ボノボは進化すると人間になる? - コンゴを自転車で駆け巡ったある研究者の努力〜「横山拓真の霊長類研究所」より
はじめに
横山拓真博士はコンゴ民主共和国のワンバ村を拠点として、野生のボノボの観察・研究を行ってきました。ではこのワンバ村での研究はどういう経緯で行われるようになったのでしょうか?また、ボノボは将来進化するとヒトになるという意見がありますが、果たしてそれは事実なのでしょうか?今回はその2点について解説したいと思います。
今回の記事の内容については、こちらの動画でも詳しく解説されています。よろしければぜひ、ご覧ください。
ボノボの調査の先駆け:加納隆至さんの勇敢な取り組み
アフリカ大陸は広大で、多種多様な生態系が広がっています。またこの地の中心部には赤道が横断しており、熱帯雨林も広がっています。北側にあるエジプトと比べると、コンゴ民主共和国は全く異なる景観が広がっていることがこの地図からもわかると思います。
そんなコンゴ民主共和国にあるルオー学術保護区・ワンバ村では、1973年から野生ボノボの研究が始められました。これを最初に始めた方が、加納隆至さんという研究者です。加納さんは、広大なアフリカ大陸でボノボの生息地を探し、ワンバでの調査を開始したのですが、そのボノボの生息地を探す広域調査を行うために、なんと自転車に乗ってコンゴのありとあらゆる場所を探索したのです。
当然ほとんどの道は補正などされていないので、かなりの重労働であったことは想像に難くないですが、それでも加納さんは自転車を漕いで広域調査を行いワンバに辿り着いたというのですから、彼の努力には敬意を表さずにはいられないと横山博士は言います。こうした加納さんの努力があったからこそ、現在ワンバ村で研究ができるといっても過言ではないのです。
進化論の誤解と進化の真実
少し話は変わりますが、ここで1つ、ボノボに関する誤解の真実について解説したいと思います。
よくみなさんが言われることとして、ボノボが進化したらチンパンジーになる、あるいはボノボが進化したらヒトになるんだという方がいらっしゃいますが、これは大きな間違いです。多くの人々が進化論を誤解しています。
チンパンジー、ボノボ、そしてヒトは、すべて同一の祖先から分岐して進化した生物であり、ボノボが進化してチンパンジーになる、あるいはヒトになることは絶対にありません。
では人類の進化に関する霊長類学者たちはいったい何をしているのでしょうか? その研究のキーワードとして「共通祖先」が挙げられます。チンパンジー、ボノボ、そしてヒトは全て、同一の祖先から進化してきました。しかし、この共通祖先がどのような生物だったのかは未だわかりません。それらを明らかにするのが霊長類学者の主な仕事です。
この共通祖先から、チンパンジー、ボノボ、そしてヒトがどのようにして枝分かれしたのか、そして私たちヒトが共通祖先からどのような特徴を受け継いで、または失ってきたのかを調査・研究していくことが重要であり、研究の1つの醍醐味となっているのです。
さいごに
ワンバ村での野生のボノボ研究は、加納隆至さんの素晴らしい努力と情熱があって始めることができました。そして進化についても、多くの人が持っていた誤った認識を正すことができたかと思います。進化の謎はまだまだ未解明なことが多いですが、その謎を追い求める研究者たちもまた素晴らしい努力と情熱を持って日々研究に取り組んでいるのです。
進化に関する話題は少々難しい話にはなりますが、動画で見るとより分かりやすく理解することができるかもしれません。興味を持った方は、ぜひご覧ください。