beer
わあ、久しぶりだなあ、この感じ。
アフター5。
まだ空は明るくて、夕暮れまで時間がありそう。でも私たちは馴染みの居酒屋でもう飲んでいた。
「だいぶ日が長くなったなあ。」
「去年の今頃は毎週のように飲みに来てましたよねー。」
「そうそう!ビアガーデン 渡り歩いてた!」
なんて、他愛のない会話を隅っこできく。
この居心地のよさは好き。
もう何週間も飲みに行っていない!これ以上は我慢できない!と、次の定時退勤日にみんなで行こうと、話しがでたのが先週末。
まだ手放しには喜べないから、「一杯だけね」と合言葉のように約束して今日に至る。
職場の気のおけないメンバー。
年代はばらばら。
だけど、時間があるとこうして、仕事終わりに飲みに来てた。
…ほんとに久しぶり。
「3カ月ぶりやなあ。こんなに飲まへんのは初めてや。」
隣の彼がつぶやく。
思わぬシンクロにドキリ。
こうして飲む機会がなくなっただけで、職場でも会えるし話しもする。
でもやっぱりそれじゃもの足りない。
「うん。みんなで飲むの楽しい。」
まあ、彼とはそれ以外でも会っていたけど。
*****
約束通りではなかったが、いつもの半分以下の時間で切り上げる。
「早くビアガーデン 行きたいなあ」
「じゃあまた明日」と、それぞれが帰路につく。
駅までの道を彼と歩く。
「夏までにもう少し収まってたらいいね。」
「うん。」
「そしたらどこか出かけたいな。」
「2人で?」
「…嫌?」
ちょっとだけ驚いた顔を見せて、
彼が微笑む。
「わかった。行こう。」
まだ辛い。
平気なわけじゃない。
だけど、
あたしもいつまでも立ち止まってられない。
どんな状況でも季節はめぐる。
もうすぐ夏がくる。
新しい季節に1歩踏み出してみる。