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数字を把握するー『地域子育て支援拠点』

(画像引用:厚生労働省 地域子育て支援拠点事業実施状況)                           

 不定期で子どもの遊びや育ちに関係する数字を調べるシリーズ。
 今回は、地域子育て支援拠点の数について。

 乳幼児の子育て中の方は馴染みがあるかと思いますが、地域の身近な場所で親子の交流や育児相談、情報提供などを行う場所のことです。
 法律的には、児童福祉法の第6条の3第6項(この法律で、地域子育て支援拠点事業とは、厚生労働省令で定めるところにより、乳児又は幼児及びその保護者が相互の交流を行う場所を開設し、子育てについての相談、情報の提供、助言その他の援助を行う事業をいう)に基づき市町村が実施する事業で、厚生労働省の「地域子育て支援拠点事業実施要綱」に則って、以下の4つが基本事業が行われています。
 ①子育て親子の交流の場の提供と交流の促進
 ②子育て等に関する相談・援助の実施
 ③地域の子育て関連情報の提供
 ④子育て及び子育て支援に関する講習等の実施

 予算措置的には、内閣府の「子ども・子育て支援新制度の実施」の部分に組み込まれています。

 このコロナ禍で各地の子育て支援拠点が閉じてしまって、子育て世代、特に母親のみなさんはかなり辛い状況になってしまったと思います。緊急事態宣言が解除された府県ではすでに開き始めているのでしょうか。少しでも早く、子どもも子育て中の保護者も外に出られるようになることを願っています。

 さて、先に実施箇所数に当たってみます。出典は厚生労働省の地域子育て支援拠点事業実施状況の最新版、平成30年度実施状況です。
 平成30年の時点で全国に7,431箇所で事業が展開されています。

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 「事業類型別」とありますが現在は「一般型」と「連携型」の二種類に分かれています。

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 「一般型」の方が圧倒的に数が多いですが、保育所や公共施設の空きスペース、商店街の空き店舗、民家、マンション・アパートの一室等を使って、子育て親子の交流の場の促進と地域の子育て関連情報の提供を基本としています。
 一方「連携型」は児童館や児童福祉施設などに設置されるため、数が限られてきます。こちらでは、施設で従事している子育ての知識や経験があるスタッフを交えながら、子育てに関する相談・援助や講習の開催などを基本としています。

現在までの経緯

 さて、ここから先は自分の勉強のためにも、改めて現在までの経緯をまとめていきます。が、かなり長いので、時間のあるときにでもどうぞ

 そもそも「子育て支援」という用語が使われるようになりだしたのは、1980年代後半ごろのようです。その少し前の1980年代から少しずつ、特に母親の孤立など子育てに関する問題が顕在化する中で、子育てや保育の知識・技術をもっているくつかの保育所が、先駆的に子育てを支援する動きが見られていました。
 1980年代後半には国が保育所の取り組みをサポートするようになるなか、1990年(平成2年)に、1966年(昭和41年)に過去最低だった合計特殊出生率1.58を初めて下回り(「1.57ショック」)、これ以降、政策として若者の結婚や子育ての環境づくりに認識が向かうようになります。そして1993年に「保育所地域子育てモデル事業」が創設され、国の施策として本格的に子育て支援施設が稼働し始めます。これが、現在の地域子育て支援拠点事業へとつながっていくのです。
 その後、1994年(平成6年)に「仕事と子育ての両立支援など子供を生み育てやすい環境づくりに向けての対策の検討を始め今後10年間に取り組むべき基本的方向と重点施策を定めた「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」(エンゼルプラン)」を策定し、この中で「子育て支援」という用語が登場します。
 1995年(平成7年)には「保育所地域子育てモデル事業」が「地域子育て支援センター事業」に名称が変わり、保育所だけでなく母子寮や乳児院も実施場所と認められるようになります(ただ、当時は市町村に1箇所設置できる程度の予算措置)。この時はまだグラフには出てきていませんね。
 その後も少子化は進行していき、1999年(平成11年)には「少子化対策推進基本方針」と「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について」(新エンゼルプラン)が策定されます。保育サービス等子育て支援サービスの充実の一環で、1999年度には1,500箇所だった地域子育て支援センターを2004年度(平成16年度)には3,000箇所まで増やすという計画が立てられました。
 一方で、1997年の阪神・淡路大震災を経て、1998年にはNPO法が設立します。市民活動の機運が高まり始めるこの1990年代半ばごろから、都市部を中心に全国各地で市民の手による親子の交流の場づくりが始まりますこの動きがモデルとなり、2002年(平成14年)に「つどいの広場事業」が創設されます。これまでの地域子育て支援センターの設置の流れとは全く異なる、市民からのボトムアップで始まった動きです。実施場所も、公共施設内のスペース,商店街の空き店舗,マンション・アパートの一室など,子育て親子が集うに適した場所とかなり幅広く、従事する人も子育て親子の支援に意欲のある子育てアドバイザーを置くということになっています。ここで、やっとグラフに追いつきました(以下、再掲)。

