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似ているようで全然違う?ボノボとチンパンジーの見分け方〜「横山拓真の霊長類研究所」より

はじめに

遠くから見るとチンパンジーとボノボはよく似ています。昔の動物園ではチンパンジーだと思って飼っていたらボノボだったというようなこともあったと言います。しかし、その生態や社会構造は大きく異なるものなのです。今回はボノボとチンパンジーの比較も交えつつ、ボノボの知られざる情報について解説を行っていきたいと思います。

今回の記事の内容については、こちらの動画でも詳しく解説されています。よろしければぜひ、ご覧ください。

チンパンジーとボノボ:見た目の違い

まず、チンパンジーとボノボの見た目の違いから始めましょう。彼らの見た目はとても似ているものですが、実は雄と雌の区別に関しては比較的容易なものとなっています。オスは性皮が無く、代わりに男性器が存在します。一方、チンパンジーもボノボもメスは性皮がピンク色に腫れ上がるので、その腫れ具合によって個体識別をすることが可能となります。

性皮がピンク色に腫れ上がるのがメス

チンパンジーとボノボ:社会構造の違い

次に、それぞれの社会構造の違いについて考察します。チンパンジーの社会はオス中心でオスが社会的順位が高く、交尾や社会的行動、採食などの主導権を握っています。一方ボノボの社会はメス中心もしくは同等のものだと言われています。社会的順位がオスよりも高く、あらゆる行動でメスが主導権を握る姿が見られるのです。

ボノボはメス中心の社会構造となっている

チンパンジーとボノボ:顔色の違い

ボノボとチンパンジーの子供たちは、その顔の色で容易に識別することができます。チンパンジーの子供の顔は白色で、ボノボの子供の顔は黒色なのです。

白色がチンパンジー、黒色がボノボの子ども

またこの色の違いによって、母親の子供への注意力が変わるという面白い研究が行われています。母親の子どもに対する視線の向き方や注意力が、顔の色が違うことによって変わっているというのは驚きですね。

飼育下のボノボは毛が少ない?

またボノボに関するお話として、飼育下のボノボはなぜか毛が少なくなり、一方で野生のボノボは毛がふさふさしているという疑問があります。

野生と飼育下で毛の量が変わるボノボの姿

こちらの疑問について一部の論文でも言及されているのですが、やはり飼育下だと野生とは違い限られた場所にいるのでやることがなく、毛づくろいの時間が多くなってしまうからではないかと言われています。ただこれだけではなく、他にも要因はあるのではないかと横山博士は述べられています。

貴重な映像?ボノボの集団エンカウンター

森の中でボノボの集団が出会う場面は結構あります。これを集団エンカウンターと言うのですが、実際にその状況を綺麗に記録した映像はほとんどありませんでした。

ボノボの集団エンカウンターを映した貴重な映像

こちらの画像は横山博士が撮った映像から切り抜いた画像になりますが、その際横山博士はこの場面がそうした貴重な場面だとは露知らず、後にすごい映像だと指摘されて大変驚かれたと言います。

ローラ・ヤ・ボノボのプロジェクト

コンゴ民主共和国の首都キンシャサ近郊には、ローラ・ヤ・ボノボと呼ばれる場所があります。

ボノボを絶滅から救うプロジェクトが行われている「ローラ・ヤ・ボノボ」

こちらでは孤児となったボノボを保護し、成長した後に再び森に返すというプロジェクトが行われています。このプロジェクトは違法な密猟によってボノボが絶滅の危機に瀕しているという厳しい状況に立ち向かっており、ボノボを絶滅から救うためにもこうしたプロジェクトを支援することが必要とされているのです。

さいごに

ボノボとチンパンジーの違い、そしてボノボに関してはまた新たな情報を知りえることができたかと思います。このように魅力あふれるボノボたちを絶滅の危機から救うためにも、ローラ・ヤ・ボノボで行われているようなプロジェクトを私たちは支援する必要があるでしょう。

この動画では、今回紹介した内容についてより詳細な情報が解説されています。興味を持った方はぜひご覧ください。

横山 拓真(よこやま たくまさ)
京都大学野生動物研究センターにて研究の後、椙山女学園大学 日本学術振興会特別研究員(PD)。コンゴ民主共和国のルオー学術保護区・ワンバで野生ボノボの研究に従事。2019年9月からYouTubeチャンネル「横山拓真の霊長類研究所」にて野生ボノボの情報発信を始め、チャンネル登録者数は6.1万人突破(2022/8時点)。野生ボノボの動画という貴重さから、国内外のテレビ番組などからもオファー多数。ビーリア(ボノボ)保護支援会で現地の村人の支援やボノボの保護活動にも取り組んでいる。



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