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冒険遊び場(プレーパーク)に関する書籍紹介

紺色らいおんさんによる写真ACからの写真 )

これまで冒険遊び場について紹介してきましたが、もう少し自分で調べてみたいという方向けに、冒険遊び場に関する書籍をご紹介します。
すでに絶版になっている本も多いですが、各自治体の中央図書館のような大きな図書館であれば借りられるものもあるので、チェックしてみてください。

【まずはこの辺りから】

『冒険遊び場がやってきた!―羽根木プレーパークの記録』

編者:羽根木プレーパークの会/初版:1987年4月

1979年に日本で初めて開園した常設(専用の土地が確保され、日常的に開催されている)の冒険遊び場が、東京都世田谷区にある羽根木プレーパークです。この羽根木プレーパークを見て自分の地域にも冒険遊び場が欲しいと思った人たちが、各地で冒険遊び場づくりに取り組み、全国へと活動が広がっていきます。
この本には、羽根木プレーパークの前身の活動から開設までの経緯、そこでどんな遊びが行われていて、遊びに来ていた子どもはどんな姿で、何を考えていたのか(子どもの声)、そしてその遊びを保障するために大人たちがどんな工夫や苦悩をしてきたのかが書かれています。つまり、現在まで脈々と流れている日本の冒険遊び場づくりの活動が大切にしている価値観の源泉がここにあると言えます。

『遊び場(プレーパーク)のヒミツ―羽根木プレーパーク20年』

編著:羽根木プレーパークの会/初版:1998年11月

「冒険遊び場がやってきた!」と同じく羽根木プレーパークの会の編著。羽根木プレーパークの開園から20年の年に発刊されました。20年の間に起きた様々なエピソードや遊び場の風景のイラストが多く掲載されています。そして、それらを補完するようにプレーパークの説明や、Q&A形式で大切にしている価値観が語られています。
「冒険遊び場がやってきた!」と合わせて読むと、より冒険遊び場づくりの活動が大切にしている価値観に触れられると思います。

『もっと自由な遊び場を』

編著:遊びの価値と安全を考える会/初版:1998年6月

世田谷区内で冒険遊び場づくりを始め、日本の冒険遊び場づくりの母と呼ばれた大村 璋子さんを中心に、世田谷区のプレーパーク活動者、遊具メーカー社員、ランドスケープアーキテクト、レクリエーション関係者などで構成された編集委員が執筆。
前の2冊よりももう少し専門的・俯瞰的な視点から、子どもの遊びを取り巻く社会的背景、海外の遊び場づくりの動向、日本の遊び場づくりの実践紹介と、自由な遊び場づくりの手法(知恵)について書かれています。
冒険遊び場以外の事例もいくつも取り上げられていますが、「もっと自由な遊び場を」のタイトル通り、根底にある価値観は共通しています。

『遊び場づくりハンドブック―自分の責任で自由に遊ぶ』

著者:大村 璋子/初版:2000年4月

先に紹介した大村 璋子さんの単著。「はじめに」に「遊び場づくりにどう取り組めばいいのかを示す参考書である」とあります。冒険遊び場の歴史と意義から始まり、組織のつくりかた、用地との付き合いかた、プレーリーダーについて、危険管理の考え方などが、世田谷区以外のプレーパークの事例を踏まえて書かれています。
一方で「はじめに」は以下のように締めくくれれます。

冒険遊び場は、携わる人、遊びにくる子どもの欲求、地域の風土などによって影響を受けるので、どこにでも通用する冒険遊び場づくりのマニュアルはあり得ない。ここに示したのはあくまでも参考例である。どうしたらいいかを考えるとき、参考にしていただき、携わる人たちで独自の遊び場を創り出していただきたいと思う。

この文章が冒険遊び場の特徴の一つを表しているなと思います。

『ひと山まるごとプレイパーク―日常の緊張感から解放される場所』

著者:川野麻衣子/初版:2019年5月

書店流通している中では、世田谷区以外の取り組みを中心的に取り扱ったものがほぼない中で、この本は大阪府豊能郡豊能町の小さな山で月に1度開催されているプレイパークの実践がまとめられたものです(ここでは固有名詞として「プレイパーク」の表記に合わせています)。
どのような人の手で、どのように運営されているかの他に、参加者へのアンケートや、ここで遊び育った中高生のヒアリングなどから、遊びにくる人たちにとってどのような場所になっているかの考察もなされています。
なお、ここのプレイパークでは会員制をとっており、朝の集いと終わりの会もあるということで、私が考えるプレイパーク像からは少し外れるのですが、400〜500ある多様な取り組みのひとつを知ることのできるなかなかない本です。

