らせできると思うので乞うご期待ください(急に事務局じみてみました)
それから、ちょうど今、上野にある櫻木画廊さんで環さんの個展が開催中だそうです。環さんの素敵な作品に触れてみることもおすすめします。
https://www.instagram.com/tamakitajima/
田島 環 展
aquaworks Circle
2022年2月16日(水)〜27日(日)
11:00-18:30(最終日17:30まで)
櫻木画廊にて開催中
(五味ウララ)