【ノンタンの詩歌公論】YOAOBI『群青』

ああ手を伸ばせば伸ばすほどに遠くへゆく
思うようにいかない今日もまた慌ただしくもがいてる
悔しい気持ちもただ情けなくて涙が出る
踏み込むほど苦しくなる痛くもなる
YOASOBI『群青』

前向きな歌、青春ソングと呼ばれることも多いが、この歌のこのフレーズが一番私は好き。
前後のピアノの旋律がどこか物憂げでだけど爽やかで、歌詞も新しいことに挑んでいくことの恐怖と大変さと、でもその尊さがとてもよくわかってるなあという気がする。
でも遠くに行くのも頑張ってるからだし、涙が出るのも、苦しく痛くなるのも努力しているから。
その痛みは決して無駄なものなんかじゃない。

僕はそうした積み重ねがないと、自分を信じるのが怖い。
根拠のない自信を持てないタイプだから、やっていると思うまで積み重ねないと、大丈夫だと思って頑張れない。
積み重ねていれば、やってたけどダメだったと思えるけど、積み重ねていなかったからやっぱりダメだったと思ってしまうのが一番怖い。
そんなふうに、モチーフとなった『ブルーピリオド』の主人公八虎も思ってくれていたらいいな。

何回でもほら何回でも自信がないから描いてきたんだよ
ああ何枚でもほら何枚でも積み上げてきたことが武器になる
YOASOBI『群青』

詩歌の世界には、理解者がたくさんいる。
いろんな経験をしてきた人たちがいて、それぞれ違う角度から残る言葉を残してきたから、現実の人間からは受け取ることのできない表現や言葉を味わい、それによって自分の感情や気持ちを癒すことができる。
ただ、詩歌は寡黙だ。
自分から会いにいかないと向こうからはこっちに来てはくれない。
詩歌を読むことが自分の感情と向き合うことで、その中でまた詩を作る側に回り歴史の中に加わるということに繋がる。

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