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ボノボの「ホカホカ」は"エロい"のか? - ホカホカが果たす本当の役割〜「横山拓真の霊長類研究所」より
はじめに
みなさんはボノボが行うホカホカという行動をご存知でしょうか?
一般的にホカホカは、ボノボのメス同士が行う性的交渉だと言われています。しかし、それは本当に真実なのでしょうか?今回はボノボのホカホカが果たす機能と役割について解説いたします。
今回の記事の内容については、こちらの動画でも詳しく解説されています。よろしければぜひ、ご覧ください。
ホカホカの機能と役割
ある論文によると、ボノボのホカホカには5つの機能と役割があると言われています。そちらについて、1つずつご紹介したいと思います。
①和睦
ホカホカの一つの機能として和睦があります。これは、ボノボ同士で喧嘩をした後などに社会的緊張を和らげるためにホカホカをするという説です。簡単にいえば、仲直りのためにホカホカをしているのではないかという説になります。
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②交尾誘引
ホカホカは交尾誘引の機能も果たすとされています。ホカホカをすることによって、オスがそれを見て性的な興奮を覚え、交尾に誘いかけるような機能もあるのではないかと言われているのです。
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③社会的緊張の緩和
社会的緊張の緩和はホカホカのメインの機能ではないかと言われています。例えば美味しい食べ物が目の前にあるとき、ボノボたちの社会的緊張は非常に高まります。その際に社会的緊張を緩和させるためにホカホカを行っているというという説です。
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こちらの説は、実際に横山博士のデータでも84%のホカホカが食べ物を巡ってや、食べている時に行われていたという結果出ているので、これがホカホカの大きな機能でないかと考えられています。
④社会的な順位の誇示
ホカホカはボノボ社会における地位や影響力を示す手段としても利用されます。ほとんどの霊長類の世界で社会的順位というものは決められていますが、ボノボ世界においてもその仕組みは該当しています。
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高順位、中順位、低順位などというように順位の高いメスがいたり順位の低いメスがいたりするのです。その自分の順位を示すために ホカホカをするのではないかとも言われています。
⑤社会的絆の形成
最後に、ホカホカは社会的な絆の形成にも寄与していると考えられています。モスコバイスさんの論文によれば、ホカホカを行った後に分泌されるオキシトシンというホルモンは、愛情や友情の形成に大きく関与することが知られています。このことから、ボノボのホカホカ行動は、個体間の信頼関係や絆の形成に役立つ手段とも言われているのです。
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さいごに
一見すると、ボノボのホカホカという行動はエロティックで性的な行動と見られるかもしれません。しかし、これまでの説明からもわかるように、ボノボのホカホカはむしろ社会的な意味合いの方が強い行動と言えるのです。その行動は社会的絆の形成、社会的緊張の緩和、社会的な順位の誇示など、多様な社会的な役割を果たしていると言えるでしょう。
この動画では、今回紹介した内容についてより詳細な情報が解説されています。興味を持った方はぜひご覧ください。
横山 拓真(よこやま たくまさ)
京都大学野生動物研究センターにて研究の後、椙山女学園大学 日本学術振興会特別研究員(PD)。コンゴ民主共和国のルオー学術保護区・ワンバで野生ボノボの研究に従事。2019年9月からYouTubeチャンネル「横山拓真の霊長類研究所」にて野生ボノボの情報発信を始め、チャンネル登録者数は6.1万人突破(2022/8時点)。野生ボノボの動画という貴重さから、国内外のテレビ番組などからもオファー多数。ビーリア(ボノボ)保護支援会で現地の村人の支援やボノボの保護活動にも取り組んでいる。