【WSフェス2024・体験記】「笑うカドには福来る〜即興入門編〜」有起のふりかえり
ワークショップ「笑うカドには福来る - 即興表現 入門 -」のエントリーファシリテーター L7 のメンバー有起さんによる体験記です。
今回フェスに参加した事は、想像以上に自分の中で得たものが大きかった。
振り返りと共に、参加までの経緯も記したいと思う。
四半世紀以上前に出逢った仲間、ウララから今年のフェスのお誘いがあったのは、2024年4月の三軒茶屋にある星乃珈琲でお喋りをしていた時だった。
私たちはプレイバックシアター実践リーダー養成プロジェクト第7期生(以下L7)である。L7は実践課題がまだ未了の為、全員卒業ができていない。今回のワークショップフェスティバルにエントリーすることで、晴れて「卒業」にならないかね???なんて笑いながら話していた。
そして時は過ぎ7月。ウララからの連絡で一緒にフェスに参加しない?との現実的な話が舞い込んできた。いつもなら「私にできるのか?大丈夫なのか?いや…できる???」と直ぐに尻込みしてしまうのだが、ウララと一緒であれば勇気を出してやってみたい!と思った。そして、4月に話していた通り、L7のおぐっちゃんとむらっちを含む合計4人のファシリテーターで参加する事となった。
2019年9月21日始まったL7はコロナの影響により通常開催が難しい時を経て、実践課題を残すのみとなってからは集まる機会は無くなっていた。それから約3年間、私はプレイバックシアターやそれにまつわる物事からは遥か彼方の遠ざかった生活をしており、ファシリテーターとはなんぞや?L7では「コンダクター」との呼び方だった…などなど、記憶を呼び起こすのに多少の時間を要するも、L7の4人であーだこーだと言いながら人前で何かをする事の感覚を思い出そうとしていた。
ワークショップ(以下WS)の内容はウララが作った叩き台を元に、それぞれが思い思いの考えや今までの経験や知識で得たものを入れ込む形で出来上がっていった。タイトルの「笑う門には福来る」は、内容も何も思い浮かばない私ではあったが、なぜかこの言葉が閃き、めちゃくちゃワクワクしながらタイトル提案をした。誰しもが自分の世界で生きている中で苦しいことや辛いことがある。このWSの時間は笑って笑顔で過ごす事で参加者が「なんか、わたし、大丈夫かも?」って思ってもらえたら…実生活を離れた場所でそんな風に感じる時間は、生きる上で大切だな…との想いがある。私の中では思い入れのあるタイトルとなった。また、「門」を「カド」と表記する事や「門」を「入門」と掛け合わせる…など細部に渡って、メンバーのこだわり?が入っているのも気に入っている。
4人という人数と住んでいる場所や各々の仕事も様々なので、主にLINEやzoomにて打ち合わせを行なった。
「やると決まったら妥協はしたくない。」4人全員が言葉にせずとも同じ思いで、同じ方向を向いて作り込んだ様に思う。まずは対面で会って近況報告会。そして内容を詰めるために全員で集まれる稽古日を1日半取った。また、自分たちのWSを組み立てるにあたり、見えてくるものや刺激をもらうため、むらっちとおぐっちゃんがパフォーマンスをしている「らしんばん」の稽古に参加したことも貴重な経験となった。
ざっくりと内容は決まっていた。しかし、本番前日の丸一日の稽古では、4人の集中力と本番への想いが炸裂し、参加者の気持ちの流れをどの様に作り、感情をスムーズに出していくにはどんなワークをどの様に進行していくのがいいのか、それを誰がどの様にファシリテーションをしていくのか?そして、L7としてパフォーマンスをしていくことで、参加者が自らの意思でパフォーマンスをしたくなる様な流れを作ってみるのはどうだろうか?などなど、一人一人が思うこと、良いと思うことを言葉にし、何度も繰り返し、試し、丁寧に作り込む事で当初の内容から大きく変更した部分もありつつ細かい部分がブラッシュアップされた。