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 その後も次世代育成支援対策推進法や少子化社会対策基本法などが策定される中、「地域子育て支援センター事業」も少しずつ改正されていくのですが、2007年(平成19年)に「地域子育て支援拠点事業」が創設され、これまでの「地域子育て支援センター事業」と「つどいの広場事業」に、新たに児童館を活用する形態を加えて再編されます。平成19年でグラフの色が変わっているのが、この再編ですね。
 「地域子育て支援センター事業」を引き継ぎ、一定の専門性を有したスタッフが配置されている「センター型」。
 「つどいの広場事業」を引き継いだ「ひろば型」。「ひろば型」は、どちらかというと先輩のお母さんたちがスタッフを担っていて、当事者目線での支援が中心になります。
 そして、児童館が子育て支援の機能を追加した「児童館型」の3類型になります。

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 さらに詳しく知りたい方は、厚生労働省の「地域子育て支援拠点事業 実施のご案内」をご覧ください

 さて、いよいよ現在の類型に迫ります。
 またまた再掲しますが、グラフを見ると、年数を追うごとに子育て支援拠点の数が増えていくのがわかります。この間さらに実施形態が多様化していきます。

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 さらに、2012年(平成24年)に成立した「子ども・子育て支援法」において「利用者支援(子ども及びその保護者が、教育・保育や、地域子育て支援事業等の中から適切なものを選択し円滑に利用できるよう、身近な場所で支援を行うこと)」が明記されたことで、この機能を持たせるという流れも生まれ、2013年(平成25年)にまた事業が再編されることとなります。
 従来の「ひろば型」と「センター型」を統合した「一般型」、「児童館型」は「連携型」として実施対象施設が見直され、加えて利用者支援や地域支援を行う「地域機能強化型」が創設され、数は変わらず3類型となります。

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 と思ったら、翌年には「利用者支援機能」が「利用者支援事業」として独立した事業になったため、「地域機能強化型」は「地域子育て支援拠点事業」からは外れ、「一般型」と「連携型」の2類型となり、現在に至ります。

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 さて、ここまで主に類型だけ整理してきましたが、本当はその時々に各種の法律や大綱が策定されるたびに、位置付けが整理されていくのですが、正直これだけで今はお腹いっぱい(苦笑)。
 さらに詳しく知りたい方は、下記の参考文献を当たってみてください。

参考文献

●「地域子育て支援拠点事業」が、子ども・家庭支援に果たす役割/NPO 法人子育てひろば全国連絡協議会
https://kosodatehiroba.com/pdf/12box/H24iken-choshukai.pdf

●地域子育て支援施策の変遷-支援者の専門性を中心に-/日下 慈、笠原 正洋(中村学園大学・中村学園大学短期大学部 研究紀要 第48号)
https://nakamura-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=600&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1

●地域子育て支援拠点事業の役割と課題─ 保育所・保育士の役割との関連から ─/安川 由貴子(東北女子大学・東北女子短期大学 紀要 No.53)
https://tojo.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=63&item_no=1&attribute_id=20&file_no=1

●子どもが育ち 親も育つ 地域がつながる子育て支援/社会福祉法人 日本保育協会
https://www.nippo.or.jp/Portals/0/images/research/kenkyu/h23sien.pdf

●内閣府ホームページ 
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/index.html
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/data/torikumi.html

●厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/jisedai/index.html

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