【さらなる源泉に学ぶ】

『都市の遊び場』(原著:Planning for Play)

著者:アレン・オブ・ハートウッド卿夫人/翻訳:大村虔一・大村璋子
初版:1973年1月(復刻版初版:2009年9月)

日本で冒険遊び場づくりが生まれるきっかけとなった本です。
原著のPlanning for Playは1968年に発行されています。著者のアレン・オブ・ハートウッド卿夫人は造園家で、イギリス、さらには世界に冒険遊び場を広げた人物です。
先に紹介した大村璋子さんの夫で都市計画家の大村虔一さんが、たまたま海外出張時に購入した本の中にPlanning for Playが含まれており、これに感銘を受けた夫妻の手で、翻訳出版されます。その後夫妻はこの本に書かれている遊び場を実際に訪問し、その時に撮影した写真を日本に戻ってから地域の人たちに上映して見せたところから、世田谷区での冒険遊び場づくりが始まるのです。
さて、この本自体はPlanning for Playと原著のタイトルにあるように、遊び場の計画や設計などに携わる人向けに書かれたものです。各国の優れた遊び場づくりの事例が多くの図面と写真とともに紹介されており、その中に冒険遊び場(Adventure Playground)とプレイパークも含まれています(本書ではプレイパークは公共の公園の中につくられた遊び場として分けられています)。
原著は1968年発行ですが、子どもの遊びを主眼においた遊び場の計画の手法は現代の日本でも通用するものであり、また通貫している価値観も現代の冒険遊び場づくりとつながっているものです。

【実践のお共に】

『ハンドブック 子どものための地域づくり』**

編著:あしたの日本を創る協会/初版:1989年3月

先に紹介した大村虔一さんを中心に、教育学者で現在は筑波大学名誉教授でつくば市教育長の門脇厚司さん、「放し飼いの公務員」という異名を持ち世田谷区でプレーパークを含め数々の市民活動に関わっていた澤畑勉さん、あしたの日本を創る協会の研究部長 小野連太郎さんが執筆。
「仲間づくり」から始まり、「遊び場づくり」「イベント」の進め方、「活動資金」の集め方、「近隣の理解」を得るための心構えや対応の方法、「行政・議員との関係」も網羅し、「事故」とどう付き合うか、「情報、宣伝」の方法、「活動の拠点」のつくりかた、各「家庭」をいかに開くか、「学校との協力」を取り付けるには、まで、体験を元にした知恵がいっぱい盛り込まれています(ここまでの鉤括弧が全部目次のタイトルです)。

一度体験してみれば何でもないようなことが、初心者には乗り越え難い障害に見えたりするものです。この本は、そんなときに気軽に頁をめくることのできる、ハンドブックを意図してつくられました。
(本文より)

初版は1989年ですが、今でも通用する内容ばかりです。
この本に限らず、これまでに紹介した本も20年、30年以上前のものが多いですが、その内容が色褪せないのは、子どもにとって必要な遊び環境の本質は普遍的なものであり、その環境づくりに求められる市民の主体的な関わりの本質も変わらないからなのでしょう

『子どものための公園づくりガイドラインー自由で豊かな遊びと多様な体験を』

監修:国土交通省都市・地域整備局公園緑地課
編集:財団法人 公園緑地管理財団
初版:2001年2月

国土交通省監修であるのに「本書では「自分の責任で自由に遊ぶ」を最も重要な考え方にしている」という、かなり思い切った編集方針をとっていて、冒険遊び場の事例が多数取り上げられています。大きく下記の2章構成になっています。

第1章「子どもと公園をとりまく現状」
・子どものおかれている現状を「家庭環境」、「地域環境」、「遊び環境」から捉えて、自由で豊かな遊びや多様な体験が失われている現状を分析しています。
・子どもにとって自由で豊かな遊びや多様な体験がいかに重要であるかを整理しています。
・都市公園づくりの経緯を踏まえて、子どものための都市公園づくりを進める必要性や、それを実現するにあたっての行政担当者の課題を整理しています。

第2章「自由で豊かな遊びや多様な体験ができる公園づくり」
・「公園づくりの考え方」、「活動内容」、「空間・施設」、「運営体制」、「事業推進方法」の5つの視点で公園づくりの取り組み方を解説しています。
・上記の5つの視点ごとに事例集を加え、より具体的に活用できるようにしています。

主に公園緑地行政や教育関係の自治体職員を読者として想定した書籍ではありますが、市民にとっても参考になるとともに、特に公園部局の自治体職員との交渉の際にも使えると思います。


これ以降も、時間を見て追加していきます。

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