本番当日、緊張はあったが4人でWSを進行していく為「一人でなんとかしなければいけない」という重圧は分散されていたので、WSのテーマに掲げていた「失敗は怖くない」「失敗を恐れない」気持ちを自分にも掲げて始めることができた。1時間半という限られた時間の中、自分中心で行うワーク(体の緊張をほぐすウォーミングアップやほいゲーム)は、時間の経過を気にし過ぎるあまり気持ちが焦ってしまい、参加者への説明があやふやになってしまった所は多々あった。しかし、ベテランの方々が多く参加している事もあり、自分の至らない部分は目立つ事なく進行していった様に思う。これが、初見で全く知らない参加者ばかりのWSであれば、心穏やかに進行することは難しかったのではないだろうか。参加者がスムーズにワークを行うためには、説明の仕方や説明の順番、自分の動きなどはもっと慎重に丁寧に作り込まないと、参加者自身が混乱してワークに到達できず、何がなんだか分からないうちにワークが終わり、この時間ってなんだったの?と思わせてしまう可能性があったと思う。
メインワークの「動く彫刻」では自らパフォーマンスとして前に立った。緊張して頭が真っ白になる感覚は否めず、自分の中にある想像力の乏しさも改めて痛感した時だった。L7を受けていた時も大昔に即興を学んできた時も、はたまた日々の生活の中でも想像力を広げられない自分に失望してきた。今回のWSのテーマである「失敗を恐れない」気持ちを奮起しつつも、うまくその場を逃げ切ったように思う。それは、自分への課題はいつになっても乗り越えたいと思わせる事象が起こり、何度でも試練として私の元にやってくることを痛感した。今まで回避してきた(逃げ切ってきた)自分への課題が次々と出てくる時間であった。
今回のWSをファシリテーターとして参加して思う事は、L7メンバーと一緒に行ったからこそ大きな挫折を味わう事なく、再度学び直したいと思うことができ、前を向いて自分の人生と向き合うきっかけを貰えたと思う。そして、参加者の皆さんの優しさや瞬発力や人間力に触れることができた時間は、必要以上に自己嫌悪や自信喪失に繋がらなかった環境であった。参加者の皆様、スタッフの方、全ての方に心より感謝したい。
WSを終えて思う事は、私の感覚でいうと、ウララが画用紙に書いてくれたラフ画にそれぞれが思う筆やペンやスプレーなどで、思い思いの色や手法で、一人一人が全体のバランスをみながら共同で一枚の作品に仕上げていき、各々がその一枚の作品に手応えを感じつつ作品発表に挑む。みたいな感覚であった。そしてこの振り返りを書く際、L7のファイルをパラパラとめくっていた時に自分の論文が目に留まった。そこにはL7メンバーについて『「わたし」と共通言語で語れる仲間に出会えていた』と書かれていた。今回も正しくその通りで、それはL7で学んでいた時間だけが「仲間」ではなく、「仲間」として5年前から歩みを進めていたのだなぁ…と何とも感慨深く、改めて仲間の大切さを感じた。
ファシリテーターとしての自分がどうだったとか、内容についての考察以前に、まずは人前に立って何かをやることが私にとって大きな壁であり、大きな勇気を持つフェスへの参加であったので、ただの感想文になっていることが恥ずかしい。しかし、これも自分の一歩と思い、次はどんな人に、どの様なワークを行い、どんな気づきや感覚・感触を感じてもらいたいかを構築できる様に、改めて自分の知識や経験を積んでいきたいと再度思える様になったことは、大きな収穫であったと思う。
期中に何度か言葉にした、「自分にとって「始まりの終わり」であると同時に「終わりの始まり」である」という思いは、ウララから声を掛けてもらった時から何度も頭の中で反復して出てきていた。この思いをこのままフェードアウトさせることなく、次に繋がっていくように自分自身無理なく進んで行こうと思う。
最後に、羽地さん、ゆりさん、5年前に初めて出逢い、色んな悩みや思いを聞いていただき、一緒に考えていただいた事は本当に心から感謝しています。そして今回卒業証書を授与していただきありがとうございました。
そして、声を掛けてくれたウララをはじめ、一緒に時間を過ごせたおぐっちゃんとむらっち、また一緒に何かをやりたいと思わせてくれました。そんなL7同期メンバー3人に心から感謝です。
ありがとう。